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魔王妃ダリア

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 パパが会いたいと願ってくれたのは、今は亡き魔王妃ダリア。

 私のママ。

 私のママであるダリアは人間。
魔王であるパパとどうやって知り合ったのかは知らないけど、二人は愛し合った。

 私を産んだ後、実家に呼ばれて戻り、そして両親に殺されたママ。

 私のピンク色の髪はママ譲りだと聞いたから、ピンク色の髪をしているのは間違いない。

 私は湖面を、見逃さないように真剣に覗き込んだ。

「あ・・・」

 湖面にパパの姿が浮かび上がり、その隣で綺麗な笑みを浮かべる女の子の姿が見えた。

 ピンク色の髪をハーフアップにして、品のいいドレスを身にまとっているのは、ローズリッテと同じくらいの年齢の少女。

「ママ?」

「ああ、そうだ。ダリアだ」

 パパの声が、いつもより少し低い。

 見たくなかったのかな。
パパはママを救えなかったこと、すごく悔やんでた。

 それでも私が見たいと願ったから。

「パパ」

「これはちょうどダリアと知り合った頃くらいだな。ダリアは、アルストロメリア皇国の公爵家の令嬢だった。初めて出会った時にダリアに引っ叩かれたんだ」

「そう・・・ん?」

 え?今、引っ叩かれたって言った?

「パパ、何したの?」

「何もしていないぞ?ただ俺の嫁にならんかと聞いただけだ」

「・・・公爵令嬢だって言ったよね?それなら婚約者いたんじゃないの?」

 年齢的にいると思う。
基本的にどこの国でも、高位貴族の令嬢って王族か高位貴族と婚約してるのよ。

 アルストロメリア皇国はどうなのか知らないけど。

 ん?
アルストロメリア皇国、アルストロメリア皇国・・・

 確かローズリッテの時の王太子妃教育で・・・

「パパ。アルストロメリア皇国って、八年前に滅んでない?」

 はっきりとした日付までは覚えてないし、細かいところはわからないけど、確か・・・

「ああ。俺が滅ぼした。ダリアを殺したアイツらを許すことが出来なかった。皇族とダリアの両親以外の貴族たちに、選択肢を出した。そいつらに付いて国ごと滅ぼされるか、それともそいつらの首を差し出して、別の国として再建するか。奴らは愚かにも王族たちに付いた。魔族といえど勝てると思ったのだろう。だから、国ごと滅ぼすことにした。サウロンたち悪魔族に魂を刈り取らせ、残った平民は、隣国に面倒を見てもらうことにした」

「疫病が流行ったって・・・」

「そういうことにしたのだ。アルストロメリア皇国のその後を引き受けてくれた隣国が、そういうふうに公表した。魔国ためにもそうした方が良いと言ってな」

 確かに、人の国を簡単に滅ぼしたと知られれば、魔国の立場は難しいものになると思う。
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