拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな

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報告直後にやって来ました

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「・・・というわけなのです」

 誕生日パーティーから戻ると、すぐにお父様の執務室へと向かいました。

 婚約破棄についてご報告するためです。

 貴族の婚約結婚は、家と家の契約みたいなものです。
 それは、子爵家である我が家も同じ。
契約を反故できるのは当主だけなのですが、今回の場合は特別に破棄は認められるでしょう。

 あの場には、王族であるラナリス様がいらっしゃったのですから。

「何をどうすれば、そんなことになるんだ?」

 お父様は、ため息を吐きながら私に問われますけど、知りませんわ、そんなこと。

 元婚約者様にお聞きになって下さいな。

「ラナリス様がノリノリでしたので、もう良いかなと思いまして」

 途中で口を挟むのも面倒で。

 婚約の顔合わせ以来、会いにこようともしない婚約者です。
 ああ。元婚約者ですわね。
婚約がなくなっても何の問題もありません。

 私も貴族令嬢ですから、これも務めだと思って婚約を受け入れたのですが、まさか一年間も放置されるとは思いませんでしたわ。

 一応、私はお誕生日にはお祝いのプレゼントをお送りしましたし、月に一回はお手紙も出していましたけど、一度もお返事をいただいたことはありません。

 お茶にお誘いしても、返事すら来ない。

 エスコートをお願いしても、ドレスを送ってくることはもちろん、迎えにも来ない。

 ね?どうでもいいと思っても無理ないでしょう?

 それでも婚約を継続していたのは、相手が侯爵家だというのと、ご本人はともかく侯爵様や嫡男のお兄様が良い方々だったから。

 ですが、相手から婚約破棄をされたのです。
 ようやく解放されるということですわ。

「旦那様。お嬢様。デルモンド侯爵ご夫妻が」

 家令が、デルモンド侯爵ご夫妻の来訪を知らせに来ました。

 随分と早いですわ。
これは、あの後帰宅したご子息から報告を受け、速攻で来られたということですわね。

「本当に申し訳なかった!」

「ごめんなさい。許してとは言えないけれど、謝罪させてちょうだい」

 お父様が入室を許可しますと、デルモンド侯爵ご夫妻は、そのまま土下座されました。

 ご両親はこんなに常識人ですのに、あの方はどこに常識を落として来られたのかしら?

「とりあえず、お座り下さい、デルモンド侯爵様」

 ソファーにお座りいただくようにお願いします。

 お二人は渋々ですが立ち上がり、ソファーに座ってくださいました。

 ですが、テーブルにつくほど再び頭を下げられました。

「本当に愚息が申し訳なかった。謝って許されることではないが」

 親にこんな思いをさせるなんて。
あの方、一度更生施設にでも入られたらよろしいんじゃないかしら。
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