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ヒロインの攻略対象
変化《エルンスト視点》
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「すごいな、温かい光だ」
光の聖女だというダウニー嬢に、少し学んだのでと癒しの魔法を見せてもらった。
初めの頃は、どこか緊張と戸惑いを滲ませていたダウニー嬢も、留学してきて1ヶ月経つ頃には笑顔も見せてくれるようになった。
最近の俺はおかしい。
彼女の笑顔を見ると、もっと笑って欲しいと思う。
悲しそうな顔を見ると、なんとかしてその原因を取り除きたくなる。
プリシア・ダウニー男爵令嬢。
パステルピンクの髪と瞳をした、とても愛らしい令嬢だ。
その大きな、キラキラとした瞳に見つめられると、胸が締め付けられるような気がする。
1ヶ月の間に、随分と親しくなったハロルドやレイモンドにそう言うと、ものすごく生温かい目で見られた。
セシルは何だか呆れたような目で見るし、ジェイドとランベルトはため息を吐いている。
仲良くしてくれているのは嬉しいが、全員遠慮がなさすぎだと思う。
これでもケルドラード皇国の皇太子なんだが。
ハロルドやレイモンドたちと共に騎士科の授業を受けていて思ったのは、セシルの強さが異常だということだ。
彼は公爵家の子息だが、騎士団長の息子で、本人も騎士団入りを目指しているランベルトと同等の実力がある。
ケルドラード皇国は魔法がないため、騎士団の訓練は他国に劣っていないと思っていたが、フォレスト王国の騎士団は我が国に匹敵している。
セシルやランベルトに至っては、我が騎士団の精鋭並みだ。
これで学生なのだから、実際の騎士団員はどれほどの強さなのか。
ケルドラード皇国に戻れば、騎士団の訓練ももう少し力を入れるべきだと考えた。
ジェイドは魔法省長官の子息らしく、ひょろっとしていて、騎士の訓練も苦手のようだ。
だが、魔法の力は特化しているらしく、一度見せてもらった魔法の威力には腰を抜かしかけた。
それでも、半分も力を出してないというのだから、魔法とは恐ろしいものだ。
そして、セシルは魔法も扱えるらしい。
本人は大したことはないと言っていたが、ジェイド曰く、セシルが本気になれば自分など足元にも及ばないだろうということらしい。
天は二物を与えずというが、与えるところには二物も三物も与えるようだ。
見目も麗しく、剣にも魔法にも優れ、しかも公爵家の嫡男。
そんなセシルが、大切にしているのがアリス・ビスクランド伯爵令嬢だ。
銀の髪に菫色の瞳の、綺麗なご令嬢だと思う。
もしも彼女がいなかったら、セシルはダウニー嬢と懇意になっていたかもしれない。
そう思うと、胸の奥がモヤモヤする気がした。
光の聖女だというダウニー嬢に、少し学んだのでと癒しの魔法を見せてもらった。
初めの頃は、どこか緊張と戸惑いを滲ませていたダウニー嬢も、留学してきて1ヶ月経つ頃には笑顔も見せてくれるようになった。
最近の俺はおかしい。
彼女の笑顔を見ると、もっと笑って欲しいと思う。
悲しそうな顔を見ると、なんとかしてその原因を取り除きたくなる。
プリシア・ダウニー男爵令嬢。
パステルピンクの髪と瞳をした、とても愛らしい令嬢だ。
その大きな、キラキラとした瞳に見つめられると、胸が締め付けられるような気がする。
1ヶ月の間に、随分と親しくなったハロルドやレイモンドにそう言うと、ものすごく生温かい目で見られた。
セシルは何だか呆れたような目で見るし、ジェイドとランベルトはため息を吐いている。
仲良くしてくれているのは嬉しいが、全員遠慮がなさすぎだと思う。
これでもケルドラード皇国の皇太子なんだが。
ハロルドやレイモンドたちと共に騎士科の授業を受けていて思ったのは、セシルの強さが異常だということだ。
彼は公爵家の子息だが、騎士団長の息子で、本人も騎士団入りを目指しているランベルトと同等の実力がある。
ケルドラード皇国は魔法がないため、騎士団の訓練は他国に劣っていないと思っていたが、フォレスト王国の騎士団は我が国に匹敵している。
セシルやランベルトに至っては、我が騎士団の精鋭並みだ。
これで学生なのだから、実際の騎士団員はどれほどの強さなのか。
ケルドラード皇国に戻れば、騎士団の訓練ももう少し力を入れるべきだと考えた。
ジェイドは魔法省長官の子息らしく、ひょろっとしていて、騎士の訓練も苦手のようだ。
だが、魔法の力は特化しているらしく、一度見せてもらった魔法の威力には腰を抜かしかけた。
それでも、半分も力を出してないというのだから、魔法とは恐ろしいものだ。
そして、セシルは魔法も扱えるらしい。
本人は大したことはないと言っていたが、ジェイド曰く、セシルが本気になれば自分など足元にも及ばないだろうということらしい。
天は二物を与えずというが、与えるところには二物も三物も与えるようだ。
見目も麗しく、剣にも魔法にも優れ、しかも公爵家の嫡男。
そんなセシルが、大切にしているのがアリス・ビスクランド伯爵令嬢だ。
銀の髪に菫色の瞳の、綺麗なご令嬢だと思う。
もしも彼女がいなかったら、セシルはダウニー嬢と懇意になっていたかもしれない。
そう思うと、胸の奥がモヤモヤする気がした。
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