上 下
38 / 88
第2章

第1王子との邂逅

しおりを挟む
「シーラ」

 後ろからシーラに呼びかける声がして、私はビクッと体を震わせた。
 この声は・・・

「あら?サイラス様。ヴァレリア様もご機嫌よう」

 金髪碧眼の爽やか系イケメンと、銀髪を襟元で束ねた長兄がそこに立っていた。

「ヴィ!今日も相変わらず可愛いな!」

 アベルの言葉に、ため息を吐く。
馬鹿なの?第1王子の前で何言ってるのよ。

「アベルお兄様・・・そういうことは我が家の中だけにして下さい」

「どうしてだ?ヴィは家の中でも外でも、超絶可愛いじゃないか。アゼルだって、父上や母上だってそう言ってる」

 一家揃って、馬鹿なの?
というかお父様まで言ってるの?まさか、外で言ったりしてないわよね?
 大切にされてることは嬉しいと思うけど、他人の前で溺愛っぷりを披露されるのって、めちゃくちゃ恥ずかしい。

「はははっ。ヴァレリア嬢、諦めた方がいい。アベルは毎日毎日、ヴァレリア嬢の愛らしさを1時間は語ってくれるからな」

「ご、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「迷惑なんかじゃないさ。事実、愛らしいのだから、アベルを責められないからね。義妹になる日が待ち遠しいよ」

 げ。義妹にはならないんだけど。
そろそろ、サイードの愚行が耳に入っていてもおかしくないんだけど、まだ大丈夫なのかな?

「サイラス様もそう思われますわよね。わたくしもヴィヴィ様とご一緒する日が待ち遠しいですわ」

 シーラまで追い討ちをかけてくる。
もしかして、サイードの愚行を知ってて、婚約解消しないように、先回りして言ってるの?

 可能性はあるよね。サイードと違ってサイラスは優秀だから。

 アベルは一応身内だから味方になってくれるとは思うけど、第1王子を敵にまわすのは得策じゃないわね。

「ヴァレリア様」

 この場からどうやって退散するか悩んでいた私に、救いの手が差し伸べられた。

「ビゼット様」

 振り返った先に居たのは、ブランだった。あれ?何か約束してたっけ?

「歓談中失礼いたします。ヴァレリア様、少しご相談が・・・」

「ええ。構いませんわ。それでは、第1王子殿下、シーラ様、お兄様、失礼いたします」

 何か言われる前に、さっさとカーテシーをして、ブランとその場を後にする。

 助かった。あのままあそこに居たら、婚約解消できないように、逃げ道を潰されるところだった。

「ビゼット様。ご相談とは?」

「いえ。ヴァレリア嬢がお困りのように見えたので。余計なお世話でしたか?」

 え?私を助けてくれたんだ。

「助かりましたわ。ありがとうございます」
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

あなたを忘れる魔法があれば

七瀬美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

婚約破棄の『めでたしめでたし』物語

サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。 この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!? プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。 貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。

処理中です...