19 / 64
結婚式を早めるそうです
しおりを挟む
「え?あの、今、何て?」
いえ。聞こえていないわけではないのです。
ですが、思わず聞き返してしまいました。
辺境伯様は、怒りもせずに穏やかに繰り返して下さいました。
「申し訳ないが、結婚式の日取りを早めたい。ドレスをオーダーメイドにしたかったのだが、そうなると半年以上はかかる。ドレスは別に作るので、式の際のドレスは既製品で許してもらえないだろうか」
「あ、あの、どうしてそんなに結婚式を早めたいのですが?」
「・・・先ほど客が来ていたのだが、その客というのが、伯爵家のご令嬢で・・・」
あら?伯爵家の?
でも家令のデビットは「招かれざるお客様」と言ってなかったかしら。
「彼女だけではないのだが・・・自分こそが辺境伯夫人に相応しいと言って、何を言っても聞かないご令嬢がいるのだ。とにかく、どうお断りしても屋敷に突撃してくる。家の方に抗議しても、娘の恋心を受け入れてやって欲しいと言い出す始末だ。屋敷に訪れるだけで処罰をするわけにはいかない。それで王家に相談して、彼女たちに内密に婚約者をすぐに決めることにしたのだ。ところが、婚約者候補のご令嬢がうちに来ているという噂が広がっているらしくて」
辺境伯様は、とても素敵な殿方ですもの。おモテになるのは当然ですわね。
でも伯爵家なら、我が家より爵位も高いですし、私より釣り合いが取れるのではないでしょうか。
王家に相談したということは、もしかしてお兄様が私を無理矢理に推薦したとか?
お兄様に言われて、辺境伯様はお断りになれなかったのでは?
「それで、もし君に危害を加えられでもしたら困るから、すぐにでも結婚した方が安全だと判断した」
確かに我が国では、婚姻すると正当な理由なく離縁は認めてもらえません。
ですから婚姻さえしてしまえば、彼女たちも諦めるしかないと思いますが。
辺境伯様はそれでいいのでしょうか?
「必ず君を守るつもりだが、もし仕事で家を離れている時にやって来られたらと思うと。婚約者の時点では、君は子爵令嬢でしかない。伯爵家のご令嬢に強くは言えないだろう。だが、婚姻さえ済ませれば辺境伯夫人となるから、身分も上になる」
「それで、婚姻を早めるのですね」
「ああ。大切な日のドレスがオーダーメイドでないのは申し訳ないが」
オーダーメイドとなると、どれだけ急いでも半年はかかります。
一生に一度のことなので、オーダーメイドにこだわる方も多いのですが。
「私は別に気にしません。お母様に相談してみますわ」
既製品だと、おざなりに扱われていると馬鹿にする方もいそうですもの。
いえ。聞こえていないわけではないのです。
ですが、思わず聞き返してしまいました。
辺境伯様は、怒りもせずに穏やかに繰り返して下さいました。
「申し訳ないが、結婚式の日取りを早めたい。ドレスをオーダーメイドにしたかったのだが、そうなると半年以上はかかる。ドレスは別に作るので、式の際のドレスは既製品で許してもらえないだろうか」
「あ、あの、どうしてそんなに結婚式を早めたいのですが?」
「・・・先ほど客が来ていたのだが、その客というのが、伯爵家のご令嬢で・・・」
あら?伯爵家の?
でも家令のデビットは「招かれざるお客様」と言ってなかったかしら。
「彼女だけではないのだが・・・自分こそが辺境伯夫人に相応しいと言って、何を言っても聞かないご令嬢がいるのだ。とにかく、どうお断りしても屋敷に突撃してくる。家の方に抗議しても、娘の恋心を受け入れてやって欲しいと言い出す始末だ。屋敷に訪れるだけで処罰をするわけにはいかない。それで王家に相談して、彼女たちに内密に婚約者をすぐに決めることにしたのだ。ところが、婚約者候補のご令嬢がうちに来ているという噂が広がっているらしくて」
辺境伯様は、とても素敵な殿方ですもの。おモテになるのは当然ですわね。
でも伯爵家なら、我が家より爵位も高いですし、私より釣り合いが取れるのではないでしょうか。
王家に相談したということは、もしかしてお兄様が私を無理矢理に推薦したとか?
お兄様に言われて、辺境伯様はお断りになれなかったのでは?
「それで、もし君に危害を加えられでもしたら困るから、すぐにでも結婚した方が安全だと判断した」
確かに我が国では、婚姻すると正当な理由なく離縁は認めてもらえません。
ですから婚姻さえしてしまえば、彼女たちも諦めるしかないと思いますが。
辺境伯様はそれでいいのでしょうか?
「必ず君を守るつもりだが、もし仕事で家を離れている時にやって来られたらと思うと。婚約者の時点では、君は子爵令嬢でしかない。伯爵家のご令嬢に強くは言えないだろう。だが、婚姻さえ済ませれば辺境伯夫人となるから、身分も上になる」
「それで、婚姻を早めるのですね」
「ああ。大切な日のドレスがオーダーメイドでないのは申し訳ないが」
オーダーメイドとなると、どれだけ急いでも半年はかかります。
一生に一度のことなので、オーダーメイドにこだわる方も多いのですが。
「私は別に気にしません。お母様に相談してみますわ」
既製品だと、おざなりに扱われていると馬鹿にする方もいそうですもの。
116
お気に入りに追加
1,106
あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

あんな妹とそんなに結婚したいなら、どうぞご自由に。
法華
恋愛
貴族クインシーは、政略結婚で婚約させられた婚約者サラ・エースワットを冤罪まで被せて婚約破棄し、サラの妹ミシェルと婚約した。
だが、そこまでして手に入れたミシェルはどうしようもなく問題のある女だった。
クインシーはサラを取り戻そうとするが、サラは既に他の貴族と結婚してしまっていた。
※三話完結

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。
水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。
その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。
そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる