6 / 42
なんか気持ち悪い
しおりを挟む
結局、お茶会に参加することになった。
今回行かなくてまたの機会を設けられるくらいなら、今日行って他の令嬢を生贄に差し出す段取りをつける方が良い。
普通の令嬢は、王太子殿下との婚約を望むだろう。
あの王太子、ヒロインと出会うまではアレーシアとも仲良くやってたし、容姿だってザ・王子様だし。
親たちだって、王家との縁付きになる事を望むだろう。
うん。
お父様お母様お兄様が、アレーシアに激甘だということは理解したわ。
普通は、王太子殿下との婚約を拒否するなんて、叱られる案件だよね。
「大丈夫よ、アレーシア。わたくしがついているわ」
「・・・はい、お母様」
王宮が近付くにつれ、顔色の悪くなる私に、お母様が手を握ってくれた。
私は王太子に会ったこともないし、王宮に来たこともない。
なのに、王宮に行きたくない。
アレーシアが王太子に婚約破棄されて断罪されるのは、ラノベの中の話のはずなのに。
どうして行ったこともない王宮に、恐怖や嫌悪感を感じるんだろう。
馬車を降りて、案内された庭園に既視感がある。
ここを、見たことがある?
いや。アニメの中で見たからそう思うだけのはず。
集められたご令嬢十人のうち、七人がロイヤルブルー色のドレスを着ていた。
残り二人のうち、侯爵家のご令嬢がレモンイエローのドレスを。
もう一人は、深紅のドレスを着た伯爵令嬢だ。
青で染まった庭園の中で、その二人は目を引いた。
おかげで、私の紫色はブルーの中に溶け込んでいる。
「大丈夫?顔色が悪いわ。ご挨拶を終えたら帰りましょう?」
「大丈夫です。決まるまでは・・・」
この気持ち悪さの正体は分からないけど、我慢して仕方なくやって来たのだから、誰でもいいから王太子の婚約者に決めてしまいたい。
「・・・分かったわ。でも無理はしては駄目よ」
「はい」
「少し待っていて」
そう言うと、お母様はレモンイエローのドレスを着た令嬢の母親らしき人に話しかけた。
そしてその後、別の母親にも声をかけた後に私の元に戻って来た。
「先にご挨拶してくれるように頼んできたわ。うちは四人目よ。最初や最後は印象に残りやすいから、喜んで代わってくれたわ」
そうこうしているうちに、王妃様、そして王太子殿下が庭園に現れた。
筆頭公爵家の令嬢が四番目なことに、王妃様は苦虫を噛み潰したようなお顔をされていたけど、王太子殿下は全く私に興味を持たなかったみたいで、定型文の挨拶だけだった。
深紅のドレスを着た伯爵令嬢を気に入ったみたいで、彼女にばかり話しかけていた。
その様子を、王妃様はもどかしそうに見ていた。
いくら私推しだとはいえ、息子の気持ちを無視は出来ないのだろう。
今回行かなくてまたの機会を設けられるくらいなら、今日行って他の令嬢を生贄に差し出す段取りをつける方が良い。
普通の令嬢は、王太子殿下との婚約を望むだろう。
あの王太子、ヒロインと出会うまではアレーシアとも仲良くやってたし、容姿だってザ・王子様だし。
親たちだって、王家との縁付きになる事を望むだろう。
うん。
お父様お母様お兄様が、アレーシアに激甘だということは理解したわ。
普通は、王太子殿下との婚約を拒否するなんて、叱られる案件だよね。
「大丈夫よ、アレーシア。わたくしがついているわ」
「・・・はい、お母様」
王宮が近付くにつれ、顔色の悪くなる私に、お母様が手を握ってくれた。
私は王太子に会ったこともないし、王宮に来たこともない。
なのに、王宮に行きたくない。
アレーシアが王太子に婚約破棄されて断罪されるのは、ラノベの中の話のはずなのに。
どうして行ったこともない王宮に、恐怖や嫌悪感を感じるんだろう。
馬車を降りて、案内された庭園に既視感がある。
ここを、見たことがある?
いや。アニメの中で見たからそう思うだけのはず。
集められたご令嬢十人のうち、七人がロイヤルブルー色のドレスを着ていた。
残り二人のうち、侯爵家のご令嬢がレモンイエローのドレスを。
もう一人は、深紅のドレスを着た伯爵令嬢だ。
青で染まった庭園の中で、その二人は目を引いた。
おかげで、私の紫色はブルーの中に溶け込んでいる。
「大丈夫?顔色が悪いわ。ご挨拶を終えたら帰りましょう?」
「大丈夫です。決まるまでは・・・」
この気持ち悪さの正体は分からないけど、我慢して仕方なくやって来たのだから、誰でもいいから王太子の婚約者に決めてしまいたい。
「・・・分かったわ。でも無理はしては駄目よ」
「はい」
「少し待っていて」
そう言うと、お母様はレモンイエローのドレスを着た令嬢の母親らしき人に話しかけた。
そしてその後、別の母親にも声をかけた後に私の元に戻って来た。
「先にご挨拶してくれるように頼んできたわ。うちは四人目よ。最初や最後は印象に残りやすいから、喜んで代わってくれたわ」
そうこうしているうちに、王妃様、そして王太子殿下が庭園に現れた。
筆頭公爵家の令嬢が四番目なことに、王妃様は苦虫を噛み潰したようなお顔をされていたけど、王太子殿下は全く私に興味を持たなかったみたいで、定型文の挨拶だけだった。
深紅のドレスを着た伯爵令嬢を気に入ったみたいで、彼女にばかり話しかけていた。
その様子を、王妃様はもどかしそうに見ていた。
いくら私推しだとはいえ、息子の気持ちを無視は出来ないのだろう。
1,963
お気に入りに追加
3,021
あなたにおすすめの小説

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」
みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」
ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。
「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」
王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる