転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ！〜

モブ、提案する。

「ええと、ラトビア様とプルメリア様を婚約させたらどうかしら？」

　自分の婚約者であるティアラが、他の男に色目を使ったら、さすがにオリバーだって嫌なんじゃないかな？

「プルメリア嬢が婚約という意味を、理解するか微妙なところですわ。あの方は貴族の考えとは別次元のお考えで生きてらっしゃるみたいですもの」

「それを言うなら、オリバーもだろ？普通に考えて、婚約者がいる男にベタベタとすり寄るなんて、どこの阿婆擦れだって話だろう？それなのに、あの阿婆擦れのどこが良いと言うんだか」

「ラトビア様には、魅了の術は使われていないということでしたわよね？」

「ああ。いくら脳筋にしたって、限度があるだろう」

　えーと。２人して理解しない可能性が・・・あー。高いかもなぁ。

　できれば、さっさとオリバーだけの攻略で、納得してもらえたらって思ったんだけど。

　このまま同じことをやれば、オリバーもティアラも、平民落ちでは済まなくなる。
　国王陛下たちも、前回を知っている。ということは、間違いなく処刑案件になってしまう。

　私は別に、オリバーもティアラも好きではない。
　少なくとも、今現在この世界で生きているあの２人のことは好きにはなれない。

　あの２人のせいで、カレリアたちは怖い思いをしたし、シキは私のために魔力を対価に差し出してしまった。

　だから、どちらかというと嫌いな部類なのだけど・・・

　私は別に、こんなことで処刑するなんて酷い！なんて、お花畑な考えでいるわけではない。

　ティアラもオリバーも、そうされても文句言えないことをしてしまっている。

　だけど。

　オリバーとティアラは、私が作った大切なキャラクターだ。

　現実にいる彼らが、そのキャラクターではないとは理解しているけど、ほんの少し、ほんの少しだけ、寂しい気持ちがあるのも事実だ。

　だから、平民落ちとかはやむ得ないとして、生き残る道があればと思ったんだけどな。

　それまで、黙っていたシキが口を開いた。

「アイル様は・・・あれほどのことをされても彼らを死なせたくないと思われているのですか？」

「・・・別に、あの人たちを救いたいとか、そういうんじゃないの。貴族として人として、あの２人は仕方ないことをした。何を言っても聞かなかったから、私たちの力が足りなかったとか思っていないわ。ただ、せっかくやり直せているのだから、何か違う道を指し示せたらって思ったのよ」

　彼らを救いたいとか、傲慢な考えなわけでもない。
　そう。
ただ、チャンスを与てたいと思っただけなのだ。