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モブ、見届ける②

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「イレーヌ!君は僕の婚約者であるという立場を振りかざし、ティアラのことを虐めていただろう?」

「あら?ヴェルハルト様。公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者であるわたくしが、その見窄らしい小娘に何をしたとおっしゃるのかしら?」

「イレーヌ。ティアラは君に何をされても、ずっと我慢していたんだ。君は確かに公爵家のご令嬢で、高貴な身分であることは事実だ。だけど僕は、その身分を振りかざす行為を好ましく思えない」

 ラノベの中で、決してティアラとヴェルハルトは不貞をしているわけではない。

 お互い惹かれあってはいても、婚約者のいる身として、節度ある距離感を保っていた。

 だけど、婚約者であるイレーヌは、ティアラの存在を良しとせず、教科書を破いたり、噴水に突き落としたりとイジメを繰り返す。

 パーティーで、ちゃんと婚約者であるイレーヌをエスコートしたヴェルハルトだが、ティアラのドレスにイレーヌが飲み物をかけるのを見てしまう。

 責めるヴェルハルトに、謝ろうともしないイレーヌを、父親であるレジスタ公爵は勘当することを告げ、イレーヌとヴェルハルトの婚約は白紙とされる。

 そう。
ラノベの中のヴェルハルトは、最後まで婚約破棄などとは言わない。

 婚約者がいながら、ティアラに惹かれてしまった自分を後ろめたく思っていたのだ。

 ティアラは、それをわかっているのかな?
 会場の中央で、イレーヌとカレリアに対峙したティアラは、ヴェルハルトとエドワードが、彼女たちを責めてくれるのを待っている。

 だけど、たとえ演技とはいえ、エドワードがカレリアを責めるわけがない。

「さぁ、ティアラ・プルメリア嬢。カレリアに何をされたか、みんなの前ではっきり言ってくれ」

「え?な、なに?エドワード」

「僕からもお願いする。イレーヌが君に何をしたか、ここではっきりと言ってやってくれ」

 エドワードとヴェルハルトに促され、ティアラは困惑しているみたいだ。

「君の口から、彼女たちの罪を明らかにして欲しい」

「エドワード・・・で、でも・・・」

「僕も殿下も、みんなそばにいる。だから、君自身で全てを明らかにして欲しい」

 うーん。さすがエドワード。
誘導が上手い。

 エドワードは決して、自分たちはティアラの味方だと言っていない。
 ティアラ自身の口で、イレーヌたちが何かしたのだとしたら言ってみろと言っているだけだ。

 そして、攻略していると自惚れているティアラと、脳筋のオリバーにはそれが理解できていない。

 ティアラは、エドワードに縋り付くようにしてから(ちょっとエドワードの顔が嫌そうに歪んだ)口を開いた。

「うん、分かった。怖いから、そばにいてね、エドワード」

 
 

 
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