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それってヒロインじゃないの?

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「お姉様!」

 声をかけられて振り返る。

 私をお姉様と呼ぶのは当然イザベリーナしかいないから、声をかけて来たのが彼女だとは分かっていたけど、首を傾げた。

 イザベリーナが一人だったから。

「どうしたの?イザベリーナ。殿下は?」

「入学式に遅れた生徒がいて、その子を教師のところまで連れて行くからって」

 どこかで聞いたような話だわね。

 というか、それヒロインじゃないの?

 略奪系ゲーム『花盗人の夜』でのヒロインと攻略対象のひとり、アーロン殿下との出会い。

 それが入学式。

「・・・どんな人?」

「え?どんなって・・・ええと、すごく綺麗な方だったわ。闇色の髪はサラサラで、瞳も同じ色なの。夜空みたいにキラキラしていて、とても素敵だったわ」

 乙女ゲームのゲームのヒロインには、ピンク色の髪と瞳の少女が多く存在するけど、このゲームのヒロインは前世で見慣れた黒髪黒目だった。

 清楚系の可愛らしいタイプだったと記憶している。

 うっとりとした様子のイザベリーナに、疑問が浮かぶ。

「イザベリーナと同じで、可愛らしいタイプじゃなくて?」

「ええ。お姉様と同じ綺麗な方でしたわ。どうなさったの?お姉様」

 イザベリーナが私を綺麗だと思ってくれていることにも驚きだが、最近のイザベリーナはお世辞もちゃんと言える良い子になってたから、それはヨシとしよう。

 でも、ヒロインが綺麗系?
もしかしてヒロインじゃないのかしら?

 この世界に黒髪黒目は少ないとはいえ、全くいないわけじゃない。

 でも、入学式イベントが起きてるのに。

「・・・いえ、なんでもないわ。それでイザベリーナ、私と帰るの?殿下を待ってなくていいの?」

「待ちたいですけど、アーロン様は先に帰っててくれていいって・・・」

 そういえば、この出会いイベントでアーロン殿下はヒロインに一目惚れするんだったわ。

 三年の矯正でマトモになったと思ったけど、ゲームの強制力には勝てないということなのかしら?

 あんなにイザベリーナと仲良くしてたくせに?
 
 私が望んでお母様が許したから、イザベリーナと婚約することが叶って、今も王太子候補で居られてること、アーロン殿下は理解しているのかしら?

 もし、今度何かあれば・・・
イザベリーナとの婚約破棄なんて、ゲーム通りに馬鹿なことをすれば、お母様は絶対許さないと思うんだけど。

 本気で一目惚れしたのかしら?

 いえ。人間だから、誰かに惹かれるのはね、仕方ないわよ、うん。

 でも、アーロン殿下は王族。
王族がそんな惚れっぽくてどうするのよ。毎回毎回婚約解消するつもり?

 これは、様子を見ておく必要有りね。

「なら、一緒に殿下のところへお迎えに行きましょうか?私もついて行ってあげるわ」


 
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