拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな

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甘い時間

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 ユリウス様が私のガウンの紐を解き・・・

 そのまま硬直されてしまいました。

「ユリウス様?」

「これは?」

「あ、ラナリス様からのお祝いの品で・・・変でしょうか?メリアは似合っていると言ってくれたのですけど」

 ユリウス様のお好みではなかったのかもしれません。

 しゅんとして俯くと、ユリウス様の手が頬に触れて、顎を持ち上げられます。

 こ、これは・・・
セシリア様がおっしゃっていた『顎クイ』というやつでは?

 以前、セシリア様が恋愛小説で読んだらしく、熱く語って下さったのです。

 もちろん、その恋愛小説を勧めたご友人にはジャグリング公爵家から注意をしていただきました。

 十歳のセシリア様に、そういう刺激の強いお話はまだ早いですわ。

 いずれは閨教育も必要になりますけど、セシリア様は公爵家のご令嬢。

 政略結婚をしなくてはならないかもしれません。
 あまり恋愛に夢を抱かせて、傷つける結末になってはいけませんし。

「破壊力が・・・」

「破壊力?」

 ユリウス様の呟きに、首を傾げます。
何か壊れたのかしら?

「きゃっ」

 そのままユリウス様に抱き上げられ、ベッドへと連れて行かれました。

 広いベッドに下ろされて、ユリウス様もベッドに上がって来られます。

 私とユリウス様が並んでも、まだ二人くらい寝れそうな大きなベッドです。

 辺境伯夫妻の主寝室は、私の部屋とユリウス様のお部屋の真ん中にあります。

 全てが扉で繋がっているのですが、昨日まであの扉は鍵がかかっていたのです。

 ですから、私がこの寝室に入るのは初めてで・・・

「ユリウス様」

「優しくする。辛かったら言ってくれ」

「はい」

 閨教育で、初めては痛いものだと聞いております。

 ユリウス様はゆっくりと私に覆い被さると、瞼に優しくキスをされました。

 私が目を閉じると、キスはおでこに、眦に、頬に、と繰り返され、そして私の唇にユリウス様の唇がそっと重なります。

「ふふっ」

「どうした?」

「ユリウス様と出会ったから、婚姻まで駆け足でしたので、そういえば口付けをするのも初めてだったと思いましたの」

 そうなのです。
そもそもご一緒にお出かけしたのも、あの花飾りの布を買いに行っただけです。

 随分と慌てて結婚したものだと、今思いましたのよ。

 貴族令嬢なら何年も婚約期間を持ち、婚姻までに半年から一年の期間を持ちます。

 その間に婚約者と交流し想いを深めあうのですが、私ユリウス様と手を繋いだのもあの日が初めてでした。

「ああ。触れてしまったら我慢できないからな、自制していた。これから時間はたくさんある。ゆっくりと仲を深めていこう」

「はい。ユリウス様」

 ユリウス様が再び唇を重ね合わせます。

 私はその甘い夜に、身も心もユリウス様の妻になりました。




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