悪役令嬢?寝言は寝て言え〜全員揃って一昨日来やがれ〜

みおな

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物語が始まる日

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「シア」

 優しい声に、私はその手に自分の手を重ねる。

 名前だけだけど、ラズウェル公爵令息となったイアン様。

 彼は前髪長めの、そのオタクっぽい姿のまま、学園に通っている。

 私の我儘で。

 普段はガロード子爵家で生活しているイアン様だけど、私との婚約のためとはいえ公爵令息となるわけで、ラズウェル公爵家でアランお兄様とジェラートと共に教育を受けていた。

 その時に、公爵から前髪を短く切ってはと言われたのだけど・・・

 私断固お断りした。

 だって!
イアン様は前髪長めだから、みんな知らないというか気付いてないけど、お顔の造形が優れてるのよ!

 アニメでは、素顔が出ることはなかったけど、で見た時にこれはダメなやつだと理解ったわ。

 あれ、アニメで素顔が出なかったのって、ジェラートの人気が落ちるのを防ぐためなんじゃないかな。

 それくらい・・・美形だった。

 好みのどストライクだった。

 だからお母様に、イアン様の前髪はそのままにしてってお願いしたの。

 他の子が、イアン様を好きになったら嫌だからって。

 姪の、微笑ましい願いを伯父様も伯母様も受けいれてくれた。

 やった!
余計なトラブルはあらかじめ予防しないとね。

 なにせ・・・
ラノベ『君に恋したあの場所で』の舞台、セブンスターク王国王立学園に入学するんだから。

 もちろん、王太子ジェラートも入学するし、ヒロインのシェリルであるみくりちゃんも入学する。

 みくりちゃんはあれから、ずっとフロライン公爵家で行儀見習いとして私の侍女をやってる。

 この世界って、これが当たり前なのよね。

 継ぐ家を持たない令嬢は、爵位が上の貴族家で行儀見習いをして、就職先や嫁ぎ先を見つける。

 子供なのに親と離れて、と思うけど、この世界の結婚適齢期が学園卒業時の十六歳だから、前世の感覚とは違うのよね。

 というわけで、今日はシェリルも入学式なので、一旦ビダン男爵家に戻りそちらから学園に登校して来ることになっている。

 やっぱりねぇ、娘の制服姿とか見たいでしょ。

 別に、入学式が出会いイベントとかでもない。

 ジェラートとの出会いイベントは、あの花屋だしね。

 花屋のアルバイトを辞めて、フロライン公爵の侍女になったヒロインが、ジェラートと出会うこともない。

 そうそう。
何故、男爵令嬢が花屋でアルバイトしていたかなんだけど、みくりちゃんは物語通りにしなきゃと思って、ご両親に無理を言ってバイトを始めたのだそう。

 別にビダン男爵家が、生活に困窮しているわけじゃない。

 まぁ、豊かってわけでもなかったらしいけど、常識ある男爵夫妻が幼い娘を働かせるってのも変な話よね。

 ラノベの作者、そのあたりどう考えてたのかしらね。
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