53 / 64
このくらいで良いですか?
しおりを挟む
「デルモンド様が婚約者と思っているのが誰か分かっていますの?」
私の問いに、ダリー伯爵子息はニヤリと笑いました。
笑った顔も品がないですわ。
「当たり前ですよ。自国の王女の顔を知らないなんて、アイツはあれでも侯爵令息なんですかね。ほとんど公の場には姿を現していませんでしたが、一度国王陛下の生誕パーティーで拝見したことがありましたのでね」
「そんな方に手を触れようなど、どうなるか分かっていて唆したのですが?」
「貴女の顔も分かってなかったやつのことを庇うのですか?」
確かにデルモンド様は、私の顔も分かっていませんでした。
それは婚約者として、ちゃんと責務を果たしていなかったという証拠ですが・・・
「だからといって、関係のない貴方が彼を唆していいという理由にはなりませんわ」
「賢く美しいだけだなく、聖女のように清廉な方だ。やはりデルモンドにはもったいない」
「お聞きしますけど、貴方こんなことをして、私が泣き寝入りをすると思っていらっしゃるの?」
「賢い貴女のことですから、分かっているのでしょう?こんなことが公になれば、王女殿下とお兄さんの婚約に影響が出ることくらい。それに、貴女は訴え出ることなど出来ませんよ。この場で抱いたあとは、ダリー伯爵家へ連れ帰り、孕むまで愛でてあげます。ご安心下さい。ご家族には、父から貴女と僕が駆け落ちしたと連絡してもらいますから」
聞いていて、ムカムカゾワゾワしますわ。
性犯罪の上に、拉致監禁宣言ですか。
「さあ、おしゃべりはここまでにしましょう。大丈夫ですよ、僕は上手ですから、貴女も十分楽しませてあげられます」
「ええ。もうおしゃべりは十分ですわ」
私の言葉の直後、天井から黒い影が落ちてきて、ダリー伯爵子息を一瞬で昏倒させました。
真っ黒なマスクをされていて、お顔がわからないようにされていますのね。
体格はユリウス様と同じくらいです。
この方は、王家の影と呼ばれる方です。
私はお兄様と違い王族になるわけではありませんから、お顔が分からないようにされているのでしょう。
そう。
最初から、嘘で呼ばれたことも、部屋に私だけ連れ込まれることも、予測済みです。
王家の影の方の前で、この方の罪を自白していただくのが目的だったのです。
そうでなければ、ユリウス様が大人しくお部屋の前で待っていてくださるわけがありませんもの。
影の方にダリー伯爵子息をお任せして、私は扉に向かいました。
鍵を開け、扉を開きます。
「ミリム!」
「ユリウス様、気持ち悪かったですわ。ぎゅっとしてくださいませ」
本当、ああいうのを下衆と言うのですわ。
私の問いに、ダリー伯爵子息はニヤリと笑いました。
笑った顔も品がないですわ。
「当たり前ですよ。自国の王女の顔を知らないなんて、アイツはあれでも侯爵令息なんですかね。ほとんど公の場には姿を現していませんでしたが、一度国王陛下の生誕パーティーで拝見したことがありましたのでね」
「そんな方に手を触れようなど、どうなるか分かっていて唆したのですが?」
「貴女の顔も分かってなかったやつのことを庇うのですか?」
確かにデルモンド様は、私の顔も分かっていませんでした。
それは婚約者として、ちゃんと責務を果たしていなかったという証拠ですが・・・
「だからといって、関係のない貴方が彼を唆していいという理由にはなりませんわ」
「賢く美しいだけだなく、聖女のように清廉な方だ。やはりデルモンドにはもったいない」
「お聞きしますけど、貴方こんなことをして、私が泣き寝入りをすると思っていらっしゃるの?」
「賢い貴女のことですから、分かっているのでしょう?こんなことが公になれば、王女殿下とお兄さんの婚約に影響が出ることくらい。それに、貴女は訴え出ることなど出来ませんよ。この場で抱いたあとは、ダリー伯爵家へ連れ帰り、孕むまで愛でてあげます。ご安心下さい。ご家族には、父から貴女と僕が駆け落ちしたと連絡してもらいますから」
聞いていて、ムカムカゾワゾワしますわ。
性犯罪の上に、拉致監禁宣言ですか。
「さあ、おしゃべりはここまでにしましょう。大丈夫ですよ、僕は上手ですから、貴女も十分楽しませてあげられます」
「ええ。もうおしゃべりは十分ですわ」
私の言葉の直後、天井から黒い影が落ちてきて、ダリー伯爵子息を一瞬で昏倒させました。
真っ黒なマスクをされていて、お顔がわからないようにされていますのね。
体格はユリウス様と同じくらいです。
この方は、王家の影と呼ばれる方です。
私はお兄様と違い王族になるわけではありませんから、お顔が分からないようにされているのでしょう。
そう。
最初から、嘘で呼ばれたことも、部屋に私だけ連れ込まれることも、予測済みです。
王家の影の方の前で、この方の罪を自白していただくのが目的だったのです。
そうでなければ、ユリウス様が大人しくお部屋の前で待っていてくださるわけがありませんもの。
影の方にダリー伯爵子息をお任せして、私は扉に向かいました。
鍵を開け、扉を開きます。
「ミリム!」
「ユリウス様、気持ち悪かったですわ。ぎゅっとしてくださいませ」
本当、ああいうのを下衆と言うのですわ。
104
お気に入りに追加
1,045
あなたにおすすめの小説
身分を捨てて楽になりたい!婚約者はお譲りしますわね。
さこの
恋愛
ライアン王子には婚約者がいる。
侯爵家の長女ヴィクトリアと言った。
しかしお忍びで街に出て平民の女性ベラと出あってしまった。
ベラと結婚すると国民から人気になるだろう。シンデレラストーリだ。
しかしライアンの婚約者は侯爵令嬢ヴィクトリア。この国で5本指に入るほどの名家だ。まずはヴィクトリアと結婚した後、ベラと籍を入れれば問題はない。
