35 / 40
言ってないで済むわけないのに
しおりを挟む
「エリィ?」
戸惑うように声をかける王子や教皇子息から距離を取るように、エリィさんは數歩後ろに下がろうとして、背中がティラー様にぶつかった。
「ティラー様。手伝って差し上げて下さい」
「分かった」
私が引く気がないのを感じたのか、ティラー様は淡々とエリィさんの手を引いて、ハベリア様のところへと連れて行く。
嫌がって抵抗してるみたいだけど、体格もあり鍛えてる男の人の力に適うわけがないわよね。
「さぁ、エリィ。直接傷に触れたくないと言うのなら、ほらハンカチを当てよう」
「・・・」
「エリィ?」
「・・・あーっ!もう!言っとくけど私、自分で聖女だなんて一言も言ってないからね!」
ティラー様の手を振り払い、エリィさんは苛立ったように喚き出す。
どうやら被っていた猫が、大量に逃げ出したようだ。
その様子に、王子と教皇子息は目を丸くし、ティラー様はため息を吐かれている。
宰相子息は・・・うーん、表情が変わらないから分からないわ。
そういやゲームでも彼って氷の貴公子とか呼ばれてたっけ。
単に感情を出すのが苦手なだけなんだけど、父親が偉大過ぎて、そのプレッシャーに潰れそうになってるところを、ヒロインが声をかけて悩みを聞くのよね。
うまく自分の感情を表せない彼に、ヒロインは根気よく悩みを聞いて「ハベリア様は頑張ってます。今のままで良いんですよ」って肯定するの。
それから少しずつ距離が縮まるのよね。
ここはゲームの世界じゃないから、宰相子息がゲーム内通りかは分からないけど、とりあえず怪我は治しておくべきよね。
私はエリィさんをよそにハベリア様に近付くと、その左手に手のひらを当てた。
「ウィザード嬢・・・」
「しなくていい怪我でしたからね」
エリィさんの嘘を見抜くためとはいえ、本来ならしなくていい怪我である。
ちなみに、私が傷を負うという選択はなかった。
聖女だからからなのか、私は怪我をしてもすぐに治ってしまうのだ。
そんなことゲームでも小説でも語られてなかったから、最初に傷が消えた時は驚いたわ。
でも『タンザナイトの乙女』のヒロインって、中々のチートな聖女なのよね。
いるだけで国に恩恵を与えるから実り豊かになるし、聖女がいれば魔物も国に入ってこない。だって結界張れるから。
その上、怪我を癒す治癒魔法も使える。
魔王になったルカですら、浄化していまうんだもの。
これをチートと言わずして何をチートと呼ぶのよって感じ。
そんな聖女を騙ったのよ?
言ってません、で済むわけないって分からないのかな?
戸惑うように声をかける王子や教皇子息から距離を取るように、エリィさんは數歩後ろに下がろうとして、背中がティラー様にぶつかった。
「ティラー様。手伝って差し上げて下さい」
「分かった」
私が引く気がないのを感じたのか、ティラー様は淡々とエリィさんの手を引いて、ハベリア様のところへと連れて行く。
嫌がって抵抗してるみたいだけど、体格もあり鍛えてる男の人の力に適うわけがないわよね。
「さぁ、エリィ。直接傷に触れたくないと言うのなら、ほらハンカチを当てよう」
「・・・」
「エリィ?」
「・・・あーっ!もう!言っとくけど私、自分で聖女だなんて一言も言ってないからね!」
ティラー様の手を振り払い、エリィさんは苛立ったように喚き出す。
どうやら被っていた猫が、大量に逃げ出したようだ。
その様子に、王子と教皇子息は目を丸くし、ティラー様はため息を吐かれている。
宰相子息は・・・うーん、表情が変わらないから分からないわ。
そういやゲームでも彼って氷の貴公子とか呼ばれてたっけ。
単に感情を出すのが苦手なだけなんだけど、父親が偉大過ぎて、そのプレッシャーに潰れそうになってるところを、ヒロインが声をかけて悩みを聞くのよね。
うまく自分の感情を表せない彼に、ヒロインは根気よく悩みを聞いて「ハベリア様は頑張ってます。今のままで良いんですよ」って肯定するの。
それから少しずつ距離が縮まるのよね。
ここはゲームの世界じゃないから、宰相子息がゲーム内通りかは分からないけど、とりあえず怪我は治しておくべきよね。
私はエリィさんをよそにハベリア様に近付くと、その左手に手のひらを当てた。
「ウィザード嬢・・・」
「しなくていい怪我でしたからね」
エリィさんの嘘を見抜くためとはいえ、本来ならしなくていい怪我である。
ちなみに、私が傷を負うという選択はなかった。
聖女だからからなのか、私は怪我をしてもすぐに治ってしまうのだ。
そんなことゲームでも小説でも語られてなかったから、最初に傷が消えた時は驚いたわ。
でも『タンザナイトの乙女』のヒロインって、中々のチートな聖女なのよね。
いるだけで国に恩恵を与えるから実り豊かになるし、聖女がいれば魔物も国に入ってこない。だって結界張れるから。
その上、怪我を癒す治癒魔法も使える。
魔王になったルカですら、浄化していまうんだもの。
これをチートと言わずして何をチートと呼ぶのよって感じ。
そんな聖女を騙ったのよ?
言ってません、で済むわけないって分からないのかな?
31
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説

捨てられたループ令嬢のハッピーエンド
高福あさひ
恋愛
死ぬと過去に逆行を繰り返すフェリシア・ベレスフォード公爵令嬢は、もう数えきれないほどに逆行していた。そして彼女は必ず逃れられない運命に絶望し、精神も摩耗しきっていたが、それでもその運命から逃れるために諦めてはいなかった。今回も同じ運命になるだろうと、思っていたらどの人生でも一度もなかった現象が起こって……?※他サイト様にも公開しています。不定期更新です。
※旧題【逆行し続けた死にたがり悪役令嬢の誰にも見えない友人】から改題しました。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。

悪役令嬢とバレて、仕方ないから本性をむき出す
岡暁舟
恋愛
第一王子に嫁ぐことが決まってから、一年間必死に修行したのだが、どうやら王子は全てを見破っていたようだ。婚約はしないと言われてしまった公爵令嬢ビッキーは、本性をむき出しにし始めた……。

悪役令嬢を追い込んだ王太子殿下こそが黒幕だったと知った私は、ざまぁすることにいたしました!
奏音 美都
恋愛
私、フローラは、王太子殿下からご婚約のお申し込みをいただきました。憧れていた王太子殿下からの求愛はとても嬉しかったのですが、気がかりは婚約者であるダリア様のことでした。そこで私は、ダリア様と婚約破棄してからでしたら、ご婚約をお受けいたしますと王太子殿下にお答えしたのでした。
その1ヶ月後、ダリア様とお父上のクノーリ宰相殿が法廷で糾弾され、断罪されることなど知らずに……

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?
砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。
場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。
全11部 完結しました。
サクッと読める悪役令嬢(役)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる