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異変への足音
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ハルト様や攻略対象たちの送迎が始まってから一ヶ月。
クモリス公爵令嬢や、ビラック伯爵令嬢のイライラしたような視線を感じながらも、特別これといった事件はなく、過ぎていった。
男性であるハルト様たちが一緒出来ない時は、他のご令嬢たちとも一緒にいるようにしたから、手を出せないようで、とりあえず視線が鬱陶しいだけだ。
だから、私は油断していたのかもしれない。
その日、私は教師から呼ばれていると教室の外から声をかけられた。
「ブロッサム妹。□○先生が職員室まで来いって」
詳細を聞こうにも、声をかけて来た男子生徒はすぐに「伝えたからな」といなくなってしまった。
仕方ないので、職員室に向かおうとしたら、ハルト様がやって来て一緒に行ってくれると言う。
リリーを一人にするわけにはいかないから、一緒に行く?と聞いていると、今日の送迎当番のギルク様が現れたので、お任せすることにした。
「は?呼んだ?□○先生は今日はお休みだぞ?誰か先生方、リラ・ブロッサムを呼んだ方はいらっしゃいますか?」
職員室で取り次ぎをお願いした私は、誰も私を呼んでいないという事実に固まった。
どういうこと?お休み?
確かに□○先生と言っていたはず。
釈然としないけど、私の隣にはハルト様がいてくださるし、リリーには今日はギルク様が付いている。
一体、何がしたかったの?
なんだか、モヤモヤする。
教室に戻って鞄を取ると、ハルト様と一緒に馬車へと向かった。
リリーの鞄はなかったので、先に帰ったのだろう。
「それじゃあ、また明日」
「はい。ありがとうございました」
お礼を言って、ハルト様が乗る馬車を見送る。
ハルト様は、私が屋敷に入らないと立ち去らないから、頭を下げてから屋敷へと入った。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、リラお嬢様」
「あれ?リリーは?」
私が後から帰ったら、リリーはバタバタと迎えに来る。
そして、行儀が悪いとお母様に叱られるまでがワンセットなんだけど。
「リリーお嬢様はまだお帰りではございません」
「そ、そう。どこか寄り道してるのかな」
私は職員室に行ってたから、リリーより学園を出たのは三十分ほど後だ。
あの塩対応のリリーが、ギルク様と寄り道なんて、と思ったけど、もしかしたらこないだの私のカフェへの寄り道に触発されたのかも。
だけど、それが間違いだと知ったのは、部屋着に着替えて宿題を終えて・・・陽が沈む頃になってもリリーが戻らないと侍女から聞いた時だった。
「こんな時間なのに・・・ビブラート公爵家に連絡してちょうだい。今日はギルク様と帰ったはずなの」
クモリス公爵令嬢や、ビラック伯爵令嬢のイライラしたような視線を感じながらも、特別これといった事件はなく、過ぎていった。
男性であるハルト様たちが一緒出来ない時は、他のご令嬢たちとも一緒にいるようにしたから、手を出せないようで、とりあえず視線が鬱陶しいだけだ。
だから、私は油断していたのかもしれない。
その日、私は教師から呼ばれていると教室の外から声をかけられた。
「ブロッサム妹。□○先生が職員室まで来いって」
詳細を聞こうにも、声をかけて来た男子生徒はすぐに「伝えたからな」といなくなってしまった。
仕方ないので、職員室に向かおうとしたら、ハルト様がやって来て一緒に行ってくれると言う。
リリーを一人にするわけにはいかないから、一緒に行く?と聞いていると、今日の送迎当番のギルク様が現れたので、お任せすることにした。
「は?呼んだ?□○先生は今日はお休みだぞ?誰か先生方、リラ・ブロッサムを呼んだ方はいらっしゃいますか?」
職員室で取り次ぎをお願いした私は、誰も私を呼んでいないという事実に固まった。
どういうこと?お休み?
確かに□○先生と言っていたはず。
釈然としないけど、私の隣にはハルト様がいてくださるし、リリーには今日はギルク様が付いている。
一体、何がしたかったの?
なんだか、モヤモヤする。
教室に戻って鞄を取ると、ハルト様と一緒に馬車へと向かった。
リリーの鞄はなかったので、先に帰ったのだろう。
「それじゃあ、また明日」
「はい。ありがとうございました」
お礼を言って、ハルト様が乗る馬車を見送る。
ハルト様は、私が屋敷に入らないと立ち去らないから、頭を下げてから屋敷へと入った。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、リラお嬢様」
「あれ?リリーは?」
私が後から帰ったら、リリーはバタバタと迎えに来る。
そして、行儀が悪いとお母様に叱られるまでがワンセットなんだけど。
「リリーお嬢様はまだお帰りではございません」
「そ、そう。どこか寄り道してるのかな」
私は職員室に行ってたから、リリーより学園を出たのは三十分ほど後だ。
あの塩対応のリリーが、ギルク様と寄り道なんて、と思ったけど、もしかしたらこないだの私のカフェへの寄り道に触発されたのかも。
だけど、それが間違いだと知ったのは、部屋着に着替えて宿題を終えて・・・陽が沈む頃になってもリリーが戻らないと侍女から聞いた時だった。
「こんな時間なのに・・・ビブラート公爵家に連絡してちょうだい。今日はギルク様と帰ったはずなの」
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