上 下
29 / 37

推しは尊い、シスコンはめんどい

しおりを挟む
 何故か、私の送り迎えはハルト様だけがしてくれることになった。

 うん。何故?
いや、嬉しいよ?ものすごくラッキーというか、ご褒美だけど。

 そして昨日のリリーの送迎係は、ロキ・アルスタン様だった。

 燃えるような赤い短髪のロキ様は、乙女ゲームの騎士団長子息あるあるの通り、熱血漢でそれからちょっと脳筋だ。

 考えるよりも先に体が動くタイプなのだと、本人が言っていたそうだ。

 そんな話も出来る程度に打ち解けたのかとホッとしたのだけど、リリーのシスコンは健在だった。

「リラって、あの人と一緒にいるとすごく嬉しそう。あの人もリラといると微笑ってるし」

 ぷうっと頬を膨らませたリリーに、苦笑いしてしまう。

 本当に嬉しいから、傍目に嬉しそうに見えるのはどうしようもない。

カフェなんか寄っちゃって!」

 ん?
どうして昨日、ハルト様とカフェに寄ったのを知ってるの?

 昨日ハルト様が「こないだ食べたプリンの店が、新作のケーキを出したそうだ」と、カフェに誘ってくれたのだ。

 相変わらずランチのデザートは、私の分はハルト様が、リリーの分は攻略対象たちが準備してくれていて、数日前に食べたプリンは、私の美味しいデザートのランキングの上位に入った。

 その日の帰りに決まった寄り道を、別に帰ったはずのリリーがどうして知ってるの?

 あ。お土産を買ったから?

「どうしてカフェに寄ったの知ってるの?」

「だって、見てたもん!ロキ様がぁ、気になるならついて行こうって言うから!」

「・・・」

 リリーの言ったことを、頭の中で繰り返しでみる。

 ロキ様がついて行こうと言った・・・

 はぁ。
リリーはこの類を悪いことだとは思っていない。

 だってリリーが私をストーカーするのは、昔から当たり前のことだったから。

 私もまぁ、慣れてるといえば慣れてるんだけど・・・

 まさかロキ様と、私たちをストーカーして来るとは想像してなかったわ。

「ハァ。あのね、リリー。私ひとりを追いかけて来るのはまぁ、いつものことだし良いんだけど、私たちを気遣って送迎してくれている皆さんに迷惑はかけちゃダメよ」

「違うもん!ロキ様が行こうって言ったんだもん!ロキ様が悪いんだもん!」

 いや、多分だけど、ロキ様はリリーが私をあまりに気にかけるから、深く考えずについて行こうって言ったんだと思う。

 まさしく本人申告の、考える前に体が動くってやつよ。

 なんだかんだ言いながら、攻略対象たちと仲良くやってるのかと思ったら、まさかのシスコン発揮でストーカー。

 やれやれだわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった

白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」 な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし! ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。 ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。 その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。 内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います! *ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。 *モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。 *作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。 *小説家になろう様にも投稿しております。

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

届かなかったので記憶を失くしてみました(完)

みかん畑
恋愛
婚約者に大事にされていなかったので記憶喪失のフリをしたら、婚約者がヘタレて溺愛され始めた話です。 2/27 完結

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

貴族としては欠陥品悪役令嬢はその世界が乙女ゲームの世界だと気づいていない

白雲八鈴
恋愛
(ショートショートから一話目も含め、加筆しております) 「ヴィネーラエリス・ザッフィーロ公爵令嬢!貴様との婚約は破棄とする!」  私の名前が呼ばれ婚約破棄を言い渡されました。  ····あの?そもそもキラキラ王子の婚約者は私ではありませんわ。  しかし、キラキラ王子の後ろに隠れてるピンクの髪の少女は、目が痛くなるほどショッキングピンクですわね。  もしかして、なんたら男爵令嬢と言うのはその少女の事を言っています?私、会ったこともない人のことを言われても困りますわ。 *n番煎じの悪役令嬢モノです? *誤字脱字はいつもどおりです。見直してはいるものの、すみません。 *不快感を感じられた読者様はそのまま閉じていただくことをお勧めします。 加筆によりR15指定をさせていただきます。 *2022/06/07.大幅に加筆しました。 一話目も加筆をしております。 ですので、一話の文字数がまばらにになっております。 *小説家になろう様で 2022/06/01日間総合13位、日間恋愛異世界転生1位の評価をいただきました。色々あり、その経緯で大幅加筆になっております。

処理中です...