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ヒロインの攻略対象
本当の思い《エルンスト視点》
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今日は、みんなで街歩きの日だ。
セシルに、ハロルドに、レオナルドに発破をかけられた。
確かに、次の夏季休暇に国に帰れば、婚約者を決めるように父上に命令されるだろう。
皇太子など、父上の駒に過ぎない。正妃である母上の息子で、男の子供が他にいなかったから皇太子になった。ただそれだけだ。
側妃の生んだ子供に男がいたなら、簡単に立場を奪われる。その程度の価値しかない。
そんな国の、皇太子妃にダウニー嬢をしたくない。
決して、父上が嫌いなわけじゃない。
父上はケルドラード皇国の国王として、立派な方だと思う。
フォレスト王国のように、魔法が発展しているわけでもない皇国だが、他国からなめられることもなく、渡り合えている。
父上に従順な母上を嫌いなわけじゃない。女性は男の3歩後ろを歩き、常に従順であるべきという国の慣わしに沿った生き方をしているだけだ。
優しい母上のことを大切だと思う。滅多に俺にも笑顔を見せてくれないけれど。
そんな国に嫁いで、あの笑顔が見れなくなれば、俺は後悔するだろう。
セシル。
本当は分かっていたんだ。
ダウニー嬢の笑顔を見て、どうして胸が締め付けられたのか。
ケルドラード皇国で、笑顔の女性を見るのは、平民か子供くらいだ。
だから、彼女の笑顔を見た時、素直に可愛いと思った。愛しいと思ったんだ。
だけど、その気持ちを認めるわけにはいかなかった。
だって、認めても彼女を皇国に連れ帰るわけにはいかない。
たとえ、彼女を高位貴族の養女にしても、父上は自分が決めた令嬢を皇太子妃にするだろう。
光の聖女を手に入れるために、彼女は側妃にされてしまう。
だから、認めるわけにはいかない。
彼女にそんな思いはさせたくない。
せめて、今日1日だけはー
楽しい1日にしよう。
たくさん彼女と話して、たくさん笑顔を見せてもらいたい。
次に国に帰り婚約者を決められれば、そのまま留学は取りやめにしようと思う。
せっかく出来た友人と、もう会えなくなるのは寂しいが、彼らに失望されたくない。
向き合えない、応えられない思いなら、彼女に何も伝えるべきではない。
このまま、友人のまま離れるべきだ。だから、今日だけ。今日だけは、彼女の側にいたい。
きっと、その思い出だけで、俺は大丈夫だから。
セシルに、ハロルドに、レオナルドに発破をかけられた。
確かに、次の夏季休暇に国に帰れば、婚約者を決めるように父上に命令されるだろう。
皇太子など、父上の駒に過ぎない。正妃である母上の息子で、男の子供が他にいなかったから皇太子になった。ただそれだけだ。
側妃の生んだ子供に男がいたなら、簡単に立場を奪われる。その程度の価値しかない。
そんな国の、皇太子妃にダウニー嬢をしたくない。
決して、父上が嫌いなわけじゃない。
父上はケルドラード皇国の国王として、立派な方だと思う。
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父上に従順な母上を嫌いなわけじゃない。女性は男の3歩後ろを歩き、常に従順であるべきという国の慣わしに沿った生き方をしているだけだ。
優しい母上のことを大切だと思う。滅多に俺にも笑顔を見せてくれないけれど。
そんな国に嫁いで、あの笑顔が見れなくなれば、俺は後悔するだろう。
セシル。
本当は分かっていたんだ。
ダウニー嬢の笑顔を見て、どうして胸が締め付けられたのか。
ケルドラード皇国で、笑顔の女性を見るのは、平民か子供くらいだ。
だから、彼女の笑顔を見た時、素直に可愛いと思った。愛しいと思ったんだ。
だけど、その気持ちを認めるわけにはいかなかった。
だって、認めても彼女を皇国に連れ帰るわけにはいかない。
たとえ、彼女を高位貴族の養女にしても、父上は自分が決めた令嬢を皇太子妃にするだろう。
光の聖女を手に入れるために、彼女は側妃にされてしまう。
だから、認めるわけにはいかない。
彼女にそんな思いはさせたくない。
せめて、今日1日だけはー
楽しい1日にしよう。
たくさん彼女と話して、たくさん笑顔を見せてもらいたい。
次に国に帰り婚約者を決められれば、そのまま留学は取りやめにしようと思う。
せっかく出来た友人と、もう会えなくなるのは寂しいが、彼らに失望されたくない。
向き合えない、応えられない思いなら、彼女に何も伝えるべきではない。
このまま、友人のまま離れるべきだ。だから、今日だけ。今日だけは、彼女の側にいたい。
きっと、その思い出だけで、俺は大丈夫だから。
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