転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな

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モブ、入学する(2度目)

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「ごきげんよう。ローラン様」

 入学式を終えた私に、鈴を転がすような声がかけられた。

 振り返ると、金髪碧眼の、とても大人っぽいご令嬢がにっこりと微笑まれていた。

「ごきげんよう」

「わたくし、イレーヌ・レジスタと申しますわ」

 思わず目を見開いた。
レジスタ公爵家のご令嬢?どうして、私に話しかけてくるの?

「アイル様とお呼びしても?わたくしのことはイレーヌとお呼びくださいませ」

「もちろんです、イレーヌ様」

 あの白昼夢と同じ?
なんだか怖いけど、断れるわけがない。身分の上の方の申し出だもの。

「あ。イレーヌ様。私たちのこともご紹介ください」

 現れたのは、アメジスト色の髪と瞳のご令嬢と、エメラルド色の髪と瞳のご令嬢。

「ふふっ、もちろんですわ。コモンズ侯爵家のご令嬢のカレリア様と、フェルゼン侯爵家のご令嬢のエリーゼ様ですわ」

「は、はじめまして。アイル・ローランと申します」

 どうして?
イレーヌ・レジスタ公爵令嬢に、カレリア・コモンズ侯爵令嬢、エリーゼ・フェルゼン侯爵令嬢って言ったら、の婚約者たちじゃない。

 え?
何なの・・・攻略対象って。
私、何言ってるの?頭が・・・痛い!

「危ないっ!」

 ぐらりと倒れそうになった体を、誰かの手が抱き止めてくれる。

「大丈夫ですか?」

 その声に、その人が纏う香りに、どこか安堵する自分がいて、そのことにハッとした。

「も、申し訳ありません。ありがとうございます」

 誰だかわからないけど、婚約者でもない男性に抱き抱えられたままなんて、貴族令嬢としてはしたないと思われてしまう。

 銀髪に碧眼の、とても整った容姿をされたその方は、曖昧に微笑んだ。

「ご無事でよかった」

「どうした?シキ」

「ヴェルハルト様。アイル様の体調が悪かったみたいで、倒れそうになられたのをリングス様がお助けになったのですわ」

「ああ、顔色が悪いな。救護室に行った方がいいだろう。エドワード、先生に連絡を。カイルは、救護の先生に連絡を入れろ」

 ヴェルハルト様って、王太子殿下よね?イレーヌ様の婚約者の。
 エドワード様は、カレリア様の婚約者の公爵家のご嫡男。
 カイル様はエリーゼ様の双子のお兄様でフェルゼン侯爵家のご嫡男。

 どうしてそんな凄い方ばかりが、目の前にいるの?

 私は、裕福ではあるけど、ごくごく普通の、伯爵家の娘で・・・

 なのに、この国のトップクラスの方々に、どうして囲まれているの?

 それに・・・
シキと呼ばれた方から目が逸らせない。

 めまいがする。
意識が途切れる寸前に、再び、揺れた体を支えようとしたシキ様が私の名を呼んだ気がした。
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