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諦めるのは慣れてるの

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 私は八歳になった。

 基本的に私は魔王城から出ない。

 というのも、パパが過保護なのよ。
パパだけじゃないわ、ノインまで過保護。

 レイと一緒だというのに、お城の外に出かけようとしたら付いてくる。

 前にどうしてもお城以外の場所が見たくて、ラーヴァナ様に案内を頼んだら・・・

 パパが拗ねちゃったのよ。
どうしてパパに頼んでくれないんだって。

 だって、パパもノインもお仕事が結構忙しい。

 ローズリッテの復讐のためにあれこれしてくれたパパたちが、夜遅く私が眠ったあとに残った仕事をしてたこと、私知ってるんだから。

 私が気にしたらいけないから、夕方からはよほど急ぐ仕事以外は一旦中断して、私との時間を大切にしてくれてた。

 そして私が眠ってから再開してたの。

 そんなことをしてたら、体壊しちゃうから・・・
 だから、私は外に行きたいとは言わなくなった。

 ローズリッテだった頃も、自由はなかったわ。

 ローズリッテは、公爵令嬢で王太子の婚約者だったから、狙われる可能性があった。

 それでも子供の頃は、セドリック様がおいでになれば色んなところに行けたわ。

 学園に通う頃には、そんな時間の余裕はなくなったけど。

 魔族の人たちなら、魔王の娘である私を狙ったりしないと思ったんだけど。

 それに、ローズリッテの時と違って、私は魔法も使える。

 だけどパパもノインも、必ず一緒について来た。

 だから、私は魔王城から出なくなった。

 私が八歳になってしばらく経った頃、朝食の場でパパが言ったことに驚いた。

「ロゼ。今日から一週間、サウロンの城に出かけよう」

「え?サウロン様の?」

「ああ。サウロンがロゼとレイに見せたいものがあるそうだ」

「・・・でもパパ、お仕事は?」

 サウロン様の城ってことは、悪魔族のお城ってことよね。

 行くのはいいんだけど、今の口ぶりだとパパも一緒なのよね?
 一週間もお仕事、大丈夫かな?

 そんな気持ちが顔に出ていたのか、パパが眉尻を下げる。

「ロゼ。ずっと我慢させていたのだな。すまなかった」

「パパ?」

「申し訳ありません、ロゼ様。確かに仕事はキチンとしていただけねばなりませんが、ロゼ様はまだ八歳。我儘を言ってかまわないのですよ」

「ロゼが素直で聞き分けが良いからと、甘え過ぎていた。何でもかんでもきけるわけではないが、思ったことを言っていいのだ、ロゼ」

 思ったことを、言っていい?

 同い年のご令嬢と遊びたいと言ったら、婚約者を優先するのが当たり前だと言われたわ。

 王太子妃教育に時間を取られて、セドリック様と過ごす時間がないと言えば、私の要領が悪いからだと怒られたわ。

 望んでも叶わないから、段々諦めるようになっていったの。

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