そして結婚式当日、侯爵家の令嬢ヴィクトリアが来るはずだった結婚式に現れたのは……
緩い設定です。
HOTランキング入り致しました.ᐟ.ᐟ
ありがとうございます( .ˬ.)"2021/12/01
あなたの事はもういりませんからどうぞお好きになさって?
高瀬船
恋愛
婚約を交わして5年。
伯爵令嬢のミリアベル・フィオネスタは優しい婚約者を好きになり、優しい婚約者である侯爵家の嫡男ベスタ・アランドワと良い関係を築いていた。
二人は貴族学院を卒業したら結婚が決まっていたが、貴族学院に通い始めて2年目。
学院に「奇跡の乙女」と呼ばれる女性が入学した。
とても希少な治癒魔法の力を持った子爵令嬢である奇跡の乙女、ティアラ・フローラモはとても可愛らしい顔立ちで学院の男子生徒の好意を一身に受けている。
奇跡の乙女が入学してから、婚約者であるベスタとのお茶の時間も、デートの約束も、学院での二人きりで過ごす時間も無くなって来たある日、自分の婚約者と奇跡の乙女が肩を寄せ合い、校舎裏へと姿を消したのを見てしまったミリアベルは行儀が悪い、と分かってはいても二人の姿を追ってしまったのだった。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!
風見ゆうみ
恋愛
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」彼は、辺境伯の長女である私、リアラにそうお願いしたあと、パーティー会場に戻るなり「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言する」と叫んだ。
婚約破棄した上に公爵令嬢と婚約?
憤慨した私が婚約破棄を受けて、新しい婚約者を探していると、婚約者を奪った公爵令嬢の元婚約者であるルーザー・クレミナルが私の元へ訪ねてくる。
アグリタ国の第5王子である彼は整った顔立ちだけれど、戦好きで女性嫌い、直属の傭兵部隊を持ち、冷酷な人間だと貴族の中では有名な人物。そんな彼が私との婚約を持ちかけてくる。話してみると、そう悪い人でもなさそうだし、白い結婚を前提に婚約する事にしたのだけど、違うところから待ったがかかり…。
※暴力表現が多いです。喧嘩が強い令嬢です。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。
格闘シーンがお好きでない方、浮気男に過剰に反応される方は読む事をお控え下さい。感想をいただけるのは大変嬉しいのですが、感想欄での感情的な批判、暴言などはご遠慮願います。
【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」
まほりろ
恋愛
【完結しました】
アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。
だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。
気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。
「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」
アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。
敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。
アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。
前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。
☆
※ざまぁ有り(死ネタ有り)
※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。
※ヒロインのパパは味方です。
※他サイトにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。
※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。
2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。
和泉鷹央
恋愛
アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。
自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。
だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。
しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。
結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。
炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥
2021年9月2日。
完結しました。
応援、ありがとうございます。
他の投稿サイトにも掲載しています。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる