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それぞれのルート

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「リラ嬢、少し休憩しよう」

 黙々とペンを走らせる私の元にやって来たのは・・・

「ハルト様」

 声をかけられ、顔を上げる。
ハルト様と、お茶の準備をした侍女の姿があった。

 私は、何故かハルト・グレイン様の婚約者になった。

 本来なら卒業まで婚約者を作る人間が少ないこの国で、私が婚約することになったのは、あの事件のせいだ。

 事件を重く見た王家と学園が、今回の特別措置に踏み切った。

 私とリリーが、がいるのなら、婚約することで、学園に通わなくてもいい、というものである。

 もちろん卒業資格の試験は受けなくてはならないが、あの学園の意義があくまでも、貴族としての在り方を学ぶことと、交友を深めるため、だからだ。

 私もリリーも、恋人はいないわけだから、これが適用されるとは思わなかった。

 だけど先触れの後、我が家を訪れたハルト様と、ハルト様のお父様王弟殿下が、私とハルト様の婚約を打診して来られた。

 私としては、推しと婚約なんてご褒美でしかない。
 でもハルト様は、責任を感じて申し出てくれたのかもしれない。

 それを思えば断るべきだ。

 でも、王弟殿下からの申し出を、たかが伯爵家風情が断れるわけもなく・・・

 断っても良いと王弟殿下には言われたけど。なんなら国王陛下にも言われたけど。

 いや、無理でしょ。

 結局、お受けすることになった。

 恋愛結婚主流のこの国で、同情での結婚なんて、申し訳なさすぎる。

 なので、せめて邪魔にはならない様に、ハルト様の足を引っ張らない様に、公爵家について勉強することにした。

 学園に通わないのだから、無駄に時間はある。

 グレイン公爵家に赴き、公爵夫人に指導をお願いし、勉強漬けの日々だ。

 ちなみにリリーも学園には通っていない。

 王宮にて、王子妃、王太子妃教育を受けている。

 エリック殿下は、毎日リリーと私をグレイン公爵家まで送って、リリーと共に王宮へと戻る。

 そして学園に通い、また帰りに私を拾ってブロッサム伯爵家まで送ってくれる。

 これに関しては、ハルト様が私を迎えに行くから良いと言ったのだが、リリーが馬車の中でくらい私と一緒にいたいと言ったので、エリック殿下の送り迎えとなった。

「あまり、根を詰める必要はない。リラ嬢は十分、公爵夫人としてやっていけるし、僕の両親もまだまだ現役だから、ゆっくり身につければ良い」

「ありがとうございます。でも、リリーも頑張ってますから」

 確かにリリーは頑張っている。

 乙女ゲームの中のヒロインと同じように、ドジだけど一生懸命に。

 リリーは、エリック殿下ルートを選んだってことよね。

 やっぱりあの事件で助けられたのがきっかけなのかしら。
 


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