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推しは尊い、シスコンはめんどい

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 何故か、私の送り迎えはハルト様だけがしてくれることになった。

 うん。何故?
いや、嬉しいよ?ものすごくラッキーというか、ご褒美だけど。

 そして昨日のリリーの送迎係は、ロキ・アルスタン様だった。

 燃えるような赤い短髪のロキ様は、乙女ゲームの騎士団長子息あるあるの通り、熱血漢でそれからちょっと脳筋だ。

 考えるよりも先に体が動くタイプなのだと、本人が言っていたそうだ。

 そんな話も出来る程度に打ち解けたのかとホッとしたのだけど、リリーのシスコンは健在だった。

「リラって、あの人と一緒にいるとすごく嬉しそう。あの人もリラといると微笑ってるし」

 ぷうっと頬を膨らませたリリーに、苦笑いしてしまう。

 本当に嬉しいから、傍目に嬉しそうに見えるのはどうしようもない。

カフェなんか寄っちゃって!」

 ん?
どうして昨日、ハルト様とカフェに寄ったのを知ってるの?

 昨日ハルト様が「こないだ食べたプリンの店が、新作のケーキを出したそうだ」と、カフェに誘ってくれたのだ。

 相変わらずランチのデザートは、私の分はハルト様が、リリーの分は攻略対象たちが準備してくれていて、数日前に食べたプリンは、私の美味しいデザートのランキングの上位に入った。

 その日の帰りに決まった寄り道を、別に帰ったはずのリリーがどうして知ってるの?

 あ。お土産を買ったから?

「どうしてカフェに寄ったの知ってるの?」

「だって、見てたもん!ロキ様がぁ、気になるならついて行こうって言うから!」

「・・・」

 リリーの言ったことを、頭の中で繰り返しでみる。

 ロキ様がついて行こうと言った・・・

 はぁ。
リリーはこの類を悪いことだとは思っていない。

 だってリリーが私をストーカーするのは、昔から当たり前のことだったから。

 私もまぁ、慣れてるといえば慣れてるんだけど・・・

 まさかロキ様と、私たちをストーカーして来るとは想像してなかったわ。

「ハァ。あのね、リリー。私ひとりを追いかけて来るのはまぁ、いつものことだし良いんだけど、私たちを気遣って送迎してくれている皆さんに迷惑はかけちゃダメよ」

「違うもん!ロキ様が行こうって言ったんだもん!ロキ様が悪いんだもん!」

 いや、多分だけど、ロキ様はリリーが私をあまりに気にかけるから、深く考えずについて行こうって言ったんだと思う。

 まさしく本人申告の、考える前に体が動くってやつよ。

 なんだかんだ言いながら、攻略対象たちと仲良くやってるのかと思ったら、まさかのシスコン発揮でストーカー。

 やれやれだわ。

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