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その歳の差は

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「お兄様!セシリア様がセルフィー殿下と婚約って・・・本当ですの?」

 私がお断りしたせい・・・では?

「ミリムがあの阿呆と婚約解消したから、セルフィーは我が国にやって来た。元々、打診はあったんだ。我が国の令嬢を妃として迎えたいと」

「自国のご令嬢ではなく?」

「ルードリアン帝国は、王族に嫁ぐのは必ず他国の姫君か令嬢と決まっている。自国内の力バランスを崩さない為だそうだ。だから、王太子であるセルフィーも他国のご令嬢を婚約者にするべく探していた。もちろん、誰でもいいわけではない。王妃になる資質がなければ駄目だがな」

 知り合いのいない場所に、しかも王族となるために嫁ぎたいと願うご令嬢は、あまり多くはいらっしゃいません。

 王族にはそれ相応の責務があり、見た目ほど気楽なものではないと、ほとんどのご令嬢は知っているからです。

 多分、セルフィー殿下と近しい年齢のご令嬢は、打診されてもお断りされたのではないでしょうか。

 しかし、だからといってセシリア様は十歳ですよ?

「ミリムに断られてから、王宮に挨拶に向かったらしい。そこで、たまたまラナリス殿下とお茶をしていたセシリア嬢と会った。セシリア嬢の一目惚れらしいぞ」

「は?え?」

「セシリア嬢に強請られて、ジャグリング公爵も婚約を認めたらしい。セルフィーの方も、歳こそは若いが優秀で公爵令嬢然としているセシリア嬢を好ましく思ったそうだ」

 確かにセシリア様は、齢十歳ながらしっかりされています。

 で、ですがセシリア様が婚姻できる成人になるのは、まだ五年先。
 その時にはセルフィー殿下は、二十五歳になってしまうではないですか。

 いえ男性の方ですから女性と違って、二十五歳だからといって嫁き遅れと言われることはありませんが。

 二十五歳と十五歳。
駄目ですわ。今ほど犯罪臭はしませんけど、怪しい性癖の方だと思ってしまいそうですわ。

「十年も経てば、歳の差なんて目立たなくなるさ。それに貴族なら歳の離れた夫婦など多くいる。セルフィーは、僕がお前に紹介しようと思えた男だ」

「え、ええ。良い方だとは私も思います、けど・・・」

 お兄様にあっさりと失格の印を押され、なのになんの文句も言わずに引き下がられた方です。

 それに、セシリア様が望まれたのですから、私がどうこういうことではありません。

 分かってはいるんですけど。

「王都でのパーティーの際に、実際にセシリア嬢から話を聞けばいいだろう?その時にセルフィーも来る。実際に並んだ二人を見れば、納得するさ」
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