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契約

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「セニヨン嬢の気持ちが分かったところで、レーチェルにラーナ、ベリル嬢とサリフィル殿も問題はないだろうか?今回の件、これが偽装だとバレるわけにはいかない。最低でも三年間隠し通して、僕はラーナを、サリフィル殿はベリル嬢を、そしてセニヨン嬢は自由を手に入れなくてはならない。何か不安があるのなら、今のうちに言ったほうが良い」

 ロイドの言葉に、ヒルデがおずおずと手を挙げた。

「王女殿下は・・・本当によろしいのですか?私たちやセニヨン様にはそれぞれ目的があります。そのためなら我慢できることだと思っています。でも王女殿下は、お兄様のためにご協力くださるのですよね?三年・・・私たちの場合は二年ですけど、婚約者を作って・・・好きな方が出来れば嫌になりませんか?」

 確かに、私もロイドもサリフィルも、それからラーナとヒルデも、自分の望みためにこの偽装を計画している。

 目的を達するためになら、少しくらいのことは我慢できるだろう。

 だけど、レーチェル王女は違う。
ロイドが自分が私の婚約者役となった場合に、サリフィルに悪いからと提案してこの場にいる。

 今は好きな人がいなくても、二年・・・いやもしかしたら明日気になる人が現れるかもしれない。

 好きな人に誤解される関係を、八歳の少女に求めるのは酷だろう。

 レーチェル王女は、少し考え込んでいたが、やがてしっかりと顔を上げた。

「ベリル様のおっしゃることはわかります。確かに好きな人ができたときに、している婚約が偽のものだということで、私は葛藤するかもしれません。ですが、私はザハード王国の王女です。いずれ政略結婚を求められれば、それがどれほど嫌な相手でも従う義務があります。お父様もお母様も、もちろんお兄様もそんな相手に私を嫁がせたりはしませんが、そのくらいの覚悟は持っています。ですから、ご心配には及びません。必ず、皆様のご期待に応えてみせます」

 八歳の少女にこうまで言われて、政略結婚ではないけど、婚約を避けるために偽の婚約までしようとしている私たちって・・・

 肩身が狭いこと、この上ないわ。

 ロイドもそう思ったのだろう。
苦笑している。

「レーチェルは、僕よりも王族らしいな。立派な考えで、僕は誇らしい」

「も、もう!お兄様ってば。べ、別にお兄様達を悪く言っているわけではありませんわ。私には今想う方がおりませんので、皆様と同じ条件というわけではありませんでしょう?も、もしそういう場面になりましたら、もちろんご相談しますわっ!」

「ふふっ。王女殿下はお可愛らしい方ですわね。仮とはいえ、ご縁ができて嬉しいですわ」

 私もね、私を殺した人とでなければ、政略結婚も受け入れなきゃね。
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