悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな

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失った地位

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「まぁ、クライブ殿のことは後からゆっくり話してあげなさい。どうせ向こうから接触して来るだろうしな。それよりも、殿下たちと、あの愚者の始末だ」

 確かに、王子と教皇子息、それからエリィさんの後始末が先よね。

 ん?向こうから接触とか聞こえたような・・・

 ぎゃあぎゃあ喚くエリィさんは、話しているうちに猿ぐつわをかまされ、両手を拘束されていた。

 リオルド王子とラヴァル教皇子息は、床に膝をつき、項垂れている。

 自分たちが完全に、父親から見捨てられたと理解したのだろう。

 王子の俯いていた顔が助けを求めるように彷徨い、ヴァイオレット様で視線が止まった。

「ば、ヴァイオレット!許してやるから、こっちに来い!婚約者だろう?僕を助けろ!」

「まぁ!王子殿下はご冗談がお上手ですこと」

 ヴァイオレット様は、それはそれは綺麗な、淑女の見本のような笑顔を浮かべた。

 扇で口元を隠し、ホホホと微笑うヴァイオレット様に、王子は勢いよく立ち上がる。

「だ、な、誰が冗談などッ!」

「それからわたくしのことは、マディソン公爵令嬢とお呼びくださいませ?元婚約者様」

「は?何を言っているんだ、お前は。先程の婚約破棄は取り消しだ。お前は僕が好きだから婚約を申し込んで来たのだろう?ちゃんと結婚してやる。だから・・・」

「申し訳ありませんけど、お断りしますわ。それにわたくしたちの婚約は、入学直後に解消されておりますわ。良かったですわね?これで何の障害もなくエリィさんと一緒になれましてよ」

 ヴァイオレット様の笑顔だけどはっきりとした答えに、王子の顔はひきつった。

「お、お前は僕が好きなのだろう。だからエリィに嫉妬して・・・」

「わたくしたちの婚約は、政略的なものですわ。それに、婚約してからわたくしを婚約者として扱って下さったことがありまして?そんな方をお慕いすることなんてありませんわ」

 現在の状況でも、まだヴァイオレット様に慕われてると思えるのがすごいわ。

 しかもまだ、エリィさんの嘘を信じてるの?

「わたくしは、エリィさんに嫉妬したことなどありませんわ。むしろ仮にも婚約者だった方がそれほどまでにお好きになった方と結ばれるのを、心からお喜び申し上げます」

「・・・」

「すまんな、ヴァイオレット嬢。最後まで嫌な思いをさせた。我が愚息が申し訳なかった」

「陛下、わたくしの方こそお力になれず申し訳ございません」

 つまらない嘘を見抜くことが出来ず、婚約者を蔑ろにした結果、王子も教皇子息もその地位を失うことになった。

 
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