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お兄様の思惑

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「ミリム。時間を取らせて悪かった。部屋に戻って良い」

 お兄様にそう言われましたが、一瞬躊躇います。

 隣国の皇太子殿下とお話している最中なのに、退出しても良いのでしょうか?

 ですが、お兄様がお招きになったお客様です。
 お兄様の指示に従うべきでしょう。

「はい。それでは、皇太子殿下、失礼いたします」

「え、あ・・・」

 戸惑った様子を皇太子殿下に感じましたけど、婚約をお受けしないのですから、これ以上はお話を伺うべきではありません。

 失礼だとは思いますが、部屋から退出しました。

 自室に戻りしばらくすると、部屋の扉がノックされました。

「ミリム、僕だ」

「お兄様、どうぞ」

 お兄様のことですから、お話に来られると思っていました。

 皇太子殿下は帰られたのでしょうか?

「お兄様、ご説明下さいますね?」

「ああ。今回のことは、王家との話で出たことだ。あの馬鹿との婚約が撤回されたことは幸いだったが、アレは馬鹿だからミリムとの婚約をまた結ぼうとする可能性がある。あんなのでも侯爵家の次男だ。侯爵家より下の身分の令息では、太刀打ちできないかもしれない。だから、あの馬鹿が暴走しても問題ない地位の婚約者をいう話になった。王家の方から公爵家や侯爵家に話が行き、僕の知り合いの中で、地位や容姿など優れているのを紹介することにしたんだ」

 色々言いたいことはありますけど、とりあえず隣国の皇太子殿下を、そんん理由で紹介しないでください。

 そして紹介しておきながら、私の反応が悪いと思ったら、お兄様さっさと失格の烙印を押されましたわね?

 いえ。お応えはできませんから仕方ないのですが、お兄様もう少し人選を考えてくださいませんか?

「お兄様、どうして皇太子殿下だったのですか?」

「僕の知り合いの中で、婚約者がいなくて、身分があって、容姿が優れていて、性格もまぁ悪くないのがセルフィーだった」

「皇太子殿下ですよ?しかも隣国の。私は子爵家に婿入りしてくれる相手を・・・」

 身分不相応過ぎます。

 それにお兄様。お兄様は確かにいずれは国王になられるのかもしれませんが、現在は子爵令息ですのよ?

 お兄様が篩にかけるのは、おかしなことですわ。

「ミリム。父上もおっしゃっていた。後継のことを考える必要はない。お前が望んだ相手と婚約すれば良いんだ。もし相手が継ぐ家がないのならうちを継げば良いが、それを条件にする必要はない」

 そんなことをおっしゃられましても。
 我が家の後継のために、デルモンド侯爵子息様を婚約者にしたのではないのですか?


 
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