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街を案内してくれるそうです

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「へん・・・ユリウス様。午後にメリアと街に出かけたいのですが、よろしいでしょうか?」

 いけません。もう少しで辺境伯様とお呼びするところでした。

 婚約者なのだから、お名前で呼ぶようにとメリアにも言われていましたのに。

「かまわないが、何か足りないものでもあったか?」

「いいえ、何も問題はございません。ですが、こちらでは婚姻の際に花飾りを付けるのが一般的なのでしょう?母がお飾りは持ってきてくれると思いますが、花飾りまでは気付かないでしょうし、今のうちに少しずつ作ろうかと思いまして」

 こちらの地方では、布や糸で作った花飾りを花嫁の左手に付けるのが一般的なのだそうです。

 そして、同じ花飾りを旦那様の胸元にも飾るのだとか。

 馬車の中でメリアに聞きましたのよ。

 知っていれば王都で材料を買ってきたのですが、一般的と言っても平民の方々がなさる風習のようですから、お兄様やお母様がご存知なくても仕方ありませんね。

 ですがその平民の方々は、グラナード辺境伯領の大切な領民の方々。

 辺境伯様の結婚を祝ってくださるであろう領民の方々と同じように、お飾りを付けるのは良い案だと思うのです。

 幸いにも、領地での結婚式は身内のみの参加ですし。

「花飾り・・・だがアレはあまり貴族の結婚式では見ない。嫌じゃないのか?」

「別に、気になりません。何より可愛らしいじゃないですか」

 とても素敵な催しだと思います。

「・・・そうか。領民もきっと喜ぶ。しかし、ミリム嬢が自分で作るのか?」

「どうかミリムと呼び捨ててお呼び下さい。すぐに婚姻するのですし。それから、下手の横好きですが、刺繍や裁縫は好きなのです」

 今度、ユリウス様のハンカチに刺繍しましょう。

 婚約者や家族に、刺繍したハンカチを渡すのが貴族令嬢の嗜みになったのは、ラナリス様がお兄様にお渡ししたのが始まりですわ。

 私がお兄様にお渡ししたのを見て、自分も贈りたいとおっしゃって。

 あの後、お兄様はラナリス様のハンカチを額に入れて飾ろうとなさってましたわ。

 お止めしましたけど。
ハンカチは飾るものではなく、使うものですわ。

 それに使って差し上げなくては、ラナリス様が悲しまれるじゃないですか。

 ですから、もしラナリス様が花飾りを付けられたらきっと貴族の間でも流行ると思うのです。

「買い物、か。俺も一緒に行ってもいいだろうか?」

「お忙しくないのですか?ご一緒できるのは嬉しいですけど」

「大丈夫だ。せっかくだから案内しよう」

 私がここに来てから、ユリウス様はずっとお忙しそうだったのですが・・・

 初めての婚約者としての交流ですわね。
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