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モブ、甘やかされる。
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馬車に乗り込み扉を閉めると、シキはすぐに私の制服を風魔法で乾かしてくれた。
シキが魔法を使えることは、みんなには内緒だから、早く乾かしたいのに、乾かせずにいたのだろう。
「大丈夫ですか?アイル様」
「大丈夫。濡れたのが気持ち悪かっただけだから」
あとは、あのヒロインの酷さに驚いてただけだから。
そして、そろそろ恥ずかしいから膝の上から下ろして。
そう。
現在、私は馬車の座席に座ったシキの、肘の上に横抱きに座らされているのである!
いや。
お姫様抱っこで馬車に乗り込んだ関係上だろうけど、もう制服も乾いたし、繰り返すけど恥ずかしいから!
「シキ?そろそろ御者席に・・・」
シキが御者もしてくれているのである。
つまりは、シキがここにいて、私を抱いているのでは、馬車は動かない。
私がそう言うと、シキはそのお綺麗な顔にどこか不満そうな表情を浮かべた。
いや。無表情だけどね。
でも、転生してから常に一緒にいるせいか、なんとなくだけどシキの感情がわかるようになっていた。
「何故、あのような振る舞いをされなければならない・・・」
「シキ?」
「アイル様が何をしたというのですか」
シキのその苦しそうな声に、私は思わずその頬に手を添えた。
「アイル様」
「きっと、何か意識の相違があったのよ。イレーヌ様たちがお話すれば、納得して下さるわ」
というか、多分ヒロインに攻略されてるんだと思う。
まぁ、攻略されてても、普通はあんなことしないんだけど。
悪役令嬢となった婚約者に、ああいうことをされるのはヒロインの方なんだけど。
でもオリバー、アレ大丈夫かな。
どう考えても悪役令嬢じゃないエリーゼに、嫌われてるっぽいけど。
確か、オリバーの母親のラトビア侯爵夫人が、エリーゼを気に入っていて、頼み込んで婚約者になったんじゃなかったっけ。
まぁ、乙女ゲームの設定だから、この世界では違うのかもしれないけど。
「俺・・・私がおそばにいれば・・・」
「いくらなんでも、侯爵家の子息であるラトビア様に手を出すわけにはいかないでしょ?あと・・・シキが俺って言うの初めて聞いた気がする」
「すみません。侍従として相応しくないので、直していたんですが」
「じゃあ、婚約者としての時だけでも、俺って言って?」
別に俺でも私でも、シキが出来る侍従であるのは変わらないし、私も、それからお父様たちも気にしないと思うんだけど。
シキのこだわりなら、仕方ないと思う。
でも、前世の記憶持ちの私からすると、男の人の私呼びって、なんか違和感あるのよね。
「・・・っ!わかりました」
「あ、あと、突き飛ばされたって言ったら、お父様たちに心配かけちゃうから、偶然ぶつかって、噴水に落ちたことにして?」
「それは・・・」
「ね?度を越すようなら、ちゃんと相談するから」
私がお願いポーズをすると、シキはため息をついたあと、私をぎゅっと抱きしめた。
シキが魔法を使えることは、みんなには内緒だから、早く乾かしたいのに、乾かせずにいたのだろう。
「大丈夫ですか?アイル様」
「大丈夫。濡れたのが気持ち悪かっただけだから」
あとは、あのヒロインの酷さに驚いてただけだから。
そして、そろそろ恥ずかしいから膝の上から下ろして。
そう。
現在、私は馬車の座席に座ったシキの、肘の上に横抱きに座らされているのである!
いや。
お姫様抱っこで馬車に乗り込んだ関係上だろうけど、もう制服も乾いたし、繰り返すけど恥ずかしいから!
「シキ?そろそろ御者席に・・・」
シキが御者もしてくれているのである。
つまりは、シキがここにいて、私を抱いているのでは、馬車は動かない。
私がそう言うと、シキはそのお綺麗な顔にどこか不満そうな表情を浮かべた。
いや。無表情だけどね。
でも、転生してから常に一緒にいるせいか、なんとなくだけどシキの感情がわかるようになっていた。
「何故、あのような振る舞いをされなければならない・・・」
「シキ?」
「アイル様が何をしたというのですか」
シキのその苦しそうな声に、私は思わずその頬に手を添えた。
「アイル様」
「きっと、何か意識の相違があったのよ。イレーヌ様たちがお話すれば、納得して下さるわ」
というか、多分ヒロインに攻略されてるんだと思う。
まぁ、攻略されてても、普通はあんなことしないんだけど。
悪役令嬢となった婚約者に、ああいうことをされるのはヒロインの方なんだけど。
でもオリバー、アレ大丈夫かな。
どう考えても悪役令嬢じゃないエリーゼに、嫌われてるっぽいけど。
確か、オリバーの母親のラトビア侯爵夫人が、エリーゼを気に入っていて、頼み込んで婚約者になったんじゃなかったっけ。
まぁ、乙女ゲームの設定だから、この世界では違うのかもしれないけど。
「俺・・・私がおそばにいれば・・・」
「いくらなんでも、侯爵家の子息であるラトビア様に手を出すわけにはいかないでしょ?あと・・・シキが俺って言うの初めて聞いた気がする」
「すみません。侍従として相応しくないので、直していたんですが」
「じゃあ、婚約者としての時だけでも、俺って言って?」
別に俺でも私でも、シキが出来る侍従であるのは変わらないし、私も、それからお父様たちも気にしないと思うんだけど。
シキのこだわりなら、仕方ないと思う。
でも、前世の記憶持ちの私からすると、男の人の私呼びって、なんか違和感あるのよね。
「・・・っ!わかりました」
「あ、あと、突き飛ばされたって言ったら、お父様たちに心配かけちゃうから、偶然ぶつかって、噴水に落ちたことにして?」
「それは・・・」
「ね?度を越すようなら、ちゃんと相談するから」
私がお願いポーズをすると、シキはため息をついたあと、私をぎゅっと抱きしめた。
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