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アメジストの姫君
どうして遭遇するのですか?
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5日後ー
セシル様は満面の笑みで私を薔薇園へとエスコートしてくれています。
幸せそうで何よりです。
私はすでに、ぐったりと疲れていました。
伯爵家を出るまで、一緒に行くと言って泣き喚いたお兄様。何だか背中に嵐の雪山を背負いながら、セシル様に妙な圧をかけていたお父様。
ぐったりです。
出かける前から疲れるってなんなんですか。
「はぁ」
ため息を漏らすと、セシル様はクスクスと笑われます。
なんだかもう、この人の前で取り繕うの疲れました。伯爵家の令嬢としてちゃんとしなきゃって思ってたけど、面倒くさくなりました。
私はあの屑の婚約者にならないのなら、相手をどうこう言うつもりはありません。セシル様と婚約したのも、公爵家の方が元婚約者との婚約を回避しやすいと思っただけです。
だからセシル様に嫌われても構わないです。
「お兄さまとお父さまに疲れました。こんななら、出かけるんじゃなかったです」
「そんなこと言わないでよ。僕はすっごく楽しみにしてたんだから」
あなたがそうやって楽しみなのを顔に出すから、あの2人が鬱陶しかったんですよ、と声を大にして言いたいです。
「薔薇園の薔薇を使ったスイーツ、買ってあげるから」
スイーツですか。なんでしょう?クッキーとかでしょうか。
スイーツにつられたわけではないですけど、いつまでも拗ねていては、せっかく来たのにつまらないですから、そろそろ行きましょうか。
「約束ですよ?」
「うん。約束ね」
スイーツは買って貰いますよ。セシル様が言い出したんですから。
それでも嬉しそうに手を差し出してくるセシル様の手に手を重ねます。
そうしたら、指をぎゅっと絡めて、いわゆる恋人繋ぎをされました。
恥ずかしいですが、よく考えたらまだ5歳なので、子供ならぎゅっと繋ぐのもアリなのかもしれません。
脳内がアラサーなので、めちゃくちゃ恥ずかしいですけど。
「この薔薇園にはね、陛下や王妃様をはじめとする王族の名前が付いた薔薇があるんだよ」
「それは楽しみです。改良された薔薇だったりするのですか?」
「うん。王族の名前が付いた薔薇は全部そうだね。王妃様の薔薇は新種なんだよ」
それは一見の価値ありですね。
セシル様に手を引かれながら、薔薇の説明を受けつつ進みます。
薔薇の香りがあたり一面に満ちていて、とても気持ちいいです。
元々は爽やか系の香りの方が好きなのですが、自然の薔薇の香りもいいものです。
薔薇が特別好きと言うわけではありませんが、花は好きです。この世界にはないかもですが、桜は大好きでした。
「この先が王族の薔薇のエリアだよ」
そう言って進んだ先に、金の髪と緑の髪の少年がこちらに背中を向けてたっているのが見えました。
あれって・・・
「セシルじゃないか」
私たちに気づいた2人が振り返ります。
第1王子と元婚約者じゃないですか!
なんでこんなとこで遭遇するんですか!!
セシル様は満面の笑みで私を薔薇園へとエスコートしてくれています。
幸せそうで何よりです。
私はすでに、ぐったりと疲れていました。
伯爵家を出るまで、一緒に行くと言って泣き喚いたお兄様。何だか背中に嵐の雪山を背負いながら、セシル様に妙な圧をかけていたお父様。
ぐったりです。
出かける前から疲れるってなんなんですか。
「はぁ」
ため息を漏らすと、セシル様はクスクスと笑われます。
なんだかもう、この人の前で取り繕うの疲れました。伯爵家の令嬢としてちゃんとしなきゃって思ってたけど、面倒くさくなりました。
私はあの屑の婚約者にならないのなら、相手をどうこう言うつもりはありません。セシル様と婚約したのも、公爵家の方が元婚約者との婚約を回避しやすいと思っただけです。
だからセシル様に嫌われても構わないです。
「お兄さまとお父さまに疲れました。こんななら、出かけるんじゃなかったです」
「そんなこと言わないでよ。僕はすっごく楽しみにしてたんだから」
あなたがそうやって楽しみなのを顔に出すから、あの2人が鬱陶しかったんですよ、と声を大にして言いたいです。
「薔薇園の薔薇を使ったスイーツ、買ってあげるから」
スイーツですか。なんでしょう?クッキーとかでしょうか。
スイーツにつられたわけではないですけど、いつまでも拗ねていては、せっかく来たのにつまらないですから、そろそろ行きましょうか。
「約束ですよ?」
「うん。約束ね」
スイーツは買って貰いますよ。セシル様が言い出したんですから。
それでも嬉しそうに手を差し出してくるセシル様の手に手を重ねます。
そうしたら、指をぎゅっと絡めて、いわゆる恋人繋ぎをされました。
恥ずかしいですが、よく考えたらまだ5歳なので、子供ならぎゅっと繋ぐのもアリなのかもしれません。
脳内がアラサーなので、めちゃくちゃ恥ずかしいですけど。
「この薔薇園にはね、陛下や王妃様をはじめとする王族の名前が付いた薔薇があるんだよ」
「それは楽しみです。改良された薔薇だったりするのですか?」
「うん。王族の名前が付いた薔薇は全部そうだね。王妃様の薔薇は新種なんだよ」
それは一見の価値ありですね。
セシル様に手を引かれながら、薔薇の説明を受けつつ進みます。
薔薇の香りがあたり一面に満ちていて、とても気持ちいいです。
元々は爽やか系の香りの方が好きなのですが、自然の薔薇の香りもいいものです。
薔薇が特別好きと言うわけではありませんが、花は好きです。この世界にはないかもですが、桜は大好きでした。
「この先が王族の薔薇のエリアだよ」
そう言って進んだ先に、金の髪と緑の髪の少年がこちらに背中を向けてたっているのが見えました。
あれって・・・
「セシルじゃないか」
私たちに気づいた2人が振り返ります。
第1王子と元婚約者じゃないですか!
なんでこんなとこで遭遇するんですか!!
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