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10歳

84ページ:前に進む者。立ち止まる者。

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 マモンとマズルを連れて、辺境へと向かった。

 マモンは慣れたみたいだけど、いきなりの転移にマズルは顔を青くしていた。

「大丈夫ですよ?手さえ離さなければ、異空間に取り残されたりしませんから」

「姫様。それ、慰めになってません」

 マモンの言葉に首を傾げる。
間違ったことを言ったわけじゃないのに、どうしてそんなに残念な子を見るみたいな顔をされてるのかな。

「まあ、いいです。さて、マモン。婚約者の方はどこですか?」

「は?」

「紹介してくれないつもりですか?ひどくないですか?マズルもそう思いますよね?」

「・・・ぷっ!」

 私がそう言うと、マズルは思わずといった感じで、吹き出した。

「何で笑うんですか?」

「いや。自分の馬鹿さ加減に呆れたんです。どうして貴女・・・姫様を害しようなんて思ったんだか」

「?」

「いえ。なんでもないです。マモンの婚約者に会わせてもらうんですよね?」

 マズルの言いたいことはわからなかったけど、その晴れやかな、憑き物が落ちたような表情に、マズルはもう大丈夫だと、そう思えた。

「そういえば、昨日はゆっくり出来ましたか?」

 本来ならもう会えないはずの家族と、一晩過ごせたのだ。
 色々と話せたのではないだろうか。

「親不孝をしましたが、父はマルクに爵位を譲ったあと、こっちに顔を見せに来てくれるそうです。姫様、ありがとうございます。父に、孫を抱かせてやれそうです」

「処罰を決めたのは、国王陛下ですよ。まぁ、当分はマルクの後見として王都からは離れられないでしょうが、そうですね、孫ができる頃には行けるでしょうね」

 お父様がそこまで考えて、処罰を決めたのかどうかは分からない。
 でも、きっとブロワー伯爵や伯爵夫人のことを考えて、決めたのだと思う。

「さて、マモン!会わせてくれないつもりですか?」

「・・・勘弁して下さいよ。いきなりお姫様に会わせたりしたら、卒倒しちゃいます。次においでになる時までには、話しておきますから」

 人を猛獣か怪獣みたいに言わないで欲しい。卒倒って、何。
 しかも、どうやら今日は会わせてくれないみたいだし。

「結婚式には出ます。招待状、送って下さい」

「姫様・・・」

「約束ですよ?あ。マズルも恋人が出来たら、教えて下さいよ?秘密なのはナシですよ」

 マモンとマズルが苦笑しながらも頷いたのを確認して、私は王宮へと転移した。

 あの2人は大丈夫だろう。
彼らは前を向いて進もうとしている。

 そういえば、アル兄様は、結局どうするのだろうか。
王太子としてシャンティーヌ様と婚約するか、身分剥奪されるか。

 いつまでも立ち止まってはいられないのだ。アル兄様も、そして私も。
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