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番外編:暴君と呼ばれたい?〜ヒルト視点〜

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 ミリムに第一子が生まれた。

 濃紺の髪に銀色の瞳がぱっちりとした女の子だ。

 出産には、母上が辺境伯領まで手伝いに行った。
 ユリウスの両親は事故で亡くなっているから。

 僕と父上は、出向くことは出来なかった。

 父上は養子になった元デルモンド侯爵家の嫡男ダグラスに、アデライン子爵家後継としての教育をするために。

 僕は半年後に控えたラナリス様との婚姻準備と、王家の一員としての教育のために王都を離れることが出来なかった。

 まぁ行ったところで、男は何の役にも立たないのだけれど。

 だから、僕が可愛い姪を見たのは今日が初めてだ。

 父上は孫娘にメロメロで、早速あれやこれやを買い与えようとして、ミリムに叱られている。

 気持ちは分かる。
僕も買いたい気持ちになる。

 ミリムの幼い頃によく似た姪は、とてつもなく天使だったから。

 だけど、僕は半年後にはアデライン子爵家の人間でなくなるから、アデライン子爵家のお金を使うことを躊躇ってしまう。

 かといって王家のお金を使うわけにもいかないし。

 もっとも、国王陛下と王妃殿下、ラナリス様がこれでもかというくらい贈り物を辺境伯領まで送っていたから、便乗させて貰えば良かったかな。

「お兄様」

「ああ、どうした、ミリム?ユリシーナはどうした?」

「お父様とお母様が見てくださっていますわ。お昼寝をしていますの。起こさないで下さると良いのですけど」

 父上は、初孫ユリシーナを可愛がりたくて仕方ないのか、眠っていても触れようとするからな。

「もう半年もないのですね」

「ん?ああ。だが王家の一員になったからといって、ミリムの兄じゃなくなるわけじゃない。何かあればいつでも言ってこい」

「ふふっ。未来の国王陛下に頼りごとが出来るなんて、贅沢ですわ」

 僕は半年後には、アデライン子爵家から籍は抜かれてヴァルフリーデ王家の一員となる。

 王族の一員になれば、今までのように他領にフットワーク軽く行くわけにもいかなくなる。

 ミリムは遠く離れたグラナード辺境伯領で暮らしているから、今までのように何でも助けてやれる距離じゃない。

 まぁ、ミリムにベタ惚れのユリウスがいるから心配はしていないが、ミリムは自己評価が低いというか何というか迂闊なところがあるからな。

 僕がヴァルフリーデ王家の一員として王家やこの国、そしてラナリス様を守るのは当然のことだけど、大切な父上や母上、兄弟となったダグラス、そしてミリム一家を守りたい。

 やはり、王家の息のかかった護衛をグラナード辺境伯領にも置くように、議会に進言するか。

 別に暴君と呼ばれても構わない。
守りたいものが笑顔で過ごせるように、使えるものを使うのが僕の役目だ。

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