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最終話:その手を取るのは
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私は、ハベリア公爵令息様・・・クライブ様と婚約を前提にしたお友達になることになった。
彼は、私の推しではない。
でも私は推しと結ばれたいわけではなくて、推しに幸せになってもらいたいのだ。
そういう意味では、私の望みは叶ったと思う。
私の推しは、本来なら一緒になることなど叶わない相手から想いを向けられ、そして結ばれることになった。
彼は、主人であるヴァイオレット様の幸せだけを望んでいた。
ヴァイオレット様は公爵令嬢だ。
平民の使用人と結ばれるなんて未来、訪れるわけがなかった。
だけど王子の婚約解消騒動のおかげで、父親であるマディソン公爵から好きな相手を婿に迎えれば良いと許可がおりた。
優秀なヴァイオレット様は、王子を支えるべく王家の婚約者になっていたけど、リオルド王子は廃籍され、立太子する予定の第二王子には同い年の婚約者がいる。
自由を得て、マディソン公爵家を継ぐことになったヴァイオレット様が選んだのは、ずっと自分を支えてくれたルカだったのだ。
ルカは確かに平民だけど、魔王になるほどの魔力持ちで、しかもクラスで主席なほど優秀。
マディソン公爵もルカを認め、王家もリオルド王子のことがあった為かルカが公爵家の入婿になることを認めた。
私にとって彼は前世の推しだけど、この世界に転生してから彼と会話すらしていない。
彼はただ静かにヴァイオレット様に付き従い、ヴァイオレット様の笑顔を守るべく生きていた。
だから・・・
私は悲しいとは思わない。
大切な推しと、大切な友人が、どちらも幸せになるのだ。
だから・・・
胸の奥がチクンと痛んだけど、気にしない。
クライブ様は何かを察したのか、ポンポンと頭を撫でてくれた。
相変わらず無口で無表情だけど、それにも耐性が付いてきて、逆に多くを語らない彼のそばにいると落ち着くようになってきた。
『ルリア』は『ヒロイン』で、クライブ・ハベリア宰相子息は『攻略対象』だけど、私は氷の貴公子様を攻略なんてしていないし、むしろ突然の求婚に驚いてしまったくらい。
それでもクライブ様となら、ヒロインとか聖女とか関係なく、私らしく生きていける気がした。
大人しく待てをしている彼に、いつ婚約を了承しようかしら。
私は来年は同じクラスになると、頑張って勉強しているクライブ様を見ながら、彼から贈られたネックレスにそっと指を這わせるのだった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎end♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
彼は、私の推しではない。
でも私は推しと結ばれたいわけではなくて、推しに幸せになってもらいたいのだ。
そういう意味では、私の望みは叶ったと思う。
私の推しは、本来なら一緒になることなど叶わない相手から想いを向けられ、そして結ばれることになった。
彼は、主人であるヴァイオレット様の幸せだけを望んでいた。
ヴァイオレット様は公爵令嬢だ。
平民の使用人と結ばれるなんて未来、訪れるわけがなかった。
だけど王子の婚約解消騒動のおかげで、父親であるマディソン公爵から好きな相手を婿に迎えれば良いと許可がおりた。
優秀なヴァイオレット様は、王子を支えるべく王家の婚約者になっていたけど、リオルド王子は廃籍され、立太子する予定の第二王子には同い年の婚約者がいる。
自由を得て、マディソン公爵家を継ぐことになったヴァイオレット様が選んだのは、ずっと自分を支えてくれたルカだったのだ。
ルカは確かに平民だけど、魔王になるほどの魔力持ちで、しかもクラスで主席なほど優秀。
マディソン公爵もルカを認め、王家もリオルド王子のことがあった為かルカが公爵家の入婿になることを認めた。
私にとって彼は前世の推しだけど、この世界に転生してから彼と会話すらしていない。
彼はただ静かにヴァイオレット様に付き従い、ヴァイオレット様の笑顔を守るべく生きていた。
だから・・・
私は悲しいとは思わない。
大切な推しと、大切な友人が、どちらも幸せになるのだ。
だから・・・
胸の奥がチクンと痛んだけど、気にしない。
クライブ様は何かを察したのか、ポンポンと頭を撫でてくれた。
相変わらず無口で無表情だけど、それにも耐性が付いてきて、逆に多くを語らない彼のそばにいると落ち着くようになってきた。
『ルリア』は『ヒロイン』で、クライブ・ハベリア宰相子息は『攻略対象』だけど、私は氷の貴公子様を攻略なんてしていないし、むしろ突然の求婚に驚いてしまったくらい。
それでもクライブ様となら、ヒロインとか聖女とか関係なく、私らしく生きていける気がした。
大人しく待てをしている彼に、いつ婚約を了承しようかしら。
私は来年は同じクラスになると、頑張って勉強しているクライブ様を見ながら、彼から贈られたネックレスにそっと指を這わせるのだった。
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完結おめでとうございます&お疲れ様です。
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氷の貴公子は表に自分の感情を出さない、分かりにくい人ではありますが言葉にしなくても何となく、察して気遣ってくれるのでいい男ですよね。
徐々に絆が築かれているようだから、将来的にはヒロインとしても幸せになれそうで良かったです。
感想ありがとうございます😊
そうですね。
クライブは、婚約解消をすることになりましたが、お互い政略結婚相手だったのが幸いし、ヒロインへの想いを認められることになりました。
これからは、言葉少なでも相手のことを大切にする婚約者となってもらいたいと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
クライブ君、破棄されたけど婚約者いましたよね?今回の騒動で破棄されるの前提の婚約だとしたら
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