上 下
23 / 107

不安とストレス

しおりを挟む
 ロイド・ザハード第一王子殿下が好きなピスエア子爵令嬢であるラーナは、現在十二歳。

 ピンク色の髪と瞳をした可愛い系女子。

 ザハード王国の成人は十五歳だから、結婚できる十五歳までの隠れ蓑が必要。

 二人のことは、ロイドの両親の国王夫妻も、ピスエア子爵家も認めているけど、ラーナの従姉であるバッカス侯爵家の令嬢タチアナがロイドの婚約者の座を狙っている。

 サリフィル・ホリック公爵令息が好きなのは、同じマハール王国のベリル男爵家の娘ヒルデ十三歳。

 鳶色の髪と瞳の、大人しそうな女の子。

 サリフィルは両親が選民意識の強いタイプらしくて、公爵家に相応しい婚約者を求められている。

 本人はヒルデと結婚するつもりで、十五歳の成人を迎えたら、公爵家から出奔する気らしい。

 二歳年下の弟と、友人である王太子殿下や国王陛下たちが味方になってくれている。

 どちらとも婚約するわけにはいかなくて、その代替え案として出たのが、ロイドの五歳年下の妹、レーチェル王女がサリフィルの偽の婚約者になるということ。

 レーチェル王女は、ロイドと同じ真っ赤な髪と瞳の美少女で、八歳と思えないほどしっかりしている。

「ピスエア様もベリル様も、偽の婚約者の件はご理解ご納得して下さっていますか?今回のことが公になれば、大問題になります。ですから、何か不安や不満があれば今おっしゃってください」

 私がそう言うと、ラーナが私をジッと見つめた。

 意外と気が強そうなのよね、この子。もしかして転生ヒロインとかなのかしら?

「あのっ!偽の婚約者ってことですけど、セニヨン様が殿下を本気でお好きになって婚約者になったり・・・」

「失礼よ、ピスエア様。だって、セニヨン様も王女殿下も、とてもお綺麗で・・:身分もあるんだもの」

 こっちはなんだか自分に自信がない系?まぁ、大人しそうだもんね。

「そんなのっ、そんなの私だってわかってるけど・・・」

「ラーナ、いつも言ってるだろう?僕はお前以外を選んだりしない」

「ロイド様・・・」

 あー。はいはい。
イチャイチャは他所でやって・・・あ。駄目だ。偽の婚約者になったら、他所でイチャイチャされるとマズいんだった。

「ヒルデ、君もだよ。僕は君と一緒になりたいから殿下達に協力をお願いしたのに、君が信じてくれないと、この話は無駄になってしまう」

「ごめんなさい、サリフィル様。私、自分に自信がなくて・・・」

 これは作戦を実行したら、不安とストレスで駄目になってしまうやつでは?



 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

【完結】悪役令嬢に転生したようです。アレして良いですか?【再録】

仲村 嘉高
恋愛
魔法と剣の世界に転生した私。 「嘘、私、王子の婚約者?」 しかも何かゲームの世界??? 私の『宝物』と同じ世界??? 平民のヒロインに甘い事を囁いて、公爵令嬢との婚約を破棄する王子? なにその非常識な設定の世界。ゲームじゃないのよ? それが認められる国、大丈夫なの? この王子様、何を言っても聞く耳持ちゃしません。 こんなクソ王子、ざまぁして良いですよね? 性格も、口も、決して良いとは言えない社会人女性が乙女ゲームの世界に転生した。 乙女ゲーム?なにそれ美味しいの?そんな人が…… ご都合主義です。 転生もの、初挑戦した作品です。 温かい目で見守っていただければ幸いです。 本編97話・乙女ゲーム部15話 ※R15は、ざまぁの為の保険です。 ※他サイトでも公開してます。 ※なろうに移行した作品ですが、R18指定され、非公開措置とされました(笑)  それに伴い、作品を引き下げる事にしたので、こちらに移行します。  昔の作品でかなり拙いですが、それでも宜しければお読みください。 ※感想は、全て読ませていただきますが、なにしろ昔の作品ですので、基本返信はいたしませんので、ご了承ください。

転生できる悪役令嬢に転生しました。~執着婚約者から逃げられません!

九重
恋愛
気がつけば、とある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた主人公。 しかし、この悪役令嬢は十五歳で死んでしまう不治の病にかかった薄幸な悪役令嬢だった。 ヒロインをいじめ抜いたあげく婚約者に断罪され、心身ともに苦しみ抜いて死んでしまう悪役令嬢は、転生して再び悪役令嬢――――いや悪役幼女として活躍する。 しかし、主人公はそんなことまっぴらゴメンだった。 どうせ転生できるならと、早々に最初の悪役令嬢の人生から逃げだそうとするのだが…… これは、転生できる悪役令嬢に転生した主人公が、執着婚約者に捕まって幸せになる物語。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

処理中です...