38 / 51
37
しおりを挟む
私たちは、比較的うまくやれていると思う。
それぞれに婚約者候補が決まったことで、シスルのヤンデレ感も落ち着いた気がした。
ただ・・・
アゼリア様とトリヤ・ダフォディル伯爵令息のところが問題だった。
単にお互いの相性が悪いのなら、それは仕方ない。
政略結婚と割り切るか、もしくは他に候補を探すか。
トリヤは伯爵令息だから、子爵家や男爵家なら、近しい年齢のご令嬢もいないわけではない。
王太子妃には無理でも、伯爵家夫人なら子爵家のご令嬢でも支障がないからだ。
そしてアゼリア様も、アゼリア様のご年齢のご子息なら多くいる。
あくまでも、四人の候補は、王太子であるエルム兄様の婚約者候補として集められたのだ。
最初は、とても仲睦まじく出来ていたらしい。
脳筋とまではいかないが、王太子の護衛騎士を目指すトリヤは、体を動かすことが好きなアゼリア様と気が合ったようだった。
乗馬を教わったとか、護衛術を教わったとか「いや、何?十歳のご令嬢に何教えてんの?」とか思うことをよく聞いたけれど、アゼリア様も楽しそうで、本人たちが良いならと思っていた。
それに影が差し始めたのは、十日ほど前からだ。
それまで毎日、リンデン伯爵家を日参していたトリヤが訪れなかった。
急な用事が出来たと連絡は来たから、アゼリア様も何も思わなかったらしい。
翌日も「今日も行けない」と連絡が来た。
それが三日、四日と続き、お忙しいのに日参させていたことを申し訳ないとアゼリア様が、差し入れを持って自分から会いに行こうと思われたのは、二人の仲が良好だった証拠だろう。
そして学園の正門前で、待っていたアゼリア様が見たのは、その左腕に女性をまとわり付かせたトリヤだった。
「金色の髪にオレンジ色の瞳の、可愛らしい方で、ダフォディル様もとても仲睦まじくお話されていた」
そんな話を聞いたのは、トリヤがリンデン伯爵家を訪れなくなって十日経った、今日のことだ。
サフィニア様のところの侍女と、アゼリア様のところの侍女が親友らしく、アゼリア様付きの侍女に「どうかお嬢様を元気付けて欲しい」と頼まれたらしい。
アゼリア様と一緒に正門で待っていた侍女は、傷ついたアゼリア様をとても心配しているそうだ。
馬車の中にいたから、トリヤはアゼリアの存在に気付いていない。
とてもじゃないが、ただの友人には見えなかった。
他に想う方がいるのなら、候補から外れて、アゼリアお嬢様には他の候補の方をと、侍女は言っているそうだ。
リンデン伯爵たちに伝えられていないのは、アゼリア本人が両親には自分から言うから絶対に言わないでと言われているかららしく、それでも心配な侍女は、サフィニア様の侍女に相談したらしい。
私はため息を吐いた。
それぞれに婚約者候補が決まったことで、シスルのヤンデレ感も落ち着いた気がした。
ただ・・・
アゼリア様とトリヤ・ダフォディル伯爵令息のところが問題だった。
単にお互いの相性が悪いのなら、それは仕方ない。
政略結婚と割り切るか、もしくは他に候補を探すか。
トリヤは伯爵令息だから、子爵家や男爵家なら、近しい年齢のご令嬢もいないわけではない。
王太子妃には無理でも、伯爵家夫人なら子爵家のご令嬢でも支障がないからだ。
そしてアゼリア様も、アゼリア様のご年齢のご子息なら多くいる。
あくまでも、四人の候補は、王太子であるエルム兄様の婚約者候補として集められたのだ。
最初は、とても仲睦まじく出来ていたらしい。
脳筋とまではいかないが、王太子の護衛騎士を目指すトリヤは、体を動かすことが好きなアゼリア様と気が合ったようだった。
乗馬を教わったとか、護衛術を教わったとか「いや、何?十歳のご令嬢に何教えてんの?」とか思うことをよく聞いたけれど、アゼリア様も楽しそうで、本人たちが良いならと思っていた。
それに影が差し始めたのは、十日ほど前からだ。
それまで毎日、リンデン伯爵家を日参していたトリヤが訪れなかった。
急な用事が出来たと連絡は来たから、アゼリア様も何も思わなかったらしい。
翌日も「今日も行けない」と連絡が来た。
それが三日、四日と続き、お忙しいのに日参させていたことを申し訳ないとアゼリア様が、差し入れを持って自分から会いに行こうと思われたのは、二人の仲が良好だった証拠だろう。
そして学園の正門前で、待っていたアゼリア様が見たのは、その左腕に女性をまとわり付かせたトリヤだった。
「金色の髪にオレンジ色の瞳の、可愛らしい方で、ダフォディル様もとても仲睦まじくお話されていた」
そんな話を聞いたのは、トリヤがリンデン伯爵家を訪れなくなって十日経った、今日のことだ。
サフィニア様のところの侍女と、アゼリア様のところの侍女が親友らしく、アゼリア様付きの侍女に「どうかお嬢様を元気付けて欲しい」と頼まれたらしい。
アゼリア様と一緒に正門で待っていた侍女は、傷ついたアゼリア様をとても心配しているそうだ。
馬車の中にいたから、トリヤはアゼリアの存在に気付いていない。
とてもじゃないが、ただの友人には見えなかった。
他に想う方がいるのなら、候補から外れて、アゼリアお嬢様には他の候補の方をと、侍女は言っているそうだ。
リンデン伯爵たちに伝えられていないのは、アゼリア本人が両親には自分から言うから絶対に言わないでと言われているかららしく、それでも心配な侍女は、サフィニア様の侍女に相談したらしい。
私はため息を吐いた。
14
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
婚約破棄の『めでたしめでたし』物語
サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。
この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!?
プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。
貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。
ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった
白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」
な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし!
ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。
ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。
その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。
内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います!
*ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。
*モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。
*作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。
*小説家になろう様にも投稿しております。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
婚約破棄の特等席はこちらですか?
A
恋愛
公爵令嬢、コーネリア・ディ・ギリアリアは自分が前世で繰り返しプレイしていた乙女ゲーム『五色のペンタグラム』の世界に転生していることに気づく。
将来的には婚約破棄が待っているが、彼女は回避する気が無い。いや、むしろされたい。
何故ならそれは自分が一番好きなシーンであったから。
カップリング厨として推しメン同士をくっつけようと画策する彼女であったが、だんだんとその流れはおかしくなっていき………………
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる