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このくらいで良いですか?

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「デルモンド様が婚約者と思っているのが誰か分かっていますの?」

 私の問いに、ダリー伯爵子息はニヤリと笑いました。

 笑った顔も品がないですわ。

「当たり前ですよ。自国の王女の顔を知らないなんて、アイツはあれでも侯爵令息なんですかね。ほとんど公の場には姿を現していませんでしたが、一度国王陛下の生誕パーティーで拝見したことがありましたのでね」

「そんな方に手を触れようなど、どうなるか分かっていて唆したのですが?」

「貴女の顔も分かってなかったやつのことを庇うのですか?」

 確かにデルモンド様は、私の顔も分かっていませんでした。

 それは婚約者として、ちゃんと責務を果たしていなかったという証拠ですが・・・

「だからといって、貴方が彼を唆していいという理由にはなりませんわ」

「賢く美しいだけだなく、聖女のように清廉な方だ。やはりデルモンドにはもったいない」

「お聞きしますけど、貴方こんなことをして、私が泣き寝入りをすると思っていらっしゃるの?」

「賢い貴女のことですから、分かっているのでしょう?こんなことが公になれば、王女殿下とお兄さんの婚約に影響が出ることくらい。それに、貴女は訴え出ることなど出来ませんよ。この場で抱いたあとは、ダリー伯爵家へ連れ帰り、孕むまで愛でてあげます。ご安心下さい。ご家族には、父から貴女と僕がと連絡してもらいますから」

 聞いていて、ムカムカゾワゾワしますわ。

 性犯罪の上に、拉致監禁宣言ですか。

「さあ、おしゃべりはここまでにしましょう。大丈夫ですよ、僕は上手ですから、貴女も十分楽しませてあげられます」

「ええ。もうおしゃべりは十分ですわ」

 私の言葉の直後、天井から黒い影が落ちてきて、ダリー伯爵子息を一瞬で昏倒させました。

 真っ黒なマスクをされていて、お顔がわからないようにされていますのね。

 体格はユリウス様と同じくらいです。

 この方は、王家の影と呼ばれる方です。

 私はお兄様と違い王族になるわけではありませんから、お顔が分からないようにされているのでしょう。

 そう。
最初から、嘘で呼ばれたことも、部屋に私だけ連れ込まれることも、予測済みです。

 王家の影の方の前で、この方の罪を自白していただくのが目的だったのです。

 そうでなければ、ユリウス様が大人しくお部屋の前で待っていてくださるわけがありませんもの。

 影の方にダリー伯爵子息をお任せして、私は扉に向かいました。

 鍵を開け、扉を開きます。

「ミリム!」

「ユリウス様、気持ち悪かったですわ。ぎゅっとしてくださいませ」

 本当、ああいうのを下衆と言うのですわ。

 
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