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嬉しいんですもの

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 別れの時にバーバラ様は「結婚、おめでとうございます」とお祝いの言葉をくださいました。

 それがなんだか嬉しくて、ニコニコしていましたらユリウス様に笑われました。

「ミリムは不思議だな」

「あら、何がですの?」

「あんなに俺に執着していたご令嬢から、結婚の祝いの言葉が聞けるとは思わなかった」

 確かに、私もびっくりいたしました。

 バーバラ様は、確かにユリウス様をお慕いしていたのでしょう。
 彼女のお気持ちを疑うつもりはありません。

 ですが、その中には憧れもあったのだと思います。

 ユリウス様にお聞きしたのですが、バーバラ様との出会いは五年前。バーバラ様が九歳の時だったそうです。

 ご両親と逸れた上に、大きな犬と遭遇したバーバラ様は大泣きしていたそうです。
 それをお救いしたのが当時十五歳だったユリウス様だったのだとか。

 きっとバーバラ様の目には、ユリウス様は白馬の王子様のように見えたことでしょう。

「きっと・・・少し大人になられたんですわ」

 人を好きになっても、その人と絶対に結ばれるわけではありません。

 片想いで終わる恋も多くあります。

 私の場合は、家族が私を溺愛してくれていることから政略結婚することは避けられましたが、基本的に貴族の結婚は家と家の契約とされています。

 特に高位貴族や王族の場合は、それが如実に表れます。

 子爵令息であるお兄様が、王女殿下であるラナリス様と婚約できたのは、お兄様が特別優秀なこともありますが、子爵家であるのはお父様が陞爵をお断りしているだけで、少なくとも伯爵ほどの地位は得られる可能性があるからでしょう。

 それにアデライン子爵家は、それなりの財力もありますし、家族それぞれがそれなりの地位の方との交流もありますしね。

「こんな素晴らしい女性を手放してくれたデルモンド子息には感謝だな」

「でも、デルモンド侯爵ご夫妻はお辛かったと思いますわ。ご嫡男は優秀な方でしたので、アデライン子爵家との事業は継続することになりましたけど」

「街道の工事だったか」

「ええ。あとは上下水道の整備ですわ。あの事業の提携がなくなれば、デルモンド侯爵領の領民の皆様の暮らしは困窮することになりましたから、お父様はご子息のことと事業は別と判断されて。私としても、デルモンド様には好意を持っていませんでしたから、婚約を解消できただけで十分でしたわ」

 婚約を継続していたなら、ユリウス様と出会うことも出来ませんでしたものね。

 

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