乙女ゲームの正しい進め方

みおな

文字の大きさ
上 下
43 / 51

42

しおりを挟む
「このお話、シスル様にもしましたの。シスル様は一刀両断でしたわ。男が馬鹿だと。いくら幼い姪が可愛くても、愛する婚約者を悲しませてどうするんだと。家族も身分も何もかも捨てても、彼女の手を取るべきだった、ですって」

 私もそう思う。
どれだけ姪が可愛くても、婚約者がいて、恋愛対象としての好きでないのなら、嫌われても拒絶するべきだったのだ。

 傷ついて口をきいてもらえなくなるかもしれない。

 それでも何年か後には、姪にも好きな相手が出来る。
 その時には、きっと理解してくれるはずなのだ。

 何が一番大切なのか。
辺境伯子息は、その取り捨て選択が出来なかった。

 だから、何もかも失ってしまったのだ。

 アゼリア様は、しばらく黙って考えたあと、ポツリと呟いた。

「私・・・トリヤ様に我儘言っていいのでしょうか」

「全てぶつけてしまえばいいのです。もし、それでダメだったなら、私もサフィニア様もジニア様もおります。一緒に泣きましょう?」

「・・・はい」

 あとは、トリヤ様がどうするか、である。

 本当にあのヒロインを好きなのなら、それはそれで仕方ない。

 婚約解消や人の気持ちのすれ違いを生まないために、一年の候補期間をおいているのだ。
 今の時点なら、トリヤ様もヒロインも、罪を犯しているわけではない。

 私からしたら、あんなお花畑ヒロインと思うけど、トリヤ様は本当に好きで、大切に思っているのかもしれない。

 人の気持ちは、理性ではどうにもならないものだから。

 ただ・・・
ヒロインが貴族令嬢としてもっとにならないと、トリヤ様はエルム兄様の側近からは外れることになる。

 あんな、常識がない行動をする妻がいる人間を、王族の側にはおけない。

 別に、ヒロインを選ぶことが罪なわけではない。
 彼女を好きなら、それもありだろう。

 問題を起こさなければ、伯爵夫人にすることも、別に王家は反対しない。

 ただ、王太子、のちの国王陛下の側近には出来ないというだけだ。

 王太子の側近は、花形ではあるけれど、その分苦労も多い。
 普通に騎士団長や副団長にはなれるから、そう悲観するほどのものでもない。

 結局は、トリヤ様が何を選んで、何を捨てるか。

 今頃、学園でシスルが話をしているだろう。
 こういう事態を治めるのも、シスルの役目だ。

 それに、シスルはああ見えて友達思いだ。
 無理強いするのでなく、ちゃんとトリヤ様の気持ちに沿った話をするだろう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】旦那様、わたくし家出します。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:326pt お気に入り:3,137

竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:3,539

ヤンデレ公爵様は死に戻り令嬢に愛されたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,662pt お気に入り:134

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,739pt お気に入り:502

婚約破棄ですか?計画通りです!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:106

処理中です...