転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

ゲームの舞台の学園へ

攻略対象ジェイド・アトラス

「アトラス様、先程はありがとうございました」

　遅れて教室に現れたジェイド・アトラス侯爵令息に、プリシア様と共に頭を下げました。
　絡まれてたのは私だけど、攻略対象に関わりたくないと思ってるのをプリシア様は分かって下さってるから、一緒に来てくれたのです。
　優しすぎますわ。天使です。

　眼鏡の奥の真っ赤な瞳を細めて、アトラス様は首を降ります。

「ビスクランド嬢が謝ることではありませんよ。殿下からも聞いていたのです。妙な女生徒に絡まれていると」

「え、ええ。何度言っても聞いてくださらなくて」

「トワルスキー殿とちゃんと教師に引き渡して来ました。今度は１週間の謹慎らしいですよ」

　あーあ。謹慎ですか。学園に入ったばかりで謹慎だなんて、先生方にも目をつけられたでしょうね。
　それに、この学園は小さな社交界。第１王子をはじめとする高位貴族に馴れ馴れしくする男爵令嬢として、みんなからどんな目で見られるか、この１週間で反省してくれるといいのですが・・・
　しないでしょうね、きっと。
あの類の方は、本当にもう少し思慮深くなるべきだと思います。

「あんなののことより、ダウニー嬢は光の魔力持ちとお聞きしたのですが？」

「あ。はい。光の聖女と認定されました」

　アトラス様。あんなの呼ばわりはいかがなものかと思いますわ。
　でも、さすがヒロイン。攻略対象に興味を持たれましたわね。

　そうです。アトラス様。プリシア様は、優しくて、可愛くて、しかも光の聖女で、素敵なヒロインなんですよ！

「ビスクランド嬢は、闇の聖女とお聞きしたのですが・・・」

「え、ええと、そうみたいです」

　教皇様！どうしてもう知れ渡っていますの？いや、魔法省長官の息子だから知ってますの？
　いや、いずれわかることですけど、もう少しそっとしておいて欲しかったです。

「すごい！初めて見ました、闇の聖女様なんて」

　いやいやいや。そんな興奮して近寄って来ないで下さい。
　私は悪役令嬢です。ヒロインじゃないです。

「アトラス様！アリス様はサードニクス様の婚約者です。触れられたら、殺されますよ」

　プリシア様が、私の手を握ろうとしていたアトラス様を制止します。
　婚約者のいるいないはともかく、女性に勝手に触れるものではありません。

　それから、プリシア様。
いくらセシル様でも、手を握ったくらいで殺したりは・・・しないと思いますわ。
　ええ。きっと。多分。
ちょっとキツめのお仕置きするくらいだと思い・・・たいですわ。

「サードニクス・・・公爵令息の。そうですか。僕も命が惜しいですから」

　ですから、セシル様は私のことを溺愛してくださっていますけど、そこまで狭量ではありませんわよ。