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五年後に
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「私には・・・」
これを言っていいのか、一瞬躊躇う。
私の気持ちは、お祖母様はもちろん、お兄様であるクリフトフにも伝えていない。
セニヨン公爵家の養女になる時も、レオナルドのことは話したけど、五年後どうするかまでは話していない。
だけど、まずは婚約を回避しないことには、どうにもならない。
そのためにも、彼女達には納得してもらわなければならないのだ。
「私には、身も心も美しい姉がいて、誰もが姉を好きになりました。両親も姉だけが大切で、私はいないものとして扱われていたのです。家は姉が継ぐ予定で、私は誰かに嫁ぐ運命で、その筆頭が王太子殿下でした。ですが、殿下は姉のことが好きで・・・私はその婚約を避けるためにセニヨン公爵家の養女となったのです」
「「・・・」」
「ですが、何故か殿下は私に婚約の打診をして来られました。理由は分かりません。両親が姉を嫁がせることを嫌がったのかもしれませんが、理由などどうでも良いのです。私は絶対に殿下と婚約したくないのですから。そこで、今回の偽装婚約の話になります。王太子殿下の婚約を拒むためにも、相当のお相手でなければならないのです」
「セニヨン様が今回のことを望まれる理由は分かりました。あの、でも、その王太子殿下との婚約を回避できたとして、ロイド殿下との偽装婚約を解消できるのですか?」
ラーナの不安はそこなのだろう。
「セニヨン公爵家は、ロイド殿下との婚約が偽装だと理解しています。それに私は・・・五年後に成人しましたら、セニヨン公爵家を出て平民になるつもりです」
「!」
クリフトフが、驚きからか目を見開いた。
「ローズ!」
「ごめんなさい、お兄様。このことはお祖母様にもお話していません。私は、できるなら好きな人と・・・田舎でのんびりと自由に暮らしたいと考えているのです」
「好きな方がいらっしゃるんですか?」
ヒルデの問いに、頷く。
「すみませんが、今その人の名前を言うことは出来ません。私の片想いなのです。それに、まだお二人のように相手を好きで仕方ないかというとはっきりは言い切れません。ただ・・・田舎に行ったときに、彼がそばにいてくれたら、と思うだけで」
「そう・・・なのですね。でも、公爵令嬢であるセニヨン様が平民としてだなんて」
「ふふっ。サリフィル様も公爵家の嫡男の座を捨てて騎士となろうとされているではありませんか。まぁ、十歳の私では何も出来ませんが、そこは五年のうちに手に職を付けます」
私の気持ちに、ラーナとヒルデは納得してくれたようだけど、逆にクリフトフが何かを言いたそうになった。
これを言っていいのか、一瞬躊躇う。
私の気持ちは、お祖母様はもちろん、お兄様であるクリフトフにも伝えていない。
セニヨン公爵家の養女になる時も、レオナルドのことは話したけど、五年後どうするかまでは話していない。
だけど、まずは婚約を回避しないことには、どうにもならない。
そのためにも、彼女達には納得してもらわなければならないのだ。
「私には、身も心も美しい姉がいて、誰もが姉を好きになりました。両親も姉だけが大切で、私はいないものとして扱われていたのです。家は姉が継ぐ予定で、私は誰かに嫁ぐ運命で、その筆頭が王太子殿下でした。ですが、殿下は姉のことが好きで・・・私はその婚約を避けるためにセニヨン公爵家の養女となったのです」
「「・・・」」
「ですが、何故か殿下は私に婚約の打診をして来られました。理由は分かりません。両親が姉を嫁がせることを嫌がったのかもしれませんが、理由などどうでも良いのです。私は絶対に殿下と婚約したくないのですから。そこで、今回の偽装婚約の話になります。王太子殿下の婚約を拒むためにも、相当のお相手でなければならないのです」
「セニヨン様が今回のことを望まれる理由は分かりました。あの、でも、その王太子殿下との婚約を回避できたとして、ロイド殿下との偽装婚約を解消できるのですか?」
ラーナの不安はそこなのだろう。
「セニヨン公爵家は、ロイド殿下との婚約が偽装だと理解しています。それに私は・・・五年後に成人しましたら、セニヨン公爵家を出て平民になるつもりです」
「!」
クリフトフが、驚きからか目を見開いた。
「ローズ!」
「ごめんなさい、お兄様。このことはお祖母様にもお話していません。私は、できるなら好きな人と・・・田舎でのんびりと自由に暮らしたいと考えているのです」
「好きな方がいらっしゃるんですか?」
ヒルデの問いに、頷く。
「すみませんが、今その人の名前を言うことは出来ません。私の片想いなのです。それに、まだお二人のように相手を好きで仕方ないかというとはっきりは言い切れません。ただ・・・田舎に行ったときに、彼がそばにいてくれたら、と思うだけで」
「そう・・・なのですね。でも、公爵令嬢であるセニヨン様が平民としてだなんて」
「ふふっ。サリフィル様も公爵家の嫡男の座を捨てて騎士となろうとされているではありませんか。まぁ、十歳の私では何も出来ませんが、そこは五年のうちに手に職を付けます」
私の気持ちに、ラーナとヒルデは納得してくれたようだけど、逆にクリフトフが何かを言いたそうになった。
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