転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

10歳

63ページ：弟の心、兄知らず？

「ふざけるなっ！」

　怒号に振り返ると、拘束されたままのマズルがその拘束を解こうと暴れながら、コチラを睨みつけている。

　いや、まぁ、これも定番というか、マモンの時もそうだったわ。

　認めないのよね、自分の罪。
そして喚き散らす。

　マモンも身に覚えがあるからか、なんとも表現しがたい表情をしている。

　でもまぁ、あの時のマモンは13歳だったから、学園を卒業してるマズルと同じとは言えないけど。

「ふざけてなどいませんが？貴方は、自分の弟が望んでくれる生きて償うことを拒否すると？」

　自分が思ってた以上に、低い声が出た。
私の隣に移動して来たセイクレッドとノワールも、不機嫌オーラを隠そうとしない。

　美形が不機嫌だと、めっちゃ怖い。
というか、妙な圧？出てるから！空気がビリビリし始めてるから！

「ノワール、セイクレッド。抑えて」

『しかし、マスター。あの者の態度は許せません。アポステリオリを呼んで精神を刈ってしまいましょう』

「駄目」

　それでは、お父様にお任せしたことにならない。お父様は、マモンに希望を聞いた。
　そのマモンは、兄に生きて償って欲しいと言った。

　その邪魔はしたくない。
いや、したいからとそうしていたら、私は幼児のまま変わっていないことになる。

『マスター、どうかご命令を』

『やめろ、セイクレッド。マスターのお気持ちに従えないのなら、さがれ』

　ノワールの制止に、セイクレッドがその綺麗な顔を青ざめさせた。

『ま、マスター。申し訳ございません』

「怒ってはいないから。でも、私がノワールを頼るのは、ちゃんと私の気持ちを汲んでくれるからなの」

　ノワールは私が駄目だといえば、それ以上求めてくることはない。
　もちろん、納得していないこともあるだろうけど、自分が主人と決めた私が言ったことは絶対だという考えらしい。

　私はそういう考えのノワールが好きだし、頼りにしている。

　セイクレッドの言いたいことは、理解している。
　マズルはマモンのように、立ち直らないかもしれない。

　それに、マモンとは魔力の質が違う。
人を操る魔法の使い手を、そのまま要である辺境の魔物対策部隊へ送るわけにはいかない。

　少なくとも、人が操れないように制御アイテムはつけなければいけない。

「セイクレッド。アポステリオリを呼んで、アル兄様にかかった魔法を解除させて。そのあと、兄様を癒やして」

『かしこまりました』

「ノワール。マズルからあの人を操る魔法を取り除けると思う？それを取り除いた時、どの程度の魔力量になるかしら？」