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転生なんてど定番過ぎ
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「・・・」
目が覚めて、鏡に映る自分の姿を見て、それが自分がやっていた攻略ゲームの悪役令嬢だった場合、どういうリアクションをするのが正しいのだろう。
悲鳴をあげて倒れるというのが、一番ポピュラーかもしれない。
私の場合、ど定番過ぎて、一周回って冷静になった。
転生ということは、前世の私は死んだのだろう。
残念ながら、名前すら思い出せない。
ただ覚えているのは、この攻略ゲームの記憶と、それをプレイしていた前世の世界のことだけ。
前世の世界、日本での食べ物やニュース、学んだことなんかは覚えているのに、自分に関することは靄がかかったみたいに思い出せない。
でもまぁ、転生したんだから、死んだことは間違いないのだろう。
だけど、せっかく生まれ変わったというのに、どうして死ぬことが決定している人間なのだろう。
なに?
前世の私って、そんな業の深い人間だったわけ?
見た目は・・・
日本人の前世からしたら違和感はない。
言うなれば、日本人形みたいな女の子。
漆黒の髪に黒曜石の瞳。
現代の女の子は、茶髪やピンク、ホワイトカラーの子までいたから、逆に珍しいかも。
白磁のような真っ白な肌。
桜貝のような頬。
さくらんぼのような唇。
髪と瞳が黒でなければ、極上のビスクドールと言っても間違いないくらいの美少女。
それなのに。
髪色と瞳の色がこの世界では珍しい黒だというだけで、ローズマリアは奇異の目で見られた。
母親も父親も、ローズマリアを『いないもの』として扱った。
ローズマリアの救いは、三歳年上の姉のリリーシアと、幼馴染の王子レオナルド、そして自分付きの執事のカイルだけだった。
だから、レオナルドとの婚約が決まった時、ローズマリアは心から喜んだ。
それなのに。
リリーシアを見つめるレオナルドの瞳に、親愛以上の熱があることに気付いてしまった。
だが、ローズマリアは気付かないフリをした。
そもそも貴族の婚約は、家と家の契約で、本人の希望よりも家長の意思が重んじられる。
レオナルドがリリーシアを望んだとしても、決めたのは王家とオズワルド公爵である父親だ。
だから、気にすることはない。
ローズマリアは自分に何度も言い聞かせた。
誰もがお姉様を好きになる。
だから、レオナルドがリリーシアを好きになっても仕方ない。
妻になるのは自分なのだから、レオナルドがその恋心を鎮めてくれるまで待てば良い。
ところが、リリーシアに聖女としての力が目覚めたことで、全てが覆る。
聖女を手に入れたい王家が、リリーシアとレオナルドの婚約を打診して来たのだ。
リリーシアが王子の婚約者になった場合、ローズマリアがオズワルド公爵家に残り婿を迎えることになる。
両親はそれが嫌だった。
だが、王家からの申し入れを拒むことはできない。
「だからって、一応ちゃんと血の繋がってる、しかも初婚の娘を中年の後妻に差し出すとか、あり得ないでしょ」
目が覚めて、鏡に映る自分の姿を見て、それが自分がやっていた攻略ゲームの悪役令嬢だった場合、どういうリアクションをするのが正しいのだろう。
悲鳴をあげて倒れるというのが、一番ポピュラーかもしれない。
私の場合、ど定番過ぎて、一周回って冷静になった。
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残念ながら、名前すら思い出せない。
ただ覚えているのは、この攻略ゲームの記憶と、それをプレイしていた前世の世界のことだけ。
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でもまぁ、転生したんだから、死んだことは間違いないのだろう。
だけど、せっかく生まれ変わったというのに、どうして死ぬことが決定している人間なのだろう。
なに?
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言うなれば、日本人形みたいな女の子。
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それなのに。
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ローズマリアの救いは、三歳年上の姉のリリーシアと、幼馴染の王子レオナルド、そして自分付きの執事のカイルだけだった。
だから、レオナルドとの婚約が決まった時、ローズマリアは心から喜んだ。
それなのに。
リリーシアを見つめるレオナルドの瞳に、親愛以上の熱があることに気付いてしまった。
だが、ローズマリアは気付かないフリをした。
そもそも貴族の婚約は、家と家の契約で、本人の希望よりも家長の意思が重んじられる。
レオナルドがリリーシアを望んだとしても、決めたのは王家とオズワルド公爵である父親だ。
だから、気にすることはない。
ローズマリアは自分に何度も言い聞かせた。
誰もがお姉様を好きになる。
だから、レオナルドがリリーシアを好きになっても仕方ない。
妻になるのは自分なのだから、レオナルドがその恋心を鎮めてくれるまで待てば良い。
ところが、リリーシアに聖女としての力が目覚めたことで、全てが覆る。
聖女を手に入れたい王家が、リリーシアとレオナルドの婚約を打診して来たのだ。
リリーシアが王子の婚約者になった場合、ローズマリアがオズワルド公爵家に残り婿を迎えることになる。
両親はそれが嫌だった。
だが、王家からの申し入れを拒むことはできない。
「だからって、一応ちゃんと血の繋がってる、しかも初婚の娘を中年の後妻に差し出すとか、あり得ないでしょ」
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