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釣れる魚が大きすぎるの

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「正式な申し出は後日改めてするけど・・・」

 そう言うと、セルフィー・ルードリアン皇太子殿下は、私の前に跪かれました。

「お、おやめください」

「どうして?これからご令嬢に婚約を申し出るんだ。跪いて願うのは当然だろう?」

 当然かどうかは知りませんが、身分というものを考えて下さい。

 そもそもお兄様。
どうして皇太子殿下と私を会わせようとなさったの?

 私は子爵令嬢なんですよ?

「こ、困ります!お兄様っ、お止め下さい!」

「セルフィー、止めろ。ミリムが嫌がった場合は止める約束だ」

「そんなに嫌?僕、これでも優良物件のつもりなんだけどな」

 優良物件過ぎるんです!
私は、もっと身の丈に合った相手と婚約したいんです!

 確かにお兄様は、子爵令息でありながら、我が国の唯一の王女殿下と婚約されました。

 国王陛下からの信頼も厚く、王配ではなく王として迎えられることになっています。

 ラナリス様の愛情が、お兄様にしか向いていないこともありますが、それが認められているのは、お兄様の優秀さとによるものです。

 当然のことですが、お兄様が婚約者に選ばれた時には、多くの反発がありました。

 お兄様に直接向かって行った相手は、ことごとく返り討ちにされ、子爵家自体を孤立させようとした高位貴族の方々も、王家からお叱りを受けたり。

 私やお母様が狙われたこともありました。

 もちろんお兄様に抜かりはなく、ちゃんと守って下さいましたけど。

 それもこれも、お兄様が優秀でお心が強いからです。

 きっと、心無い言葉で傷つけられたこともあるでしょう。

 直接的な攻撃は、騎士になれるほどお強いお兄様ですから返り討ちにされたようですが、言葉の刃は容易く心を痛めつけます。

 それでも、お兄様が今婚約者としてラナリス様の隣に立たれているのは、お兄様の心がお強かったから。

 確かに、皇太子殿下は素敵な方だと思います。

 ですが、公爵家や侯爵家の嫡男の方からの釣書の時にも思いましたが、私にはそんなやっかみを向けてくる相手に立ち向かう強さはありません。

 心惹かれた相手ならともかく、私にはお兄様のように周りを納得させることはできないのです。

「皇太子殿下は素敵な方だと思います。きっと多くのご令嬢が婚約者になりたいと望まれるでしょう。ですが、私は極々平凡な、しかも子爵令嬢です。私は自分の身の丈に合った相手と婚約したいのです」

「平凡って・・・ヒルト、妹さんは本気で言ってるの?」

「ああ。どうもミリムは自己評価が低い。しかも頑固で人が何を言っても聞きはしない。セルフィーなら、見た目で惹かれるかもと思ったが、無理だったようだな」

 何かお兄様がブツブツと話されていますけど、納得していただけたのかしら?
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