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ゲームの舞台の学園へ
1週間の安息と対策《セシル視点》
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「はい、あーん」
膝の上に座らせたアリスにクッキーを差し出す。小鳥のようにプルプルと震えながら、それでも口を小さく開くアリスは食べてしまいたいくらい可愛い。
その桜色の唇に、クッキーを摘んだ指が触れて、アリスも僕もビクッとしてしまった。
可愛い。触れたい。
アリスが転生者と教えられた時のことだ。ハロルド・ダートン公爵令息と婚約したくないために、僕と婚約したのではと聞いたことがあった。
その時、アリスは僕だから婚約したのだと、僕のことが好きだと言ってくれた。
嬉しくて、嬉しくて、思わずアリスに口付けてしまった。
後で、婚約しているとはいえ、まだ11歳の彼女に何をしているんだと反省した。
だから、あれ以来は不埒は真似はしていない。していないが、したくないわけではない。
むしろ、愛らしいアリスの姿に、僕は我慢しまくりだ。だけど、アリスにも、ビスクランド伯爵にも嫌われたくはない。
「セシル様?」
少し考え込んでいたみたいだ。膝の上でアリスが首を傾げている。
「僕たちがいることを忘れてませんか?」
かけられた声に、アリスから前へと顔を向けた。
そう。今いるのは、サードニクス家でもビスクランド家でもなく、王宮の庭園なのだ。
そして目の前には、レイモンド第1王子、その婚約者のリーシャ・ルマンド侯爵令嬢。ハロルド・ダートン公爵令息。ジェイド・アトラス侯爵令息。ランベルト・トワルスキー侯爵令息。そして、プリシア・ダウニー男爵令嬢がいる。
「別に忘れてはいない」
「それが標準装備かよ」
ランベルト殿が呆れたように言うが、レイモンドとハロルド殿は何も言わない。いや、言えないのか?以前の薔薇園でのことがまだ忘れられないみたいだな。
ダウニー嬢は、逆にアリスを微笑ましそうに見てるし、ジェイド殿は触らぬ神に祟りなしという顔だ。
「セシル様、下ろしてくださいませ」
「どうして?」
「は、恥ずかしいのです。皆様の前では、その・・・」
「アリスは僕のだってみんなに分かっていいのに」
そう言いながらも、僕はアリスを膝から下ろした。無理強いしてまた泣かれたら困る。アリスは急いで僕とダウニー嬢の間の椅子に腰掛けた。
元々、そこに座っていたのを僕が膝に抱き上げたのだ。
ジェイド殿に触れられそうになったとダウニー嬢から聞いて。
今日は、あの妙なのの対策と、1週間後に留学してくるエルンスト・ケルドラード皇太子のことで集まっている。
我が国の、王族や高位貴族に対してのあの態度も問題だが、万が一にも他国であるケルドラード皇国の皇太子にあんな態度取られたりしたら、外交問題である。
そして、その可能性があるとアリスから言われ、今日全員で集まることになったのだ。
膝の上に座らせたアリスにクッキーを差し出す。小鳥のようにプルプルと震えながら、それでも口を小さく開くアリスは食べてしまいたいくらい可愛い。
その桜色の唇に、クッキーを摘んだ指が触れて、アリスも僕もビクッとしてしまった。
可愛い。触れたい。
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だから、あれ以来は不埒は真似はしていない。していないが、したくないわけではない。
むしろ、愛らしいアリスの姿に、僕は我慢しまくりだ。だけど、アリスにも、ビスクランド伯爵にも嫌われたくはない。
「セシル様?」
少し考え込んでいたみたいだ。膝の上でアリスが首を傾げている。
「僕たちがいることを忘れてませんか?」
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「別に忘れてはいない」
「それが標準装備かよ」
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ダウニー嬢は、逆にアリスを微笑ましそうに見てるし、ジェイド殿は触らぬ神に祟りなしという顔だ。
「セシル様、下ろしてくださいませ」
「どうして?」
「は、恥ずかしいのです。皆様の前では、その・・・」
「アリスは僕のだってみんなに分かっていいのに」
そう言いながらも、僕はアリスを膝から下ろした。無理強いしてまた泣かれたら困る。アリスは急いで僕とダウニー嬢の間の椅子に腰掛けた。
元々、そこに座っていたのを僕が膝に抱き上げたのだ。
ジェイド殿に触れられそうになったとダウニー嬢から聞いて。
今日は、あの妙なのの対策と、1週間後に留学してくるエルンスト・ケルドラード皇太子のことで集まっている。
我が国の、王族や高位貴族に対してのあの態度も問題だが、万が一にも他国であるケルドラード皇国の皇太子にあんな態度取られたりしたら、外交問題である。
そして、その可能性があるとアリスから言われ、今日全員で集まることになったのだ。
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