乙女ゲームの正しい進め方

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「何あれ。あの女、死にたいわけ？」

　隣に立つシスルが、ため息を吐いている。
　トリヤ様は・・・少し表情が曇ってるわ。まぁ、デイジーは幼馴染だものね。

　アゼリア様が不安そうに、トリヤ様を見上げている。

　トリヤ様はそれに気付くと、アゼリア様の手をそっと握られた。

「何も学習されませんのね、ユーカリプタス様は」

「あんな馬鹿に何言っても無駄だよ」

　ジニア様が扇で口元を隠しながらもため息を吐かれ、シーダが呆れたように首を振っている。

　ふたりとも、学園でのデイジーを知ってるものね。
　きっとジニア様は、デイジーの言動とかを注意していたのだと思う。

「学園でも？」

「殿下に、自分に近づくな、自分には婚約者候補がいると言われても、全く聞こうとせずに纏わりついていて・・・」

　ジニア様が、困ったような表情で、デイジーの学園での様子を教えてくれる。
　シーダも頷いて続けた。

「こないだまでは、トリヤにベタベタしてたのにさ、あの女。僕やアスターにも馴れ馴れしいしさ。アスターは殿下と一緒でまだ候補だけど、僕は正式にジニィと婚約してるっていうのに」

「シスル様は大丈夫だったのですか？」

　隣に立つシスルを見上げると、シスルに抱き込まれた。

「し、シスル様っ」

「あー。可愛い。リズに余計な心配をかけさせるなんて、あの塵は万死に値するね。まぁ、殿下が滅するだろうけど」

「シスル様。人前では、その恥ずかしいので離してください」

　私は婚約者だけど、王族でもあるんだから、人前で恥ずかしい行為をするのは良くないわ。

　シスルも私の考えは理解ってくれてきているから、私が抗議するとすぐに離してくれる。

　最近のシスルは、私を甘やかしはするけど、誰かを威嚇したり、嫉妬してヤンデレ化したりはなくなった。

　多分、多分だけど、私が乙女ゲームの攻略対象であるシスルではなく、目の前のシスル本人を見るようになったからだと思う。

　それに、エルム兄様に婚約者候補がキチンと出来て、私への関心が薄れたことも影響してるのかも。

「め、滅するっておっしゃったことは、放置ですのね」

「アゼリア様。仕方ありませんわ。だってエルム兄様は、サフィニア様を溺愛なさっていますの。もう異常なくらいに」

　アゼリア様の戸惑いの声に、私はそう返し、周囲のみんなも、仕方ないよなって顔をしている。

　兄様。
サフィニア様は学園生じゃないのに、どうしてここまで溺愛していることを知られてるの？

　溺愛してることが悪いわけじゃない、というかシスコン脱退できて喜ばしいけど、まさか学園でも惚気てるのかしら？