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第2章

困惑《ヒロイン視点》

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 目の前で、怒りをあらわにする悪役令嬢に、マズイと思った。

 ヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢は、第2王子であるサイードルートと、ヴィヴィの兄であるアゼルルートの悪役令嬢。

 その彼女は、今まで婚約者であるサイードが私にべったりでも何ひとつ言ってくることも、何の嫌がらせをしてくることもなかった。

 私の推しはアゼルなのに、どうしてもアゼルと学園で会うことができなくて、それにずっとサイードが側にいるから、仕方なくいただけなのに。

 このままじゃ、悪役令嬢とサイードが婚約破棄して、私はサイードと結ばれることになってしまう。

 そんなのは駄目!私の推しはアゼルなんだから!

 私は悪役令嬢を嵌めようとなんて思ってない。アゼルを攻略したい、いやするつもりだけど、どう見てもアゼルは妹を溺愛している。そんな彼女を貶めようとして、失敗したら?

 確かにユベールが側近候補から外れるって宣言して、焦ってラーナを嵌めようとしたけど、あれは失敗だった。

 私は別に、ラグヌスのことを好きでも何でもないのに、あんなことしてラグヌスに好かれたりしたら大変なことになるとこだった。

 失敗したせいで、ラグヌスとラーナはなんだか上手くいったっぽいから助かったけど、あれ以来サイードがべったりで困る。

 庭園に一緒に行こうと言われて、断れなくて仕方なく向かっていたら、知らない女生徒がサイードに話しかけて来た。

 ラッキーと思って「先に行ってますね」って1人にようやくなれたのに、歩いてたら突然足を掴まれて転んでしまった。

 足首を見たら、植物の蔓が私の足を掴むように絡み付いていて、これってブランのイベント?って思ってたら、サイードが駆け寄って来て、私が転んだことで駆け寄って来てくれたリティカを平手で殴ったの。

 びっくりしてるうちに、ブランがやって来てサイードの側近候補からおりるって言うし、ヴィヴィはサイードに詰め寄るし。

 どうしてこんなことになっちゃったの?
私は別にサイードもブランも攻略するつもりなんてないのに。

 私が好きなのはアゼルなの。
アゼルにも婚約者がいるけど、アゼルだって攻略対象の1人なんだから攻略できるはず。

 それに、アゼルルートの悪役令嬢はヴィヴィで婚約者じゃないから、婚約者が困ったことにはならないんだと思う。

 ヴィヴィは私のことを責めてはないけど、このままサイードと婚約破棄されたら困るから、慌てて口を挟んだ。

 驚いたような顔で私を見たヴィヴィは、私の足元にしゃがみ込むと、ブランを振り返る。

「確かに魔力の残滓がありますわ。ビゼット様、魔力を追えまして?」




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