34 / 37
それぞれのルート
しおりを挟む
「リラ嬢、少し休憩しよう」
黙々とペンを走らせる私の元にやって来たのは・・・
「ハルト様」
声をかけられ、顔を上げる。
ハルト様と、お茶の準備をした侍女の姿があった。
私は、何故かハルト・グレイン様の婚約者になった。
本来なら卒業まで婚約者を作る人間が少ないこの国で、私が婚約することになったのは、あの事件のせいだ。
事件を重く見た王家と学園が、今回の特別措置に踏み切った。
私とリリーが、望む相手がいるのなら、婚約することで、学園に通わなくてもいい、というものである。
もちろん卒業資格の試験は受けなくてはならないが、あの学園の意義があくまでも、貴族としての在り方を学ぶことと、交友を深めるため、だからだ。
私もリリーも、恋人はいないわけだから、これが適用されるとは思わなかった。
だけど先触れの後、我が家を訪れたハルト様と、ハルト様のお父様王弟殿下が、私とハルト様の婚約を打診して来られた。
私としては、推しと婚約なんてご褒美でしかない。
でもハルト様は、責任を感じて申し出てくれたのかもしれない。
それを思えば断るべきだ。
でも、王弟殿下からの申し出を、たかが伯爵家風情が断れるわけもなく・・・
断っても良いと王弟殿下には言われたけど。なんなら国王陛下にも言われたけど。
いや、無理でしょ。
結局、お受けすることになった。
恋愛結婚主流のこの国で、同情での結婚なんて、申し訳なさすぎる。
なので、せめて邪魔にはならない様に、ハルト様の足を引っ張らない様に、公爵家について勉強することにした。
学園に通わないのだから、無駄に時間はある。
グレイン公爵家に赴き、公爵夫人に指導をお願いし、勉強漬けの日々だ。
ちなみにリリーも学園には通っていない。
王宮にて、王子妃、王太子妃教育を受けている。
エリック殿下は、毎日リリーと私をグレイン公爵家まで送って、リリーと共に王宮へと戻る。
そして学園に通い、また帰りに私を拾ってブロッサム伯爵家まで送ってくれる。
これに関しては、ハルト様が私を迎えに行くから良いと言ったのだが、リリーが馬車の中でくらい私と一緒にいたいと言ったので、エリック殿下の送り迎えとなった。
「あまり、根を詰める必要はない。リラ嬢は十分、公爵夫人としてやっていけるし、僕の両親もまだまだ現役だから、ゆっくり身につければ良い」
「ありがとうございます。でも、リリーも頑張ってますから」
確かにリリーは頑張っている。
乙女ゲームの中のヒロインと同じように、ドジだけど一生懸命に。
リリーは、エリック殿下ルートを選んだってことよね。
やっぱりあの事件で助けられたのがきっかけなのかしら。
黙々とペンを走らせる私の元にやって来たのは・・・
「ハルト様」
声をかけられ、顔を上げる。
ハルト様と、お茶の準備をした侍女の姿があった。
私は、何故かハルト・グレイン様の婚約者になった。
本来なら卒業まで婚約者を作る人間が少ないこの国で、私が婚約することになったのは、あの事件のせいだ。
事件を重く見た王家と学園が、今回の特別措置に踏み切った。
私とリリーが、望む相手がいるのなら、婚約することで、学園に通わなくてもいい、というものである。
もちろん卒業資格の試験は受けなくてはならないが、あの学園の意義があくまでも、貴族としての在り方を学ぶことと、交友を深めるため、だからだ。
私もリリーも、恋人はいないわけだから、これが適用されるとは思わなかった。
だけど先触れの後、我が家を訪れたハルト様と、ハルト様のお父様王弟殿下が、私とハルト様の婚約を打診して来られた。
私としては、推しと婚約なんてご褒美でしかない。
でもハルト様は、責任を感じて申し出てくれたのかもしれない。
それを思えば断るべきだ。
でも、王弟殿下からの申し出を、たかが伯爵家風情が断れるわけもなく・・・
断っても良いと王弟殿下には言われたけど。なんなら国王陛下にも言われたけど。
いや、無理でしょ。
結局、お受けすることになった。
恋愛結婚主流のこの国で、同情での結婚なんて、申し訳なさすぎる。
なので、せめて邪魔にはならない様に、ハルト様の足を引っ張らない様に、公爵家について勉強することにした。
学園に通わないのだから、無駄に時間はある。
グレイン公爵家に赴き、公爵夫人に指導をお願いし、勉強漬けの日々だ。
ちなみにリリーも学園には通っていない。
王宮にて、王子妃、王太子妃教育を受けている。
エリック殿下は、毎日リリーと私をグレイン公爵家まで送って、リリーと共に王宮へと戻る。
そして学園に通い、また帰りに私を拾ってブロッサム伯爵家まで送ってくれる。
これに関しては、ハルト様が私を迎えに行くから良いと言ったのだが、リリーが馬車の中でくらい私と一緒にいたいと言ったので、エリック殿下の送り迎えとなった。
「あまり、根を詰める必要はない。リラ嬢は十分、公爵夫人としてやっていけるし、僕の両親もまだまだ現役だから、ゆっくり身につければ良い」
「ありがとうございます。でも、リリーも頑張ってますから」
確かにリリーは頑張っている。
乙女ゲームの中のヒロインと同じように、ドジだけど一生懸命に。
リリーは、エリック殿下ルートを選んだってことよね。
やっぱりあの事件で助けられたのがきっかけなのかしら。
12
お気に入りに追加
520
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~
緑谷めい
恋愛
私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。
4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!
一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。
あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?
王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。
そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?
* ハッピーエンドです。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる