拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな

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辺境伯領に向かいます

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 グラナード辺境伯領は、王都から北に馬で五日かかります。

 途中で宿屋で泊まりながらなので、私は馬車で倍の十日かかりました。

 今の季節はいいのですが、北に位置するグラナード領は一面が雪景色になるのだそうです。

 そうなると、馬車では移動できないのだとか。

「アデライン様。お疲れではありませんか?」

 宿屋を出て三時間。

 グラナード領に入って少ししたところで、休憩を取ることになり、王都のアデライン子爵家までお迎えに来てくださったグラナード辺境伯家の方が気遣ってくださいます。

 本当はアデライン子爵家の馬車で来る予定だったのですが、また馬車を戻さなければならない手間を気遣って下さったのです。

 宿屋に泊まりますから、私のお世話係として侍女の方も来て下さいました。

 往復で二十日です。
申し訳なく思ったのですが、侍女のメリアは気にすることはないと笑います。

「馬車に乗れたので、むしろ楽をできました」

「メリアは馬に乗れるの?」

「はい。うちの領は雪が積もりますから、馬車では移動出来ないのです」

「私にも乗れるかしら・・・」

 私、自慢ではないですけど運動神経は良くありません。

 お兄様には、運動神経をどこかに落として来たのか?とまで言われましたわ。

「ふふっ。辺境伯夫人に一人で騎馬していただくことなどありませんから、大丈夫ですよ。それでも心配なようでしたら、冬までにゆっくりと練習いたしましょう」

「そうね。皆様の邪魔にならないように、練習するわ」

 私が覚悟を決めていると、そろそろ出発だと声がかかりました。

 再びメリアと馬車に乗って、辺境伯様のお屋敷に向かいます。

「旦那様も今か今かとお待ちになっていますわ」

「辺境伯様は今日はお屋敷にいらっしゃるの?」

「今日は、ミリム様がご到着されるので、お屋敷でいらっしゃるはずですよ。それからミリム様。旦那様のことはユリウス様とお呼びになって下さい。ミリム様は婚約者様なのですから」

「そ、そうね。分かったわ」

 メリアは私と同い年だそうですが、言うべきことをはっきりと口にするタイプで、とても好感が持てます。

 最初にメリアに敬語を使いましたら、私は辺境伯様の婚約者で、すぐに辺境伯夫人になるのだから、使用人に敬語を使うものではないと注意されました。

 不敬だなんて思いませんわ。

 子爵令嬢である私の周囲には、何故か王女殿下や公爵令嬢という、身分のある上にはっきりと発言される方ばかりだったので・・・そういう方のほうが安心できるのです。




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