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最終話:私の大切な場所
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ローズリッテの元父親は、痛みに喚き続けていたけど、もうその声に応じるつもりはなかった。
ローズリッテ・フェルゼンとして公爵家に生まれ、セドリック・アークライン王太子殿下の婚約者となった。
国の為、セドリック様の為、自分の持つ能力以上のことをするのが当たり前だと言われ続けて来た。
できて当たり前。
できなければ努力が足りない。
その挙げ句に、聖女を害したと冤罪をかけられ、斬首された。
父親はローズリッテの死すら悲しんでくれなかった。
今なら分かる。
あの男は、王太子殿下の婚約者になる駒が欲しかっただけ。
だからローズリッテの死後、別の「娘」という名の駒を手に入れるために再婚した。
ローズリッテの母親の死後にすぐに再婚しなかったのは、ローズリッテの反抗を防ぐためだったのだろう。
父娘らしい交流をした記憶はないけど、少なくともローズリッテは父親に嫌われているとは思っていなかった。
ほとんど教育のために時間を費やしていたから、接点が少なかったためかもしれない。
それに、母親が幼いうちに病死したことで、自分を産んだせいかもという気持ちがあったことも事実だ。
ずっと婚約者として寄り添って来た、セドリック様の裏切りの方が悲しかった。
レイニー様を好きになったことは仕方ないとして、ちゃんと話し合って欲しかった。
私は別に、王太子妃になりたかったわけじゃない。
聖女であるレイニー様が王太子妃になるというのなら。
セドリック様がレイニー様を愛しているというのなら。
婚約解消にだって応じたのに。
それを冤罪の上に斬首という最低な判断をした。
私がロゼ・リヴァルスとして生まれ変われたのは、レイニー様の中にある礼子という存在のおかげだ。
少なくとも礼子が転生する前のレイニー様は、セドリック様といつも仲睦まじそうに過ごされていた。
いくら聖女といえど、婚約者のいる男性との距離感ではなかった。
もし礼子がいなかったら、私は生まれ変わることもなく、あのまま恨みを持ったまま輪廻の輪に組み込まれたのだろう。
そして、セドリック様にも国王陛下にも元父親にも復讐することも叶わず、新たな生を生きることになったのだと思う。
復讐が正しいことだとは言えない。
でも、もし叶うなら彼らに聞いてみたい。
「自分たちのしてきたことが、本当に正しかったと今でも言えるか?」と。
セドリック様は、ローズリッテとキチンと話し合い、円満に婚約解消していればレイニー様と幸せになれたはず。
国王陛下は、セドリック様の暴走を咎め、正しい方向に導いていれば国は滅びなかったはず。
元父親は、妻と娘に愛情を注ぎ、ちゃんと家族でいたなら、死ぬことはなかったはず。
彼らは選択を間違った。
だから私は、ローズリッテの魂の願うままに彼らに復讐をすることにした。
だけど。
「パパ、ノイン、サウロン様、レイ。戻ろう?」
「もういいのか?」
「うん!私の大切なのは、パパであり、ノインであり、サウロンさまであり、レイであり、魔族のみんななの。私の大切な場所はパパたちのいるここであり、過去じゃないから」
だから、もう過去を振り返るのは終わりにする。
私はこれから長い時間を、パパの娘として幸せに生きるんだ。
***end***
ローズリッテ・フェルゼンとして公爵家に生まれ、セドリック・アークライン王太子殿下の婚約者となった。
国の為、セドリック様の為、自分の持つ能力以上のことをするのが当たり前だと言われ続けて来た。
できて当たり前。
できなければ努力が足りない。
その挙げ句に、聖女を害したと冤罪をかけられ、斬首された。
父親はローズリッテの死すら悲しんでくれなかった。
今なら分かる。
あの男は、王太子殿下の婚約者になる駒が欲しかっただけ。
だからローズリッテの死後、別の「娘」という名の駒を手に入れるために再婚した。
ローズリッテの母親の死後にすぐに再婚しなかったのは、ローズリッテの反抗を防ぐためだったのだろう。
父娘らしい交流をした記憶はないけど、少なくともローズリッテは父親に嫌われているとは思っていなかった。
ほとんど教育のために時間を費やしていたから、接点が少なかったためかもしれない。
それに、母親が幼いうちに病死したことで、自分を産んだせいかもという気持ちがあったことも事実だ。
ずっと婚約者として寄り添って来た、セドリック様の裏切りの方が悲しかった。
レイニー様を好きになったことは仕方ないとして、ちゃんと話し合って欲しかった。
私は別に、王太子妃になりたかったわけじゃない。
聖女であるレイニー様が王太子妃になるというのなら。
セドリック様がレイニー様を愛しているというのなら。
婚約解消にだって応じたのに。
それを冤罪の上に斬首という最低な判断をした。
私がロゼ・リヴァルスとして生まれ変われたのは、レイニー様の中にある礼子という存在のおかげだ。
少なくとも礼子が転生する前のレイニー様は、セドリック様といつも仲睦まじそうに過ごされていた。
いくら聖女といえど、婚約者のいる男性との距離感ではなかった。
もし礼子がいなかったら、私は生まれ変わることもなく、あのまま恨みを持ったまま輪廻の輪に組み込まれたのだろう。
そして、セドリック様にも国王陛下にも元父親にも復讐することも叶わず、新たな生を生きることになったのだと思う。
復讐が正しいことだとは言えない。
でも、もし叶うなら彼らに聞いてみたい。
「自分たちのしてきたことが、本当に正しかったと今でも言えるか?」と。
セドリック様は、ローズリッテとキチンと話し合い、円満に婚約解消していればレイニー様と幸せになれたはず。
国王陛下は、セドリック様の暴走を咎め、正しい方向に導いていれば国は滅びなかったはず。
元父親は、妻と娘に愛情を注ぎ、ちゃんと家族でいたなら、死ぬことはなかったはず。
彼らは選択を間違った。
だから私は、ローズリッテの魂の願うままに彼らに復讐をすることにした。
だけど。
「パパ、ノイン、サウロン様、レイ。戻ろう?」
「もういいのか?」
「うん!私の大切なのは、パパであり、ノインであり、サウロンさまであり、レイであり、魔族のみんななの。私の大切な場所はパパたちのいるここであり、過去じゃないから」
だから、もう過去を振り返るのは終わりにする。
私はこれから長い時間を、パパの娘として幸せに生きるんだ。
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