上 下
85 / 88
最終章それぞれの未来へ

元婚約者の未来

しおりを挟む
 ハロルド・ダートン公爵令息。
アリス・ビスクランドの前回の婚約者であり、ヒロインを好きになった挙句に冤罪でアリスを殺した人。

 私は彼のことが大嫌いでした。
は殺されたアリスではないけれど、彼女の記憶も持っていたから、冤罪をかけられて処刑されるまでの彼女の悲しみや絶望が理解できたのです。

 それに、私は前世で恋人だと思っていた、実際はただのヒモ以下の男に殺されましたから、余計にハロルドのことは許せなかったのです。

 だから、ハロルドとの婚約を回避しようとしました。

 公爵家からの婚約をお断りして、お父様の提案で王弟であるサードニクス公爵のご子息、セシル様とお会いしました。

 セシル様と婚約した私に、ハロルドは第1王子の力を借りて文句を言いに来ましたけど、そこはセシル様が守って下さいました。

 前回の冤罪のこともあって、ハロルドのことが大嫌いな私は、本人にはっきり嫌いだと告げました。
 結果、ハロルドと第1王子は、父親である国王陛下とダートン公爵にこっ酷く叱られたようです。

 それから、学園に入学するまで、ハロルドと会うことはありませんでした。

 学園に入学してきたハロルドは、私との距離を無理に詰めることなく、普通に顔を合わせるだけの学友になる予定でした。

 それが変わったのは、ヒロインであプリシア様が、私と同じ転生者で、しかも前世の私と一緒に命を落としたお嬢さんだったからです。
 ヒロインと常に共にいることで、他の攻略対象も一緒にいる機会が増えてしまいました。

 その上、ヒロインもどきと思われる転生者まで現れたのです。
 その方が、あまりに電波系のありえない方だったことで、私とハロルドや第1王子との距離は縮まることになりました。

 ハロルドにも、第1王子にも婚約者がいたこともあると思います。

 セシル様には、私の前世の話も、アリスの過去の話も、乙女ゲームの話もしてありますから、婚約者がいなければハロルドたちが私の側にいることは許さなかったと思います。

 そのハロルドは、学園を卒業してからお父様であるダートン公爵に付いて後を継ぐべくお勉強をしているそうです。
 婚約者のキャロライン・アイシス侯爵令嬢様は、私たちの2歳年下なので、彼女の学園卒業を待ってから婚姻するのだと思います。

 キャロライン様とは、プリシア様とエルンスト様の縁を結ぶためのお出かけのときに初めてお会いしました。

 橙色の髪はふわふわとしていて、甘い砂糖菓子のような、とても可愛らしいご令嬢でした。
 守ってあげたくなるような婚約者に、ハロルドはぞっこんのようです。

 私を殺した元婚約者ですが、今の彼は違うということは理解しています。
 もう彼に対して憎しみはありません。
キャロライン様を幸せにしてあげて欲しい、そう思います。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛しているだなんて戯言を言われても迷惑です

風見ゆうみ
恋愛
わたくし、ルキア・レイング伯爵令嬢は、政略結婚により、ドーウッド伯爵家の次男であるミゲル・ドーウッドと結婚いたしました。 ミゲルは次男ですから、ドーウッド家を継げないため、レイング家の婿養子となり、レイング家の伯爵の爵位を継ぐ事になったのです。 女性でも爵位を継げる国ではありましたが、そうしなかったのは、わたくしは泣き虫で、声も小さく、何か言われるたびに、怯えてビクビクしていましたから。 結婚式の日の晩、寝室に向かうと、わたくしはミゲルから「本当は君の様な女性とは結婚したくなかった。爵位の為だ。君の事なんて愛してもいないし、これから、愛せるわけがない」と言われてしまいます。 何もかも嫌になった、わたくしは、死を選んだのですが…。 「はあ? なんで、私が死なないといけないの!? 悪いのはあっちじゃないの!」 死んだはずのルキアの身体に事故で亡くなった、私、スズの魂が入り込んでしまった。 今のところ、爵位はミゲルにはなく、父のままである。 この男に渡すくらいなら、私が女伯爵になるわ! 性格が変わった私に、ミゲルは態度を変えてきたけど、絶対に離婚! 当たり前でしょ。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観です。 ※ざまぁは過度ではありません。 ※話が気に入らない場合は閉じて下さいませ。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。 エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!? この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて… しかも婚約を破棄されて毒殺? わたくし、そんな未来はご免ですわ! 取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。 __________ ※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。 読んでくださった皆様のお陰です! 本当にありがとうございました。 ※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。 とても励みになっています! ※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

処理中です...