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これは罰か②〜アークライン国王視点〜

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「ローズリッテ・・・殺したはずだ・・・どうしてここにいる?レイニーを・・・返せ!」

 ブツブツと小声で呟きながら、自分に掴みかかってきた息子を、私は突き飛ばした。

 痛みで叫び続け、ローズリッテの幻影を見たと言い出したセドリックは、北の塔に幽閉してあったはずだ。

「誰か!誰か、ここへ!」

 どうして、誰も来ない?
騎士たちは何をしているんだ!

 セドリックの濁った目が、再び私を見た。

「せ、セドリック・・・」

「ローズリッテ。どうして生きているんだ・・・あの時、間違いなく首を刎ねたはずなのに・・・」

「セドリック!何を言っている!誰かっ!誰かいないのかっ!」

 セドリックは、完全に狂っている。
まるで、そこにローズリッテがいるかのような口ぶりに、ゾッとした。

 大体、扉の前にいるはずの騎士は、何故やって来ない?

 そもそも、北の塔にいたはずのセドリックを、誰がここへ連れ出したんだ?

 近づこうとするセドリックから距離を取りながら、扉に向かう。

 騎士がいることで、剣などはこの部屋にはない。

 幸いにも、セドリックの方も何も武器は持っていないようだから、このままこの部屋から出て、ここに閉じ込めておくか。

 外から鍵はかけられないが、廊下に出れば誰かいるだろう。

 すぐに拘束して塔に戻さねば。

「セドリック!私だ!お前の父だ!よく見ろ」

「ローズリッテ・・・何故、だ?お前さえいなくなれば、レイニーと幸せになれるはずだったのに・・・」

「セドリック!」

 虚な目で、何度も同じことを繰り返すセドリック。

 再び飛び掛かろうとしてきたセドリックに、手元にあった本を投げつけ、扉に向かった。

 セドリックが倒れているうちに、扉を開けて廊下に出る。

「誰・・・か・・・」

 叫ぼうとして、目を見開いた。

 そこには、扉の前で立っていたはずの騎士が、血まみれで倒れていたのだ。

「・・・え?」

 思わず声を上げて、人を呼ぶことすら忘れる。

 ドン!

 背中に感じた衝撃に、首だけを後ろへ回し見た。

 私の背中に抱きつくようにしたセドリック。

「・・・ッ!」

 左腰のあたりが熱い。

 体をひねって、セドリックを突き飛ばそうとしたが、思ったよりも力が入らず、そのままその場に倒れ込んだ。

 私の上に馬乗りになってきたセドリックの両手に、目が釘付けになる。

 真っ赤な血に染まったナイフが握られていた。

 何故、ナイフなど。

 馬乗りになったセドリックが、その両手を私に振り下ろした。

 肩に。胸に。顔に。首に。

 何度も何度も振り下ろされる。

 そのナイフが、私がセドリックに幼い頃に与えたものだということに気付いたのは、私の命の灯が消える直前だった。
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