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モブ、目覚める。

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 目を開けると、真っ白な天井が見えた。

 ふと、初めてこの世界に転生した時に「知らない天井だ」なんて某人型決戦兵器に乗る碇シ○ジくん的な台詞を言ったことを思い出した。

 あの後、乙女ゲームのことを思い出しながら、クローゼットを見たら、ドレスがものの見事に地味系だったんだわ。

 そして、ノックの後にシキがやって来て、黒のレースのドレスに白の付け襟をつけてくれたんだった。

 私・・・
思い出せてるわよね?大丈夫よね?

 イレーヌ様のことも覚えてるし、ヴェルハルトがイレーヌ様ラブなことも覚えてる。

「気が付かれましたか?」

 聞き慣れた、でも聞きたくて仕方なかった声が聞こえた。

「シキ・・・」

「え・・・?」

「シキ。私のために魔力を引き換えにしたの?もう、シキには魔力はないの?」

 ベッド横で腰掛けていた椅子から、シキが思わず立ち上がる。

「アイル・・・様?」

「ねぇ、シキ。もし私に何かあっても、シキの命だけは対価にしないで。シキがいない世界に生き返っても、私・・・絶対に幸せになれないから」

「・・・なら、絶対に俺の前からいなくならないで下さい。俺はアイル様がいない世界では生きていけない」

 伸ばされた手に手を重ね、シキの胸に縋るように抱きついた。

 キツく抱きしめられ、何度もアイル様と名前を呼ばれる。

 私はシキの胸に顔を当てて、鼓動に耳をすませた。
 シキの香りに包まれて、鼓動を聞いていると、とても安心する。

「ね、シキ」

「はい」

「シキは、どうして学園にいるの?私の侍従でなくなってるのよね?」

 シキは私より4歳年上だから、貴族として学園に通ってるというわけじゃないだろう。

 大体、制服も着てないし。
ということは、他の誰かの侍従になってるということ?

「ヴェルハルト殿下の侍従として、学園には来ております」

「どうして?私のそばに居たくなかった?」

「まさか!そんなわけありません!殿下が・・・記憶のないアイル様の婚約者になるには侍従では無理だろう、と。公爵家でも侯爵家でも養子にでも何でもしてやるから、とおっしゃって」

 確かに、私はシキの存在を忘れていた。
だけど。

「馬鹿。シキの馬鹿。そばにいてよ。お父様もお母様もシキのこと、覚えてるのでしょ?侍従でも婚約させてくれたじゃない。そばにいてくれたら私、たとえ思い出さなくてもシキのこと好きになるもの。何度忘れたって、何度だって好きになるもの」

「アイル様・・・」

「シキ。私ね、神様に言われたの。ずっと心の奥底にある気持ちは、消えないんだって。シキを大好きな気持ちは消えてなくならないんだって」

 私はシキのことが大好きだから、だからちゃんと心の中に残ってたの。


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