転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな

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モブ、断罪を見る④

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「へ?禁呪?」

 ティアラが間抜けな顔をして、カイルやヴェルハルトたちに顔を向ける。

 あー。アレは知らないやつだわ。
『月に恋した太陽』のラノベの中では、魅了魔法なんて出てこない。

 だって、そんなもの使わなくてもヒロインは本当に魅力的で、その本質にヴェルハルトは惹かれたんだから。

 でも、多少なりとも他のラノベを読んだことがあるのなら、魅了魔法を使ってザマァされるヒロインのことを知っててもおかしくないのに。

「この国ではね、魅了魔法や呪法と言われる呪いの魔法は禁呪とされてるんだよ。さっきから君が使ってるその魔法のことだよ」

「な、なに言ってるの、カイル。私はそんな、魔法なんて・・・」

「使ってないって?残念。ちゃんと証拠はあるんだ。エドワード様と殿下の胸元のブローチを見てみなよ。元々、澄んだ青だったのが今は、真っ赤。魅了魔法を使われたって証」

 カイルはエドワードとヴェルハルトの胸元を示しながら、ティアラと、そして周囲にいる学園生たちに説明していく。

 ティアラは最初から、攻略対象にだけこだわっていたから、他の生徒たちは基本、婚約者にベタベタされたなんていう迷惑は受けていない。

 ただ、彼女の奔放な振る舞いを良しとしない人間は多く、明かされる事実にみんな顔を顰めていた。

「な、なにを言っている?カイル」

「ご安心くださいませ、ラトビア様。貴方様には魅了魔法は使われておりませんわ。正真正銘、ラトビア様のご本心でプルメリア様に惹かれていらっしゃるということですわ」

「ああ。そうだな。婚約者がいる身でありながら、他の令嬢にうつつを抜かし、婚約者や他のご令嬢に罵声ばかりか暴力まで振るおうとした人間に、魅了魔法なんて必要ないよな」

「・・・ッ!!」

 怒りのあまりか、顔を真っ赤にしたオリバーだけど、カイルの拘束魔法のせいで掴みかかることも出来ない。

 あの、イレーヌの公爵家でのお茶会。シキたちがカイルに呼ばれていたのは、魔法にかからないように防御のためのブローチを渡すためだったそうだ。

 あの時点で、ティアラのことを警戒していたってことなのね。
 カイルって本当に魔法に精通してるんだ。

 でも、そんなことなら言ってくれたら良かったのに、ってシキに言ったら、シキは真顔で「魔法具がなければあんなのに魅了される男だと思われたくない」って。

 えっと、魅了魔法だよ?
国が禁忌魔法に定める魔法が、精神論だけでどうにかなるとは思えないけど、シキの言ってくれた言葉は何だか私の心を温かくしてくれたから、ま、いっか。

 
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