80 / 108
10歳
79ページ:選択肢
しおりを挟む
「シエル・・・」
アル兄様が切なそうな顔で、私を見遣る。だけど、目を逸らしたのは、アル兄様の方が先だった。
「アル兄様。アル兄様がどの道を選ぼうと、私は何も言うつもりはありません。ですが、亡くなった伯父様たちのお気持ちをよくお考えになった上で、自分が正しいと思う道を進んで下さい。それから・・・」
私はそこで一旦、言葉を切った。
目を逸らしたままのアル兄様の横顔を、じっと見つめる。
「アル兄様のことは、家族としての好きとしか思えませんでした。ずっと大切にしてくださっていたのに、お気持ちに応えられず、申し訳ありません」
「・・・」
アル兄様は何も答えない。
私も別に答えが欲しくて言ったわけじゃないから、構わない。
学園を卒業する年齢まで、誰も好きにならなかったなら、婚約者になってもいい。
そう思ったのは、本心だ。
決してアル兄様を嫌いではないから、政略結婚と思えば、よく知っている相手の方がいいと思った。
でも今回、お父様はアル兄様に罰という形で婚約者を別に決めることを申し付けた。
その意図は、私にはわからない。
でも、自分を王太子としてふさわしくないと言って、後ろ向きなままのアル兄様を変える存在は、私ではなくシャンティーヌ様なのだろう。
アル兄様の目の前には、2つの道がある。
1つは、シャンティーヌ様と婚約し、王太子としてもう一度やり直すこと。
もう1つは、身分を剥奪され、イチ貴族としてやり直すこと。
どちらの道を選んでも、私と結ばれることはない。
お父様たちは、私がどんな身分の人間と結ばれてもいいと思ってくれているけど、アル兄様が王太子でなくなるなら、私は王女として、未来の国王となるに相応しい相手と結婚する必要がある。
前国王陛下の伯父様の子供はアル兄様だけだったし、親戚身内も、弟であるお父様だけだった。
つまりは、王家の血筋は、アル兄様か私だけなのだ。
私は王族という身分にはこだわりはないけど、私を大切に愛してくれる、お父様やお母様のことは大切にしたい。
「話は以上だ。アレクセイは、3日後までにどうするのか決めること。それから、マモンは今夜はブロワー伯爵家に泊まりなさい。辺境には知らせておく。明日、マモンとマズルは登城し、シエルと共に辺境へ行きなさい」
「陛下。ですが、俺はもうブロワー伯爵家には・・・」
「結婚することも、伯爵夫人にも話してあげるように。伯爵家に籍を戻すことはできないが、マモンもマズルも、伯爵の子供であることには変わりない。元気な姿を見せてあげなさい」
お父様の言葉に、ブロワー伯爵も、マモンもマズルも深く深く、頭を下げたのだった。
アル兄様が切なそうな顔で、私を見遣る。だけど、目を逸らしたのは、アル兄様の方が先だった。
「アル兄様。アル兄様がどの道を選ぼうと、私は何も言うつもりはありません。ですが、亡くなった伯父様たちのお気持ちをよくお考えになった上で、自分が正しいと思う道を進んで下さい。それから・・・」
私はそこで一旦、言葉を切った。
目を逸らしたままのアル兄様の横顔を、じっと見つめる。
「アル兄様のことは、家族としての好きとしか思えませんでした。ずっと大切にしてくださっていたのに、お気持ちに応えられず、申し訳ありません」
「・・・」
アル兄様は何も答えない。
私も別に答えが欲しくて言ったわけじゃないから、構わない。
学園を卒業する年齢まで、誰も好きにならなかったなら、婚約者になってもいい。
そう思ったのは、本心だ。
決してアル兄様を嫌いではないから、政略結婚と思えば、よく知っている相手の方がいいと思った。
でも今回、お父様はアル兄様に罰という形で婚約者を別に決めることを申し付けた。
その意図は、私にはわからない。
でも、自分を王太子としてふさわしくないと言って、後ろ向きなままのアル兄様を変える存在は、私ではなくシャンティーヌ様なのだろう。
アル兄様の目の前には、2つの道がある。
1つは、シャンティーヌ様と婚約し、王太子としてもう一度やり直すこと。
もう1つは、身分を剥奪され、イチ貴族としてやり直すこと。
どちらの道を選んでも、私と結ばれることはない。
お父様たちは、私がどんな身分の人間と結ばれてもいいと思ってくれているけど、アル兄様が王太子でなくなるなら、私は王女として、未来の国王となるに相応しい相手と結婚する必要がある。
前国王陛下の伯父様の子供はアル兄様だけだったし、親戚身内も、弟であるお父様だけだった。
つまりは、王家の血筋は、アル兄様か私だけなのだ。
私は王族という身分にはこだわりはないけど、私を大切に愛してくれる、お父様やお母様のことは大切にしたい。
「話は以上だ。アレクセイは、3日後までにどうするのか決めること。それから、マモンは今夜はブロワー伯爵家に泊まりなさい。辺境には知らせておく。明日、マモンとマズルは登城し、シエルと共に辺境へ行きなさい」
「陛下。ですが、俺はもうブロワー伯爵家には・・・」
「結婚することも、伯爵夫人にも話してあげるように。伯爵家に籍を戻すことはできないが、マモンもマズルも、伯爵の子供であることには変わりない。元気な姿を見せてあげなさい」
お父様の言葉に、ブロワー伯爵も、マモンもマズルも深く深く、頭を下げたのだった。
101
お気に入りに追加
3,199
あなたにおすすめの小説
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる