6 / 64
侯爵家と子爵家の関係
しおりを挟む
我がアデライン子爵家と、デルモンド侯爵家はある事業を共同で行っています。
それは、お互いの領地と王都を結ぶ街道の改善工事と、領地の上下水道の工事です。
発案は我が家で、我が領地から王都に向かうにはデルモンド侯爵領を通るのです。
子爵領の領民たちは仕事を持っている人間が多く、逆に侯爵領の中には無職だったり、金銭的に厳しい領民が多くいました。
それで、デルモンド侯爵家にこの事業を提案したのですわ。
金銭的に余裕のあるアデライン子爵家が主導となり、デルモンド侯爵領の領民たちを労働力として雇う。
子爵家が雇うとなると、反発が起きる場合が多いので、デルモンド侯爵家に出資し、デルモンド侯爵家が雇ったという形をとったのです。
ご両親である侯爵夫妻や、後継の嫡男の方はちゃんとご存知だったのですが・・・
どうやら、私の元婚約者の次男の方はご存知なかったみたいですね。
うちのお父様は善良な人間ですが、損しか出さない相手を甘やかすほど、お人好しではありません。
そのお父様が事業は継続というのなら、デルモンド侯爵家との縁に何らかの価値があるのでしょう。
「ただし、条件を呑んでもらう。王家の意向にもよるから、一緒に王宮へと向かおう」
「わ、わかりました」
「奥様はこちらでお預かりしておきますわ。旦那様、よろしいでしょう?」
「ああ。顔色が悪いから、うちで休まれて待たれると良い」
デルモンド侯爵夫人は、真っ青な顔のまま立ちあがろうとされています。
「そんな、ご迷惑は・・・」
「そんな様子で王宮へ行かれても、歩くのもままならないでしょう。お仕事のお話は殿方にお任せしましょう?」
お母様が、夫人を再びソファーへと座らせます。
侯爵は心配そうにしながらも、お父様と一緒に王宮へと出かけて行かれました。
お母様はお茶を準備させ、夫人の隣に座り泣き崩れる夫人を宥めています。
「申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません・・・」
繰り返し謝罪の言葉を呟く侯爵夫人に、あの元婚約者に殺意がわきましたわ。
ご本人が阿呆なのは勝手ですけど、お母様にこんな思いをさせるなんて。
「おば様。おば様が謝ることなど何もありませんわ。ラナリス様があまりに楽しそうに対応されていたので、そのままにした私もいけなかったのです」
「・・・自国の王女殿下のお顔を知らないばかりか、自分の婚約者の顔もわからないなんて」
「私も言えば良かったのです。ごめんなさい」
「いいえ、いいえ!ミリムさんに悪いところなど!あんな子と婚約なんて本当に申し訳がなかったわ」
どうしましょう。
慰めようがありませんわ。
それは、お互いの領地と王都を結ぶ街道の改善工事と、領地の上下水道の工事です。
発案は我が家で、我が領地から王都に向かうにはデルモンド侯爵領を通るのです。
子爵領の領民たちは仕事を持っている人間が多く、逆に侯爵領の中には無職だったり、金銭的に厳しい領民が多くいました。
それで、デルモンド侯爵家にこの事業を提案したのですわ。
金銭的に余裕のあるアデライン子爵家が主導となり、デルモンド侯爵領の領民たちを労働力として雇う。
子爵家が雇うとなると、反発が起きる場合が多いので、デルモンド侯爵家に出資し、デルモンド侯爵家が雇ったという形をとったのです。
ご両親である侯爵夫妻や、後継の嫡男の方はちゃんとご存知だったのですが・・・
どうやら、私の元婚約者の次男の方はご存知なかったみたいですね。
うちのお父様は善良な人間ですが、損しか出さない相手を甘やかすほど、お人好しではありません。
そのお父様が事業は継続というのなら、デルモンド侯爵家との縁に何らかの価値があるのでしょう。
「ただし、条件を呑んでもらう。王家の意向にもよるから、一緒に王宮へと向かおう」
「わ、わかりました」
「奥様はこちらでお預かりしておきますわ。旦那様、よろしいでしょう?」
「ああ。顔色が悪いから、うちで休まれて待たれると良い」
デルモンド侯爵夫人は、真っ青な顔のまま立ちあがろうとされています。
「そんな、ご迷惑は・・・」
「そんな様子で王宮へ行かれても、歩くのもままならないでしょう。お仕事のお話は殿方にお任せしましょう?」
お母様が、夫人を再びソファーへと座らせます。
侯爵は心配そうにしながらも、お父様と一緒に王宮へと出かけて行かれました。
お母様はお茶を準備させ、夫人の隣に座り泣き崩れる夫人を宥めています。
「申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません・・・」
繰り返し謝罪の言葉を呟く侯爵夫人に、あの元婚約者に殺意がわきましたわ。
ご本人が阿呆なのは勝手ですけど、お母様にこんな思いをさせるなんて。
「おば様。おば様が謝ることなど何もありませんわ。ラナリス様があまりに楽しそうに対応されていたので、そのままにした私もいけなかったのです」
「・・・自国の王女殿下のお顔を知らないばかりか、自分の婚約者の顔もわからないなんて」
「私も言えば良かったのです。ごめんなさい」
「いいえ、いいえ!ミリムさんに悪いところなど!あんな子と婚約なんて本当に申し訳がなかったわ」
どうしましょう。
慰めようがありませんわ。
152
お気に入りに追加
1,104
あなたにおすすめの小説
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します

【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?
水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。
正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。
その1ヶ月後。
ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。
ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。
※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います
*HOTランキング10位(2021.5.29)
読んで下さった読者の皆様に感謝*.*
HOTランキング1位(2021.5.31)

【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・


婚約破棄?ありがとうございます!では、お会計金貨五千万枚になります!
ばぅ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ!」
「毎度あり! お会計六千万金貨になります!」
王太子エドワードは、侯爵令嬢クラリスに堂々と婚約破棄を宣言する。
しかし、それは「契約終了」の合図だった。
実は、クラリスは王太子の婚約者を“演じる”契約を結んでいただけ。
彼がサボった公務、放棄した社交、すべてを一人でこなしてきた彼女は、
「では、報酬六千万金貨をお支払いください」と請求書を差し出す。
王太子は蒼白になり、貴族たちは騒然。
さらに、「クラリスにいじめられた」と泣く男爵令嬢に対し、
「当て馬役として追加千金貨ですね?」と冷静に追い打ちをかける。
「婚約破棄? かしこまりました! では、契約終了ですね?」
痛快すぎる契約婚約劇、開幕!
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる