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お父様とエルム兄様は、この世の終わりみたいな顔で、呆然としている。
そこに、お母様が追い打ちをかける。
「エルムの婚約者候補のご令嬢を集めて、お茶会も開きますわ」
「は、母上ッ」
「開きます。いいですね?」
「・・・・・・・・・はい」
エルム兄様には、頷く以外の選択は与えられなかった。
私も、今のお母様に何か言う度胸はない。私だって我が身がかわいい。
かわいそうだけど、王太子として婚約者を決めることは大事なことだし、諦めてもらうしかない。
お父様とエルム兄様は、お母様からの無言の圧力で、とぼとぼと部屋から出て行った。
仕方ない。
この刺繍が終わったら、お父様とエルム兄様用のも刺繍することにしよう。
元々、作るつもりではあったんだ。
家族に刺繍入りのハンカチを渡すのは、この世界では当たり前のことで、逆に家族以外に渡すことに意味が発生するのだ。
『あなたをお慕いしています』とか『あなたが怪我をしませんように』とか。
お守り的な物としてと、告白アイテムとしてとは意味が違うのだけど、この世界では女性から告白することは良しとされていない、らしい。
だから、告白して断られる予防線として、お守り的な意味もあるのだ。
そうでもなければ、告白アイテムのハンカチをシスルに渡すなんて絶対無理!
「お母様」
「どうしたの?アイリス」
「もし・・・もしシスル様に他に想う方がいらっしゃったら、いえ、もしシスル様と政略結婚でも難しいと判断できたら、お断りすることは可能ですか?」
私がシスルを嫌うなんて有り得ないけど、シスルからしたら私は五歳も年下の子供だ。
できるなら。
できるなら、シスルには好きな相手と結ばれて欲しい。
私と結婚したとしても、幸せになれるように努力はする。
でも、いくら公爵家嫡男として政略結婚は当たり前だといっても、好きな人がいて、その人が公爵夫人に相応しい身分なら・・・私は身を引きたい。
でも、王家からの婚約の申し入れを、シスルが断るのは難しいだろう。
なら、私から断ってあげることができれば、と思うのだ。
「そうねぇ・・・いいわ。アイリス。あなたが無理だと言うのなら、婚約は見送ってあげる。そのかわり、他の釣書を見て婚約者を決めること。それでもいい?」
「・・・わかりました。それでかまいません」
私も政略結婚は免れない立場だ。
ちゃんと釣書を見て、何度かお会いして、その中で良いと思える方と婚約しよう。
私の返答に納得したのか、お母様はフロックス公爵家への婚約打診の連絡と、エルム兄様の婚約者候補を集めるお茶会の知らせをサラサラと認めると、それを出すように指示を始めた。
婚約・・・か。
そこに、お母様が追い打ちをかける。
「エルムの婚約者候補のご令嬢を集めて、お茶会も開きますわ」
「は、母上ッ」
「開きます。いいですね?」
「・・・・・・・・・はい」
エルム兄様には、頷く以外の選択は与えられなかった。
私も、今のお母様に何か言う度胸はない。私だって我が身がかわいい。
かわいそうだけど、王太子として婚約者を決めることは大事なことだし、諦めてもらうしかない。
お父様とエルム兄様は、お母様からの無言の圧力で、とぼとぼと部屋から出て行った。
仕方ない。
この刺繍が終わったら、お父様とエルム兄様用のも刺繍することにしよう。
元々、作るつもりではあったんだ。
家族に刺繍入りのハンカチを渡すのは、この世界では当たり前のことで、逆に家族以外に渡すことに意味が発生するのだ。
『あなたをお慕いしています』とか『あなたが怪我をしませんように』とか。
お守り的な物としてと、告白アイテムとしてとは意味が違うのだけど、この世界では女性から告白することは良しとされていない、らしい。
だから、告白して断られる予防線として、お守り的な意味もあるのだ。
そうでもなければ、告白アイテムのハンカチをシスルに渡すなんて絶対無理!
「お母様」
「どうしたの?アイリス」
「もし・・・もしシスル様に他に想う方がいらっしゃったら、いえ、もしシスル様と政略結婚でも難しいと判断できたら、お断りすることは可能ですか?」
私がシスルを嫌うなんて有り得ないけど、シスルからしたら私は五歳も年下の子供だ。
できるなら。
できるなら、シスルには好きな相手と結ばれて欲しい。
私と結婚したとしても、幸せになれるように努力はする。
でも、いくら公爵家嫡男として政略結婚は当たり前だといっても、好きな人がいて、その人が公爵夫人に相応しい身分なら・・・私は身を引きたい。
でも、王家からの婚約の申し入れを、シスルが断るのは難しいだろう。
なら、私から断ってあげることができれば、と思うのだ。
「そうねぇ・・・いいわ。アイリス。あなたが無理だと言うのなら、婚約は見送ってあげる。そのかわり、他の釣書を見て婚約者を決めること。それでもいい?」
「・・・わかりました。それでかまいません」
私も政略結婚は免れない立場だ。
ちゃんと釣書を見て、何度かお会いして、その中で良いと思える方と婚約しよう。
私の返答に納得したのか、お母様はフロックス公爵家への婚約打診の連絡と、エルム兄様の婚約者候補を集めるお茶会の知らせをサラサラと認めると、それを出すように指示を始めた。
婚約・・・か。
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